70 / 142
中編
白狐を追え
しおりを挟む
それから一同は綺夜羅の部屋の前で鶴を折り続けていた。暴走愛努流とチーム綺夜羅のメンバーはその中ですっかり打ち解け、みんなの祈りを込めた鶴はみるみる内に羽を広げ重なっていった。
だが、まだ静かなそんな朝の病院に悪夢の爆音が突然鳴り響いた。
「ブゥォン!!ブゥォンウォン!!」
ただの迷惑な騒音でしかないその音は、掠や燃、旋と珠凛を震撼させた。
『この音…』
『綺夜羅のCBRだ…』
『え!?』
綺夜羅の単車はまだ例の廃工場に置いたままになっているはずだった。訳も分からず掠が走りだし、それに続いて全員急いで外に走り出た。
すると病院を1歩出た目の前の道路の車線のど真ん中で、狐の面を被った人物がCBR400Fに跨がりながらこちらを見ていた。あれは間違いなく綺夜羅の単車だ。
『…んなんであんたが、それに乗ってるの?ゆ…許せない』
掠は怒りのあまり震えていた。
『殺してやる!!』
掠は向かってくる車も関係なく白狐めがけて走っていった。しかし白狐は単車を発進させ走りだした。
『待て!!』
掠はすぐにKHに乗りこむとキックを一蹴りしエンジンをかけ追いかけていってしまった。
『掠!』
燃がそれを更に追おうとすると蘭菜が声をあげた。
『待って!』
蘭菜は手を広げ一呼吸置いた。
『追うべきじゃないわ。わざわざこんな所に来て、何か企んでいるのは間違いないわ』
『でも掠が…』
燃が泣きそうな顔で言うと咲薇が1歩前に出た。
『あたしが追いかける。みんなはこの辺分からんやろ。それに、あいつの狙いはあたしかもしれへん』
『それにしても1人はダメね。玲璃、麗桜、一緒に行ってくれる?』
『あったりめーよ。おい誰か、単車貸しな』
玲璃が待ってましたと前に出てくるともう1人の金髪ショートカットが前に出た。
『待って。だったらあたしも一緒に行く』
掠が心配というよりは白狐に我慢ならないという感じで旋が名乗り出た。
『どっちかあたしのケツ乗んなよ』
旋は単車に跨がった。それを見て珠凛も自分の単車に向かって歩きだした。
『私も行くわ。数のことも気になるし』
『じゃああたしも行くよ!』
燃も後に続こうとしたが珠凛がそれを止めた。
『燃は何かあった時の為に残って』
『でも…』
『私たちが動いたら単車は燃のバブしか残らないの。もしもの時の為に単車は1台でも残しとかないと。だからあなたは綺夜羅の側にいてあげて』
燃はみんなが心配だったが珠凛に言われてはうなずくしかなかった。
『大丈夫だ。すぐ帰ってくんよ』
咲薇の後ろに玲璃。旋の後ろに麗桜。そして珠凛の5人で白狐と掠の後を追うことになった。
だが、まだ静かなそんな朝の病院に悪夢の爆音が突然鳴り響いた。
「ブゥォン!!ブゥォンウォン!!」
ただの迷惑な騒音でしかないその音は、掠や燃、旋と珠凛を震撼させた。
『この音…』
『綺夜羅のCBRだ…』
『え!?』
綺夜羅の単車はまだ例の廃工場に置いたままになっているはずだった。訳も分からず掠が走りだし、それに続いて全員急いで外に走り出た。
すると病院を1歩出た目の前の道路の車線のど真ん中で、狐の面を被った人物がCBR400Fに跨がりながらこちらを見ていた。あれは間違いなく綺夜羅の単車だ。
『…んなんであんたが、それに乗ってるの?ゆ…許せない』
掠は怒りのあまり震えていた。
『殺してやる!!』
掠は向かってくる車も関係なく白狐めがけて走っていった。しかし白狐は単車を発進させ走りだした。
『待て!!』
掠はすぐにKHに乗りこむとキックを一蹴りしエンジンをかけ追いかけていってしまった。
『掠!』
燃がそれを更に追おうとすると蘭菜が声をあげた。
『待って!』
蘭菜は手を広げ一呼吸置いた。
『追うべきじゃないわ。わざわざこんな所に来て、何か企んでいるのは間違いないわ』
『でも掠が…』
燃が泣きそうな顔で言うと咲薇が1歩前に出た。
『あたしが追いかける。みんなはこの辺分からんやろ。それに、あいつの狙いはあたしかもしれへん』
『それにしても1人はダメね。玲璃、麗桜、一緒に行ってくれる?』
『あったりめーよ。おい誰か、単車貸しな』
玲璃が待ってましたと前に出てくるともう1人の金髪ショートカットが前に出た。
『待って。だったらあたしも一緒に行く』
掠が心配というよりは白狐に我慢ならないという感じで旋が名乗り出た。
『どっちかあたしのケツ乗んなよ』
旋は単車に跨がった。それを見て珠凛も自分の単車に向かって歩きだした。
『私も行くわ。数のことも気になるし』
『じゃああたしも行くよ!』
燃も後に続こうとしたが珠凛がそれを止めた。
『燃は何かあった時の為に残って』
『でも…』
『私たちが動いたら単車は燃のバブしか残らないの。もしもの時の為に単車は1台でも残しとかないと。だからあなたは綺夜羅の側にいてあげて』
燃はみんなが心配だったが珠凛に言われてはうなずくしかなかった。
『大丈夫だ。すぐ帰ってくんよ』
咲薇の後ろに玲璃。旋の後ろに麗桜。そして珠凛の5人で白狐と掠の後を追うことになった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
あのときは泣きたかった。
さとなか達也
青春
さとなか達也が二年半をかけて、構築した、全くもって、すばらしい、野球青春小説。出版社からも、文庫化のお誘いのあった、作品をモデルに、ストーリーを展開。面白さ、真面目さ、悲しさ、恋愛。すべてを注ぎ込んだ、名作をあなたの元へ。Web発信。頑張ろう!(がんばって!!先生。)さとなか達也
ぜったい、読んで。さとなか 達也
あのときは泣きたかった。
神様、僕は恋をしました
みつ光男
青春
これは神様、きっと恋愛の神様が仕組んだ試練だ
神様、僕は恋をしてしまったじゃないか…
音楽のこと以外興味がない冴えない高校2年生、高科翔成
当然ながら恋愛に関してもさほど興味はないが
ある日突然目の前に現れた美人店員“ながのさん”によって
その退屈な毎日が一変する。
初めて誰かを好きになる気持ちを教えてくれた“ながのさん”
彼女と少しずつ縮まる距離、
彼は自分の想いを伝えることが出来るのだろうか?
個性派JK☆勢揃いっ!【完結済み】
M・A・J・O
青春
【第5回&第6回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】
【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】
庇護欲をそそる人見知りJK、女子力の高い姐御肌JK、ちょっぴりドジな優等生JK……などなど。
様々な個性を持ったJKたちが集う、私立の聖タピオカ女子高等学校。
小高い丘の上に建てられた校舎の中で、JKたちはどう過ごしていくのか。
カトリック系の女子校という秘密の花園(?)で、JKたちの個性が炸裂する!
青春!日常!学園!ガールズコメディー!ここに開幕――ッッ!
☆ ☆ ☆
人見知りコミュ障の美久里は、最高の青春を送ろうと意気込み。
面倒見がいいサバサバした性格の朔良は、あっという間に友だちができ。
背が小さくて頭のいい萌花は、テストをもらった際にちょっとしたドジを踏み。
絵を描くのが得意でマイペースな紫乃は、描き途中の絵を見られるのが恥ずかしいようで。
プロ作家の葉奈は、勉強も運動もだめだめ。
たくさんの恋人がいるあざとい瑠衣は、何やら闇を抱えているらしい。
そんな彼女らの青春は、まだ始まったばかり――
※視点人物がころころ変わる。
※だいたい一話完結。
※サブタイトル後のカッコ内は視点人物。
・表紙絵は秀和様(@Lv9o5)より。
後天的貞操逆転世界の異端者〜ある日突然貞操観念が完全に逆転した世界で元のままだった俺、ギラギラした美少女達からロックオンされてしまう〜
水島紗鳥
青春
ある日全世界で男女の貞操観念が逆転する超常現象が発生した。それにより女性の性欲が凄まじく強くなり男性の性欲はめちゃくちゃ弱くなったわけだが、主人公である沢城潤は何故か貞操逆転していない。
そのため今までと何も変わっていない潤だったがそれを知られると面倒ごとに巻き込まれる可能性が高いと判断して隠している。
しかし、そんな潤の秘密に気付いた美少女達にロックオンされてしまって…
女の胸には男のロマンが詰まっているなんて真っ赤な嘘よ!
さいとう みさき
青春
「おっぱい」
それは神。
「おっぱい」
それは男の希望。
全てのおっぱいを愛する紳士諸兄に贈る少女のおっぱいをめぐる逸話。
君は「おっぱい」に希望を見出せるだろうか?
四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~
幹谷セイ
青春
個性豊かな女子中学生たちが十二単のお姫様に変身!
バトルや恋愛を通じて強く成長していく陰陽師アクション!
千年前に命を落とした陰陽師・四季姫の生まれ変わりである少女たちが、新たなる使命を帯びて妖怪に立ち向かう平成絵巻。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる