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妹から聞かされてしまった俺

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「お兄、今日はどうだった?」
「ん?」
「はぁ、それじゃあ、あんまり変わってないかぁ」
「なんだ?」
「……こっちのこと」

 家に戻り、俺は部屋に入る。すると、すぐにナミが飛んできた。そして、この会話だ。

「何だよ、言ってくれないのか? 意味がわからない」
「あー、だって、私から言っちゃうとですね、お兄とマキに悪いから」

 なんだか、歯切はぎれが悪い。はっきり言えないって何だ。何を隠している。
 十秒ほど、あー、うーん、でもなぁと繰り返したあと、ナミは突然俺の顔をじっと見た。

「お兄は、マキのこと、どう思う?」
「え? 幼なじみでお前の友達だろ」
「違うの、好きか嫌いか!」
「は? 何を突然……」
「どっち?」

 突拍子とっぴょうしもなく聞かれ、俺はあせる。何故、妹にこんな事を聞かれなければならないのだ? そして、答えないとなのか?
 マキちゃん……、マキちゃん……、駄目だ! 先ほど拝見した、制服どアップの胸しか思いつかない!! くそ、何でこんな時にっ!

「俺は……マキちゃんのこと……」

 じっと、にらむように見てくる妹の視線から逃げるように目を横にそらす。

「あー、もう、はっきり言うね! マキはお兄の事好きだから!!」
「…………はい?」
「あーぁ、言っちゃった。お兄のせいだからね」
「まて、俺のせいか?」
「そうだよ、気持ち、知っちゃったんだから、お兄も考えてあげてよね」
「そんな、勝手な……」

 バタンとドアを閉められ、一人部屋に取り残された俺。いや、俺の部屋だけども。
 とりあえず、俺は考える。マキちゃんが俺の事好き。本人からでなく妹から聞かされた事実。ここで俺はひざをつく。
 なぜだ、何故、妹から聞かされなければならなかった!!
 落ち着け、俺。まだ、確定したわけではない。そうだ、ナミの悪戯いたずらの可能性も……。あの真剣な眼差しを思い出し、俺は床に倒れこむ。
 おぉ、神よ! 俺がいったい何をした!?

 少し時間がたって、勉強しないと、と思い立ちノロノロと俺は立ち上がる。そして、机に向かい…………、してまた悶々もんもんと考え込んでいた。
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