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第一章・光の精霊の国

29話・ミュカとキーヒ

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「まずは名前を教えてくれるかな?」
「キーヒです」
「……ミュカだ」
「そっか、君達は兄弟? 親は?」
「アイツのことなんて知るかよ!」

 ミュカに怒りの表情が浮かぶ。キーヒがオロオロしながらも答えてくれた。

「お母さんが死んで、お父さんがうちにかえってこなくて、僕達はかえるうちがなくなってしまって、ごはんが食べたくて…、ごめんなさい」

 言葉につまりながらも、キーヒが教えてくれたのは悲しい状況だ。ミュカは、ぎゅっとズボンのシワを握っていた。

「そっか……」

 くるっとアリスが振り返って、

「リサちゃんはどうしたい?」

 私は唐突に質問をぶつけられる。

「え、私は……」
「ここで一人二人助けたところでこういう子供は際限なくいるよ? 皆助けるなんてできないよ? 一時的に施したところでまた繰り返す。どうするの?」
「えっと……」

 考える。考えたところで、目の前の二人をほっとく選択肢を選ぶことなんて出来ないんだけど。

「それでも、助けたいです」

 はぁーと息を吐いて、アリスが子供達の方を向きながら言った。

「マタタビ二本ね! 二人分」

 え、マタタビ? 二人分?

「ボクがなんとかしてあげる代価」

 パッと顔をあげる。
 え、マタタビ、最強のアイテムじゃない?
 そんなことを考えているとアリスは二人のところへと歩いていった。

「君達は運がいいね。リサちゃんに助けてもらえることになったよ」

 むぎゅっと首根っこをつかまれて、二人は強制的に立たされた。
 まるで親猫に咥えられた仔猫みたい。

「何をする!」
「黙ってボク達についてきてね。じゃないと……」

 アリスが魔法を唱える。

「風の精霊よ!」

 ふわっと風が吹いたと思ったら、急に風がくるくると小さく渦巻いた。

「逃げたら、怪我するからね?」

 怖い、笑ってるけどアリスがこわい!!

 ーーー

 来た道を帰るより、ここから賑わいのある道にでるのが速いようだったので、アリス、私、ミュカ、キーヒで声がする方に向かう。
 ビクビクしながらミュカとキーヒがついてきていた。

「あ……」

 人が溢れかえる道にでると、パレードの真っ最中でちょうど先頭が通るところだった。

 カナちゃん。
 綺麗なドレスローブを着てカトル王子と一緒に馬に騎乗している。

「きれい!」

 私が着たものとは違う、まるでお姫様のようなドレスローブをカナちゃんは着ていた。そのうしろのカトル王子はとても優しく、カナちゃんを見守っていた。

「やりたかった?」

 アリスが聞いてきた。私はふるふると首をふって否定した。

「大変そう。聖女じゃなくてよかったかも」

 あははと笑って返すと、アリスはそっかと言ってまたパレードに視線を移したので、私もカナちゃんを見ることにした。
 アリスが小声で言った言葉はパレードの歓声に書き消されて私の耳に届くことはなかった。

「リサちゃんが最初に現れた子じゃなくてよかった……」
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