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中編
綺夜羅のぬいぐるみ
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咲薇も瞬もそれぞれ思うことはあったが、白狐に逃げられてしまった以上病院に戻るしかなくなってしまった。
愛羽も綺夜羅もやはりまだ目を覚ましていなかったが玲璃と豹那以外は戻っていて全員の無事が一先ず確認でき、それぞれあった出来事を伝え合い、これからどう動くかを話している所だった。
『まず始めによぉ、なんか大阪風が強くねぇか?まぁ気持ちは分からなくもねぇけど、あたしら完全に食わされた側なのによぉ』
話が終わってすぐ、樹の感想だが全くその通りだ。
大阪喧嘩會般若娘だけならまだしも、イデアの不死鳥、浬の陽炎朱雀、そして天王道姉妹。綺夜羅の仇を取り単車を奪い返そうとしただけなのに大阪どころか関西各地から狙われてしまっている。
それぞれが肩を落としていると咲薇がそれを言葉にした。
『みんなもう帰った方がえぇよ…』
『綺夜羅の単車取られたままで帰れるかよ』
数が即反論した。
『取られてるのが単車だけならまだえぇやん。これ以上いったらホンマに命取られるかもしれへんよ?そんなのアカン。絶対嫌や…』
咲薇の言ってることは確かだった。たった十数人で白狐をめぐっていくつものチームに狙われ戦うことになれば、今の綺夜羅位では済まないかもしれない。
それが分かっているからか誰もその先の言葉が出てこない。
そんな中口を開いたのは掠だった。
『…あのCBRさ、もう鉄屑行きが決まってた部品取りにもならない状態から綺夜羅が全部直して作った単車なんだよ。もう動かないボロボロの状態で外装だってはぎ取られちゃって、パッと見なんの単車かも分からないし、誰からも必要となんてされなくなったそれを全部直して自分で乗ることにしたの。すごいでしょ?』
掠は綺夜羅がCBRを1から作り上げるのをずっと見てきた。
『あたし聞いたんだ。なんでそこまでしてそんなもん直したのって。CBRって、そこまでカッコいいともわざわざ直す価値があるとも思ってなかったんだけどね、そしたらあいつさ、なんて言ったと思う?「寂しかったから」って言ったんだよ。笑っちゃうでしょ?クマのぬいぐるみとかじゃないんだよ?それが明日からそこにないと思ったら寂しかったんだって。直せば走れるのに捨てちゃうなんてかわいそうだったって言うの』
綺夜羅はいつも単車に話しかけていた。そんな姿を見て掠はよく笑っていた。
『知らない人が見たら、ちょっと変わってるとか思われちゃうかもしれないけど、あいつにとっては多分お母さんがまだ一緒に住んでた時からのいっぱい色んな思い出が詰まった大切なもので、ずっと一緒に過ごしてきた家族なんだよね。だからどんなぬいぐるみなんかよりも可愛くて仕方ないんだろうなって、綺夜羅の横にいると分かるの。あたしたちにも単車作ってくれるって言って、なんのマフラー付けてどのハンドルにするとか、いつも一緒に考えてくれて、全部できたらみんなで走りに行こうって、それが自分の夢だって真っ直ぐな目して言うの。あたしたちバカだから、いっつも綺夜羅のこと困らせて怒られてばっかだけど、あいつが目覚めるまでにあのCBR取り戻せなかったら、あたしはあいつに合わせる顔がない…』
掠は悔しそうに涙を流していた。その気持ちは燃も旋も珠凛も数も同じだ。
『よし。とりあえずみんなでご飯食べようよ。お腹減ってみんな全然休んでないんだもん。今日はゆっくり休もう。明日また頑張ろうよ』
瞬の前向きな言葉は不思議と少女たちを勇気づけてくれた。
一同はうなずくと夕食へと出掛けた。
愛羽も綺夜羅もやはりまだ目を覚ましていなかったが玲璃と豹那以外は戻っていて全員の無事が一先ず確認でき、それぞれあった出来事を伝え合い、これからどう動くかを話している所だった。
『まず始めによぉ、なんか大阪風が強くねぇか?まぁ気持ちは分からなくもねぇけど、あたしら完全に食わされた側なのによぉ』
話が終わってすぐ、樹の感想だが全くその通りだ。
大阪喧嘩會般若娘だけならまだしも、イデアの不死鳥、浬の陽炎朱雀、そして天王道姉妹。綺夜羅の仇を取り単車を奪い返そうとしただけなのに大阪どころか関西各地から狙われてしまっている。
それぞれが肩を落としていると咲薇がそれを言葉にした。
『みんなもう帰った方がえぇよ…』
『綺夜羅の単車取られたままで帰れるかよ』
数が即反論した。
『取られてるのが単車だけならまだえぇやん。これ以上いったらホンマに命取られるかもしれへんよ?そんなのアカン。絶対嫌や…』
咲薇の言ってることは確かだった。たった十数人で白狐をめぐっていくつものチームに狙われ戦うことになれば、今の綺夜羅位では済まないかもしれない。
それが分かっているからか誰もその先の言葉が出てこない。
そんな中口を開いたのは掠だった。
『…あのCBRさ、もう鉄屑行きが決まってた部品取りにもならない状態から綺夜羅が全部直して作った単車なんだよ。もう動かないボロボロの状態で外装だってはぎ取られちゃって、パッと見なんの単車かも分からないし、誰からも必要となんてされなくなったそれを全部直して自分で乗ることにしたの。すごいでしょ?』
掠は綺夜羅がCBRを1から作り上げるのをずっと見てきた。
『あたし聞いたんだ。なんでそこまでしてそんなもん直したのって。CBRって、そこまでカッコいいともわざわざ直す価値があるとも思ってなかったんだけどね、そしたらあいつさ、なんて言ったと思う?「寂しかったから」って言ったんだよ。笑っちゃうでしょ?クマのぬいぐるみとかじゃないんだよ?それが明日からそこにないと思ったら寂しかったんだって。直せば走れるのに捨てちゃうなんてかわいそうだったって言うの』
綺夜羅はいつも単車に話しかけていた。そんな姿を見て掠はよく笑っていた。
『知らない人が見たら、ちょっと変わってるとか思われちゃうかもしれないけど、あいつにとっては多分お母さんがまだ一緒に住んでた時からのいっぱい色んな思い出が詰まった大切なもので、ずっと一緒に過ごしてきた家族なんだよね。だからどんなぬいぐるみなんかよりも可愛くて仕方ないんだろうなって、綺夜羅の横にいると分かるの。あたしたちにも単車作ってくれるって言って、なんのマフラー付けてどのハンドルにするとか、いつも一緒に考えてくれて、全部できたらみんなで走りに行こうって、それが自分の夢だって真っ直ぐな目して言うの。あたしたちバカだから、いっつも綺夜羅のこと困らせて怒られてばっかだけど、あいつが目覚めるまでにあのCBR取り戻せなかったら、あたしはあいつに合わせる顔がない…』
掠は悔しそうに涙を流していた。その気持ちは燃も旋も珠凛も数も同じだ。
『よし。とりあえずみんなでご飯食べようよ。お腹減ってみんな全然休んでないんだもん。今日はゆっくり休もう。明日また頑張ろうよ』
瞬の前向きな言葉は不思議と少女たちを勇気づけてくれた。
一同はうなずくと夕食へと出掛けた。
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