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Vの妹が出来た俺

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「うっわ、マキの部屋こんなだっけ」
「マリヤ、私はまだいいよって言ってない」
「いいじゃん、マリヤ絶対に受けるよー!関西弁の美少女ケモミミ! でいいんだよね。んー、猫兎狼かぁ。よっし、私は――」
「マリヤっちは相変わらずだねー」

 マキちゃんの部屋には俺の妹、ナミがすでにくつろいでいる。
 俺はナミに近付き小声で聞く。

「ナミは覚えてたのか?」
「あー、まあね。ってか、連絡とってたし」
「何っ!?」
「引っ越しの時にね、聞いてたんだよね。そこから今までずーっと連絡取り合ってたし」

 我が妹ながら、なんというコミュニケーション能力。
 ナミは本当に俺の妹なのか?

「ちなみに、おにいのV姿も知ってる一人だよ」
「お前かぁ、お前が犯人か!!」

 ナミから俺の秘密はいったい誰と誰と誰に漏れているんだ。

「大丈夫、あと数人だけだから」

 ばっちーんといい笑顔で笑ってるんじゃねーよ! 誰だよ、あと数人!!
 くそ、母さんに情報を売ったせいで多少の罪悪感を抱いていた俺のピュアハート返せ。

「マリヤはイツキ君の生き別れた双子という設定でミツキそっくりな猫アバターがいい。だって、マリヤに似てるし」

 向こうから巨大な槍が投擲され、見事俺の心に命中した。
 ぐふ、俺はもう駄目だ。
 マキちゃんの顔が見れない。絶対に違うから! 俺、今の今までマリヤの事は全然覚えてなかったから!!

「そういえば、本当似てるね」

 妹が横から援護射撃(的→俺)を俺に向かって撃ってきた。そこはフォローいれてくれよ!

「たまたまだよ。俺、マリヤの事はホント覚えてなかったから」

 いや、記憶には残ってる。確かに一緒に遊んだ。でも、男だろ? 女の子だって思ってなかったし。

「そんなこと言って、マリヤの事大好きだからこんなの作ったんでしょ? 嬉しいなー!」

 そこ、赤くなるんじゃねーよ! 可愛いじゃないか!

「樹君、駄目なんですか?」
「へ?」

 まさかのマキちゃんからの言葉。

「双子の姉妹! 可愛いじゃないですか! 作りましょう!!」
「あ、はい」

 怒らないのか? 俺の彼女、何を考えているんでしょうか。

「樹君、衣裳は専属依頼の人いますか?」
「あ、それなら――」

 いるにはいる。だが、少しお値段が――。

「双子コーデをお願いします!」
「はい」

 あぁ、母さんに寄付してもらってて良かった……。なんて少し、いやだいぶ思った。
 三人は和気あいあいと相談を続けている。
 俺の彼女、マキちゃんは心配になったりしないのだろうか。同じクラスで、こんな可愛い美少女が俺に近づいても……。
 マキちゃんの部屋で、身の置き場に悩んでいた俺は部屋のいい場所に陣取っているウサギーランドジャパンのお土産クッションを見つけてそこに腰をおろした。
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