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中編

せっかくの大阪

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 豹那、瞬と合流した玲璃たちは病院に戻ろうとしていた。数のGSも合わせて単車も4台あるので丁度8人で乗っていける。

 そう思った時だ。

『ねぇ…あれ…』

 旋が何かに気づき指を差すと反対車線で白狐が単車に跨がりながら堂々とこっちを見ている。

『白狐だ!』

 みんなが気づくと白狐は「ブゥォン!」とアクセルを吹かし発進した。

『月下さんのCBR!』

 それを見て瞬がすぐ側にあった数のGSに乗りこみ1人で走りだしていった。白狐を追う気だ。迫りくる車とクラクションをかわし、すぐに反対車線へ走り出ると一気にアクセルをひねった。

『瞬!』

 それに続いて咲薇も後を追っていってしまった。

『あのバカ。これじゃあみんなで動けないじゃないか。しょうがない奴だね…おい麗桜、お前らは単車乗ってとりあえず病院に戻りな』

 これ以上ケガ人を増やす訳にはいかない。豹那の言う通り麗桜、旋、珠凛、数の4人は2台で病院に戻ることになり、あぶれた玲璃は豹那と一緒に歩くことにした。

『…さて玲璃、腹減ったね。なんか食べるかい?』

『え?いいのかよ、瞬と咲薇あいつ追ってっちまったし、みんな病院で待ってるんだろ?』

『はっ、玲璃のくせに柄にもないこと言うねぇ。あのバカは進んで勝手に追ってったんだ、放っとけよ。死にゃーしないだろ。それにね、病院戻ってどうするんだい?お前まさかこのあたしにも鶴とか折らそうとしてるっていうのか?勘弁してくれよ。こっちは朝早くから動いて血ぃくれてやった上、くそガキに頭きて腹減ったんだよ。せっかくの大阪なんだ、何か食べようじゃないか。仕方ないから出してやるよ』

『お供します大先生!』

 出してやるという言葉に玲璃は尻尾を振ってついていった。
 
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