上 下
72 / 189
第三章・水の精霊の国

69話・空気読んで!

しおりを挟む
「おいおい、アリスト。かわいい子を連れてるじゃないかよう! お嬢さん、お名前はー?」

 ここは街の役所みたいなところなのかな?涼しげな格好をした、チャラい感じの男の人が聞いてくる。
 この街の住人は白亜色はくあいろの肌が多く、腕と足首に鱗のような模様が入っている。目の前の金髪のお兄さんもそうだ。

「リサです」
「んじゃ、そっちの黒いのは?」

 扱いが雑だ……。

「ルードです」
「ほい、まあ無害そうだし、オッケ。これつけといて」

 ポイポイと真珠のついたブレスレットを渡された。

「これは?」
「この街の滞在証だよ。なくさないでね」
「そう、それをつけておいてくれよ。じゃないと、人や獣人はこの街にはいないから、街の住人、魚人さかなびとに変に思われるからな!」
「わかりました」
「お、素直でいい子だねー! 俺タイプだわー」
「ボクの花嫁さんだからダメだよ?」

 突然、アリスが花嫁って言うからぽっと顔が赤くなる。
 でも、何がダメなのだろう。私は頭に? を浮かべる。

「ハイハイ、お疲れチャーン、また国を出る時は寄ってくれなー」

 金髪のお兄さんは残念と肩をすくめながら言った。

 ーーー

 てくてくと白亜色の街を歩く。ドレンやさっきの人もそうだけれど、アリスは本当に人付き合いが上手くて交遊関係が広そうだ。羨ましいくらいのコミュ力である。
 しかも、

「アリスちゃんは、王子だって言ってないの?」

 どこでも一個人で、お話ししている気がするので聞いてみた。
 んー? とアリスが振り向きながら答えた。

「だって、国同士のお付き合いや、戦争がないからね。他の国の王子だって言ったところで何の権限もないし、めんどくさいだけだよ」
「そうなんだ」
「そう、ただの旅人の方が動きやすいよ」
「ライトコールの王子という立場をそんな軽く扱うとはどういうつもりです?!」

 突然、ルードが会話に割り込んできた。
 うわ、アリスがすごい嫌そうな顔をしてる……。

「ライトコールには兄上がいるから別にボクがどう生きようが別にいいだろ。ルードだって、ボクは兄上のオマケ程度にしか思ってないだろ」
「ですが――」
「ルードもリードがいるから、一人出てきたんだろ? 一緒だよ」
「っ……」

 なんだか、どんどん険悪な雰囲気になっていく。止めた方がいいかな。
 私は両手を前にだしながらストップをかける。

「あの、アリスちゃんもルードさんも」

 ぐぅぅぅぅ

 あ……、ちゃーーーーー。今、鳴く? 本当に空気読んでね? 腹の虫君。
 恥ずかしさで、顔を真っ赤にさせながら私はお腹を押さえた。
 二人ともお願いだからこっちを凝視しないで下さいっ!!

「お昼、食べに行こうか?」
「そうですね……」
「ハイ、オネガイシマス」

 穴、穴はございませんかー! 今から入りに行きまーす!

 私の腹の虫君のおかげで、険悪だった雰囲気は少しだけ和らいだ。たぶん。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...