96 / 189
第四章・風の精霊の国
90話・風の精霊の国の前に?
しおりを挟む
「ここが風の精霊の国、ウィンドキャニオンかー!」
「ここはね、風の力を使った風車や、真ん中に川が流れてるから大きな水車もあって、ぐるぐるまわるものがいっぱいなんだよ。ほら!」
街には大きな風車が沢山あって、川に大きな大きな大水車が小気味良い水音をたてながら回っていた。
緑溢れる渓谷にサラサラと透き通った綺麗な水が流れる川。
「なんだか、清々しくて癒されるー」
「確かに、ここは空気がとても綺麗ですね」
「いいところっすね。僕も何度かきたことあるっすよ。温泉があってとてものんびりできるんっすよ」
え、一人誰かがまじってるって?
そうそう、この人は――
ーーー
ウィンドキャニオンに着く前に、一度休憩しようと言って森の中の少し開けた小川のほとりで私達は一休みしている最中だった。
近くになっていたという、茶色の木の実をアリスが持ってきた。
「これ、甘いんだよ」
はい、と渡されたのはどう見てもどんぐり。だけど、さわり心地がぷにゅぷにゅだった。
「そのままかじるの?」
「うん、食べれるよー」
かぷっとかじりつくとやっぱりぷにゅぷにゅで、
「チョコレートマシュマロ!」
「ん? リサちゃん食べたことあるの?」
「味がね、チョコレートで食感がマシュマロなの。私の世界のお菓子なんだけど」
「へー」
上空にポイっと投げてアリスはパクリと木の実を食べていた。
ルードは甘いものが苦手なのか、取りに来ず水辺を眺めながらゆっくりしていた。
その時、
「たーすーけーてーーーーっすーーーー!」
何か、助けをよんでいるような叫びが聞こえた。すぐにアリスは耳をピンとたて、どこからの声なのか探っているようだった。
「なんだろう?」
「なんでしょう?」
「なんだろうねぇ」
三人がそろって同じ事を言うと、ビョンビョンビョンという音と人が走る音とともに何かがこちらに突撃してきた。
川を挟んだ向こう側を帽子とマントをつけた人が走っていて、後ろには赤くて大きな生物がビョンビョンと跳びはねながらその人を追いかけている。
「レッドフォレストフロッグかな」
「うわー、おっきいカエルさん」
「あのサイズ、人も飲み込みそうですね、主でしょうか」
「あーっ! そこの人達、見てないで助けてほしいっすー!」
向こうもこちらに気付いたみたい。
「食べられちゃったら目覚め悪いしねぇ、しょうがない」
「休憩が台無しですね」
そう言いながら、二人は風の精霊を呼んで向こう側に飛んだ。
あれ、私は?
ポツンと一人反対側に残されてしまった。
風の精霊さん! 私に力を!!!
しーん
ですよねー!
哀しみにほんのちょっと涙が出そうな私は、飛んで行った彼らに視線を向けた。
「ここはね、風の力を使った風車や、真ん中に川が流れてるから大きな水車もあって、ぐるぐるまわるものがいっぱいなんだよ。ほら!」
街には大きな風車が沢山あって、川に大きな大きな大水車が小気味良い水音をたてながら回っていた。
緑溢れる渓谷にサラサラと透き通った綺麗な水が流れる川。
「なんだか、清々しくて癒されるー」
「確かに、ここは空気がとても綺麗ですね」
「いいところっすね。僕も何度かきたことあるっすよ。温泉があってとてものんびりできるんっすよ」
え、一人誰かがまじってるって?
そうそう、この人は――
ーーー
ウィンドキャニオンに着く前に、一度休憩しようと言って森の中の少し開けた小川のほとりで私達は一休みしている最中だった。
近くになっていたという、茶色の木の実をアリスが持ってきた。
「これ、甘いんだよ」
はい、と渡されたのはどう見てもどんぐり。だけど、さわり心地がぷにゅぷにゅだった。
「そのままかじるの?」
「うん、食べれるよー」
かぷっとかじりつくとやっぱりぷにゅぷにゅで、
「チョコレートマシュマロ!」
「ん? リサちゃん食べたことあるの?」
「味がね、チョコレートで食感がマシュマロなの。私の世界のお菓子なんだけど」
「へー」
上空にポイっと投げてアリスはパクリと木の実を食べていた。
ルードは甘いものが苦手なのか、取りに来ず水辺を眺めながらゆっくりしていた。
その時、
「たーすーけーてーーーーっすーーーー!」
何か、助けをよんでいるような叫びが聞こえた。すぐにアリスは耳をピンとたて、どこからの声なのか探っているようだった。
「なんだろう?」
「なんでしょう?」
「なんだろうねぇ」
三人がそろって同じ事を言うと、ビョンビョンビョンという音と人が走る音とともに何かがこちらに突撃してきた。
川を挟んだ向こう側を帽子とマントをつけた人が走っていて、後ろには赤くて大きな生物がビョンビョンと跳びはねながらその人を追いかけている。
「レッドフォレストフロッグかな」
「うわー、おっきいカエルさん」
「あのサイズ、人も飲み込みそうですね、主でしょうか」
「あーっ! そこの人達、見てないで助けてほしいっすー!」
向こうもこちらに気付いたみたい。
「食べられちゃったら目覚め悪いしねぇ、しょうがない」
「休憩が台無しですね」
そう言いながら、二人は風の精霊を呼んで向こう側に飛んだ。
あれ、私は?
ポツンと一人反対側に残されてしまった。
風の精霊さん! 私に力を!!!
しーん
ですよねー!
哀しみにほんのちょっと涙が出そうな私は、飛んで行った彼らに視線を向けた。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる