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第三章・水の精霊の国
69話・空気読んで!
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「おいおい、アリスト。かわいい子を連れてるじゃないかよう! お嬢さん、お名前はー?」
ここは街の役所みたいなところなのかな?涼しげな格好をした、チャラい感じの男の人が聞いてくる。
この街の住人は白亜色の肌が多く、腕と足首に鱗のような模様が入っている。目の前の金髪のお兄さんもそうだ。
「リサです」
「んじゃ、そっちの黒いのは?」
扱いが雑だ……。
「ルードです」
「ほい、まあ無害そうだし、オッケ。これつけといて」
ポイポイと真珠のついたブレスレットを渡された。
「これは?」
「この街の滞在証だよ。なくさないでね」
「そう、それをつけておいてくれよ。じゃないと、人や獣人はこの街にはいないから、街の住人、魚人に変に思われるからな!」
「わかりました」
「お、素直でいい子だねー! 俺タイプだわー」
「ボクの花嫁さんだからダメだよ?」
突然、アリスが花嫁って言うからぽっと顔が赤くなる。
でも、何がダメなのだろう。私は頭に? を浮かべる。
「ハイハイ、お疲れチャーン、また国を出る時は寄ってくれなー」
金髪のお兄さんは残念と肩をすくめながら言った。
ーーー
てくてくと白亜色の街を歩く。ドレンやさっきの人もそうだけれど、アリスは本当に人付き合いが上手くて交遊関係が広そうだ。羨ましいくらいのコミュ力である。
しかも、
「アリスちゃんは、王子だって言ってないの?」
どこでも一個人で、お話ししている気がするので聞いてみた。
んー? とアリスが振り向きながら答えた。
「だって、国同士のお付き合いや、戦争がないからね。他の国の王子だって言ったところで何の権限もないし、めんどくさいだけだよ」
「そうなんだ」
「そう、ただの旅人の方が動きやすいよ」
「ライトコールの王子という立場をそんな軽く扱うとはどういうつもりです?!」
突然、ルードが会話に割り込んできた。
うわ、アリスがすごい嫌そうな顔をしてる……。
「ライトコールには兄上がいるから別にボクがどう生きようが別にいいだろ。ルードだって、ボクは兄上のオマケ程度にしか思ってないだろ」
「ですが――」
「ルードもリードがいるから、一人出てきたんだろ? 一緒だよ」
「っ……」
なんだか、どんどん険悪な雰囲気になっていく。止めた方がいいかな。
私は両手を前にだしながらストップをかける。
「あの、アリスちゃんもルードさんも」
ぐぅぅぅぅ
あ……、ちゃーーーーー。今、鳴く? 本当に空気読んでね? 腹の虫君。
恥ずかしさで、顔を真っ赤にさせながら私はお腹を押さえた。
二人ともお願いだからこっちを凝視しないで下さいっ!!
「お昼、食べに行こうか?」
「そうですね……」
「ハイ、オネガイシマス」
穴、穴はございませんかー! 今から入りに行きまーす!
私の腹の虫君のおかげで、険悪だった雰囲気は少しだけ和らいだ。たぶん。
ここは街の役所みたいなところなのかな?涼しげな格好をした、チャラい感じの男の人が聞いてくる。
この街の住人は白亜色の肌が多く、腕と足首に鱗のような模様が入っている。目の前の金髪のお兄さんもそうだ。
「リサです」
「んじゃ、そっちの黒いのは?」
扱いが雑だ……。
「ルードです」
「ほい、まあ無害そうだし、オッケ。これつけといて」
ポイポイと真珠のついたブレスレットを渡された。
「これは?」
「この街の滞在証だよ。なくさないでね」
「そう、それをつけておいてくれよ。じゃないと、人や獣人はこの街にはいないから、街の住人、魚人に変に思われるからな!」
「わかりました」
「お、素直でいい子だねー! 俺タイプだわー」
「ボクの花嫁さんだからダメだよ?」
突然、アリスが花嫁って言うからぽっと顔が赤くなる。
でも、何がダメなのだろう。私は頭に? を浮かべる。
「ハイハイ、お疲れチャーン、また国を出る時は寄ってくれなー」
金髪のお兄さんは残念と肩をすくめながら言った。
ーーー
てくてくと白亜色の街を歩く。ドレンやさっきの人もそうだけれど、アリスは本当に人付き合いが上手くて交遊関係が広そうだ。羨ましいくらいのコミュ力である。
しかも、
「アリスちゃんは、王子だって言ってないの?」
どこでも一個人で、お話ししている気がするので聞いてみた。
んー? とアリスが振り向きながら答えた。
「だって、国同士のお付き合いや、戦争がないからね。他の国の王子だって言ったところで何の権限もないし、めんどくさいだけだよ」
「そうなんだ」
「そう、ただの旅人の方が動きやすいよ」
「ライトコールの王子という立場をそんな軽く扱うとはどういうつもりです?!」
突然、ルードが会話に割り込んできた。
うわ、アリスがすごい嫌そうな顔をしてる……。
「ライトコールには兄上がいるから別にボクがどう生きようが別にいいだろ。ルードだって、ボクは兄上のオマケ程度にしか思ってないだろ」
「ですが――」
「ルードもリードがいるから、一人出てきたんだろ? 一緒だよ」
「っ……」
なんだか、どんどん険悪な雰囲気になっていく。止めた方がいいかな。
私は両手を前にだしながらストップをかける。
「あの、アリスちゃんもルードさんも」
ぐぅぅぅぅ
あ……、ちゃーーーーー。今、鳴く? 本当に空気読んでね? 腹の虫君。
恥ずかしさで、顔を真っ赤にさせながら私はお腹を押さえた。
二人ともお願いだからこっちを凝視しないで下さいっ!!
「お昼、食べに行こうか?」
「そうですね……」
「ハイ、オネガイシマス」
穴、穴はございませんかー! 今から入りに行きまーす!
私の腹の虫君のおかげで、険悪だった雰囲気は少しだけ和らいだ。たぶん。
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