上 下
145 / 189
第六章・土の精霊の国

136話・誰がするの?

しおりを挟む
「ルードさん」
「リサ様! 上手くいきましたか?」
「はい」

 地下の王様の膝の上にぽいっとあの宝石を投げて、私達は地上に戻ってきた。

「なんだか、すごい騒動になってしまいましたが――」
「リサちゃん」

 しぃっと、アリスが口を指で塞ぐ。
 何処で聞かれているかわからないし、迂闊に喋らない方がいいか。

「話は宿でしよう。スペードは……後からくるだろうし」
「そうだね。土の精霊さんの姿もないし――。どうなるのか確かめてるのかなぁ」
「わかりました」

 ーーー

 宿に向かう途中、ウォータが何故か姿を現した。

「あれは、過去の兵器だ」

 あれって、あの宝石のこと? 兵器って? この世界も、過去には、戦争なんかがあったのかな……。いまの、暮らしからは想像が出来ないけれど。

「あれには魔力を貯める力があり、人々から集めた力を内包させていたのだろうな。平和が訪れて、使用されなかった巨大な力は、地下で眠らされていたんだろう。大きすぎる力は、使い方によってあのような結果を招くこともある。今回は小さな規模ですんだが……」

 胸がズキリと痛む。
 家族に会いたいと言っていたコウは、あの力を使って何がしたかったんだろう。もしかして、会う方法を知っていたのかな。

「リサも飲み込まれないように気をつけろ」

 え? 急にウォータにそう言われびくりとする。

「魔力に傾きすぎると、身体に障るぞ」

 あ、――。ありがとう、ウォータ。
 きっと、今、心の中がひどい色をしているんだろうな。そう思いながら、私は黒い腕輪をきゅっと握った。
 その様子を見て、ウォータは少し間を置いてから口を開いた。

「あまり口を出すのも野暮かもしれないが、私も見ていた。アリストの言うことは嘘ではないからな」

 そう言って、彼はすっと消えた。
 あの時、――そっか、ウォータはアリスのそばに。
 もう一度、心の中で彼にお礼を言うと、アリスの足が止まった。

 目の前には、スペードが立って待っていた。

 ーーー

「良かったっす。きちんと問題解決したみたいっすね」

 モグモグと食堂でご飯を食べながら私達は話していた。
 目の前には鶏の丸焼きみたいなものや、蒸し物、炒め物、スープには麺のようなお餅のようなものが浮かぶ料理が運ばれてきている。味も良くて、どんどん食べてしまう。

「地下のゴタゴタが収まれば、契約にくるっすよ。今日はもうゆっくりしましょうっす」
「そっか」
「スペードはやることは終わってるのかい?」
「はいっす。でも、アリスト君はまだ残ってるでしょう?」

 ピクリとアリスは反応して、何も無かったようにまた料理を食べ続ける。
 そういえば、アリスの用事って何だったんだろう。地下の問題を解決したなら、それも話が進められるのかな?

「契約が済んだら、いよいよタカマガハラですね」

 ルードが食べ慣れない料理に少し苦戦しながら言う。

「はい。あ、でも誰が契約する事になるんでしょう」
「私は土の魔法はあまり得意では……」
「ボクも、土は相性悪いなぁ」
「僕もからきしっすよ」

 帽子を押さえ、カラカラと笑うスペード。
 えっと、あれ? 誰もいない? 私はシルフィの指輪があるし――。
 いったいどうすればいいの!?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

処理中です...