29 / 189
第一章・光の精霊の国
29話・ミュカとキーヒ
しおりを挟む
「まずは名前を教えてくれるかな?」
「キーヒです」
「……ミュカだ」
「そっか、君達は兄弟? 親は?」
「アイツのことなんて知るかよ!」
ミュカに怒りの表情が浮かぶ。キーヒがオロオロしながらも答えてくれた。
「お母さんが死んで、お父さんがうちにかえってこなくて、僕達はかえるうちがなくなってしまって、ごはんが食べたくて…、ごめんなさい」
言葉につまりながらも、キーヒが教えてくれたのは悲しい状況だ。ミュカは、ぎゅっとズボンのシワを握っていた。
「そっか……」
くるっとアリスが振り返って、
「リサちゃんはどうしたい?」
私は唐突に質問をぶつけられる。
「え、私は……」
「ここで一人二人助けたところでこういう子供は際限なくいるよ? 皆助けるなんてできないよ? 一時的に施したところでまた繰り返す。どうするの?」
「えっと……」
考える。考えたところで、目の前の二人をほっとく選択肢を選ぶことなんて出来ないんだけど。
「それでも、助けたいです」
はぁーと息を吐いて、アリスが子供達の方を向きながら言った。
「マタタビ二本ね! 二人分」
え、マタタビ? 二人分?
「ボクがなんとかしてあげる代価」
パッと顔をあげる。
え、マタタビ、最強のアイテムじゃない?
そんなことを考えているとアリスは二人のところへと歩いていった。
「君達は運がいいね。リサちゃんに助けてもらえることになったよ」
むぎゅっと首根っこをつかまれて、二人は強制的に立たされた。
まるで親猫に咥えられた仔猫みたい。
「何をする!」
「黙ってボク達についてきてね。じゃないと……」
アリスが魔法を唱える。
「風の精霊よ!」
ふわっと風が吹いたと思ったら、急に風がくるくると小さく渦巻いた。
「逃げたら、怪我するからね?」
怖い、笑ってるけどアリスがこわい!!
ーーー
来た道を帰るより、ここから賑わいのある道にでるのが速いようだったので、アリス、私、ミュカ、キーヒで声がする方に向かう。
ビクビクしながらミュカとキーヒがついてきていた。
「あ……」
人が溢れかえる道にでると、パレードの真っ最中でちょうど先頭が通るところだった。
カナちゃん。
綺麗なドレスローブを着てカトル王子と一緒に馬に騎乗している。
「きれい!」
私が着たものとは違う、まるでお姫様のようなドレスローブをカナちゃんは着ていた。そのうしろのカトル王子はとても優しく、カナちゃんを見守っていた。
「やりたかった?」
アリスが聞いてきた。私はふるふると首をふって否定した。
「大変そう。聖女じゃなくてよかったかも」
あははと笑って返すと、アリスはそっかと言ってまたパレードに視線を移したので、私もカナちゃんを見ることにした。
アリスが小声で言った言葉はパレードの歓声に書き消されて私の耳に届くことはなかった。
「リサちゃんが最初に現れた子じゃなくてよかった……」
「キーヒです」
「……ミュカだ」
「そっか、君達は兄弟? 親は?」
「アイツのことなんて知るかよ!」
ミュカに怒りの表情が浮かぶ。キーヒがオロオロしながらも答えてくれた。
「お母さんが死んで、お父さんがうちにかえってこなくて、僕達はかえるうちがなくなってしまって、ごはんが食べたくて…、ごめんなさい」
言葉につまりながらも、キーヒが教えてくれたのは悲しい状況だ。ミュカは、ぎゅっとズボンのシワを握っていた。
「そっか……」
くるっとアリスが振り返って、
「リサちゃんはどうしたい?」
私は唐突に質問をぶつけられる。
「え、私は……」
「ここで一人二人助けたところでこういう子供は際限なくいるよ? 皆助けるなんてできないよ? 一時的に施したところでまた繰り返す。どうするの?」
「えっと……」
考える。考えたところで、目の前の二人をほっとく選択肢を選ぶことなんて出来ないんだけど。
「それでも、助けたいです」
はぁーと息を吐いて、アリスが子供達の方を向きながら言った。
「マタタビ二本ね! 二人分」
え、マタタビ? 二人分?
「ボクがなんとかしてあげる代価」
パッと顔をあげる。
え、マタタビ、最強のアイテムじゃない?
そんなことを考えているとアリスは二人のところへと歩いていった。
「君達は運がいいね。リサちゃんに助けてもらえることになったよ」
むぎゅっと首根っこをつかまれて、二人は強制的に立たされた。
まるで親猫に咥えられた仔猫みたい。
「何をする!」
「黙ってボク達についてきてね。じゃないと……」
アリスが魔法を唱える。
「風の精霊よ!」
ふわっと風が吹いたと思ったら、急に風がくるくると小さく渦巻いた。
「逃げたら、怪我するからね?」
怖い、笑ってるけどアリスがこわい!!
ーーー
来た道を帰るより、ここから賑わいのある道にでるのが速いようだったので、アリス、私、ミュカ、キーヒで声がする方に向かう。
ビクビクしながらミュカとキーヒがついてきていた。
「あ……」
人が溢れかえる道にでると、パレードの真っ最中でちょうど先頭が通るところだった。
カナちゃん。
綺麗なドレスローブを着てカトル王子と一緒に馬に騎乗している。
「きれい!」
私が着たものとは違う、まるでお姫様のようなドレスローブをカナちゃんは着ていた。そのうしろのカトル王子はとても優しく、カナちゃんを見守っていた。
「やりたかった?」
アリスが聞いてきた。私はふるふると首をふって否定した。
「大変そう。聖女じゃなくてよかったかも」
あははと笑って返すと、アリスはそっかと言ってまたパレードに視線を移したので、私もカナちゃんを見ることにした。
アリスが小声で言った言葉はパレードの歓声に書き消されて私の耳に届くことはなかった。
「リサちゃんが最初に現れた子じゃなくてよかった……」
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
婚約破棄されたと思ったら次の結婚相手が王国一恐ろしい男だった件
卯月 三日
恋愛
カトリーナは、婚約者であるサーフェに婚約破棄を言い渡される。
前世の記憶が戻って変な行動をしていたせいだと思っていたが、真相は別にあったのだ!
最悪の気分で過ごしていると不思議なもの。
さらなる不幸がカトリーナに襲い掛かってくる。
「嘘ですよね? お父様。まさか、あの暗黒の騎士、ですか?」
次なる婚約者に選ばれたのは王国一恐ろしい男だった!?
転落からの成り上がり+ほのぼのじれじれ恋愛劇+ほんのりざまぁ風味の読み物となっております。
よろしければ、さわりだけでも読んでくださいませ!
序盤は、じっくり展開ですが、少しずつ軽く物語を動かしていく予定です。
1/30 現在、書籍化検討中につき第一章を引き下げ中でございます。
ご迷惑をおかけしています。何卒よろしくお願いします。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる