20 / 22
白 ― 3
しおりを挟む
「まるで夢みたいだな」
「え?」
「あ、オレの事ね。ほら起きたら忘れてるってさ」
「ゆめは起きたら忘れられちゃうの?」
手紙を読んだ後、そう言うと彼女は悲しそうに呟いた。
「夢ってそういうものだよな?」
「そうなんだ……」
悲しそうにする名前も知らない彼女。もしかして、もう何度も話したことがあるのだろうか。
「今回はあなたは食べるのかな」
「え?」
べしゃりと何かが落ちてきた。それは真っ赤な切れ目が焼く前の肉みたいだった。
「うっわ。何これ」
「どうしたら、いいかな」
「ん?」
「あのね……」
彼女はオレにこいつを食べてそこに積み上げろと言ってきた。
「え、生で? 焼いたりとかしないの? ってか、何肉だよ。これ……」
どう見てもこれは人間だよな。
◇
「誰かいませんかー!」
男は叫ぶ。だれもここにこないとわかっている。
「もう、諦めるかぁ」
ぶつぶつと男は言うと歩きだした。
「これ以上苦しみたくない。ならいっそ」
目を閉じて、男は飛んだ。
◇
「はー、空って飛ぶと気持ちいいかもだけどヒュッてなるな」
食べ終わったものを積み上げていく。彼女も横で同じ事をしていた。なのに、彼女の積んだ場所はなぜか変わらない高さだった。どうなってるんだ? そう思ったが彼女はかまわずにそこに積み続ける。
オレが積んだ場所に目を戻すと地面に小石が並んでいた。ひらがなのように見える。
「ゆ、め?」
なぜ、ゆめと小石が並んでいるんだろう。ここは夢の世界とでも言いたいのだろうか?
「何?」
名前も知らない彼女が首を傾げていた。
「ここに小石が並んでるんだ」
彼女はこちらにくると、それを見て頷いた。
「二人目のあなたが作ったんだよ」
「オレが? このゆめって何だ?」
「……さぁ」
ゆっくりとした仕草で彼女はまた食べ物のところに戻っていく。
「オレが作った?」
忘れないために? 忘れたくないから?
ここには書くものなんてない。だから、ここでの事をオレは忘れてしまう。
オレも小石を探して少し離れた場所に文字を作った。
見たところで思い出せないのが少し寂しいな。
「え?」
「あ、オレの事ね。ほら起きたら忘れてるってさ」
「ゆめは起きたら忘れられちゃうの?」
手紙を読んだ後、そう言うと彼女は悲しそうに呟いた。
「夢ってそういうものだよな?」
「そうなんだ……」
悲しそうにする名前も知らない彼女。もしかして、もう何度も話したことがあるのだろうか。
「今回はあなたは食べるのかな」
「え?」
べしゃりと何かが落ちてきた。それは真っ赤な切れ目が焼く前の肉みたいだった。
「うっわ。何これ」
「どうしたら、いいかな」
「ん?」
「あのね……」
彼女はオレにこいつを食べてそこに積み上げろと言ってきた。
「え、生で? 焼いたりとかしないの? ってか、何肉だよ。これ……」
どう見てもこれは人間だよな。
◇
「誰かいませんかー!」
男は叫ぶ。だれもここにこないとわかっている。
「もう、諦めるかぁ」
ぶつぶつと男は言うと歩きだした。
「これ以上苦しみたくない。ならいっそ」
目を閉じて、男は飛んだ。
◇
「はー、空って飛ぶと気持ちいいかもだけどヒュッてなるな」
食べ終わったものを積み上げていく。彼女も横で同じ事をしていた。なのに、彼女の積んだ場所はなぜか変わらない高さだった。どうなってるんだ? そう思ったが彼女はかまわずにそこに積み続ける。
オレが積んだ場所に目を戻すと地面に小石が並んでいた。ひらがなのように見える。
「ゆ、め?」
なぜ、ゆめと小石が並んでいるんだろう。ここは夢の世界とでも言いたいのだろうか?
「何?」
名前も知らない彼女が首を傾げていた。
「ここに小石が並んでるんだ」
彼女はこちらにくると、それを見て頷いた。
「二人目のあなたが作ったんだよ」
「オレが? このゆめって何だ?」
「……さぁ」
ゆっくりとした仕草で彼女はまた食べ物のところに戻っていく。
「オレが作った?」
忘れないために? 忘れたくないから?
ここには書くものなんてない。だから、ここでの事をオレは忘れてしまう。
オレも小石を探して少し離れた場所に文字を作った。
見たところで思い出せないのが少し寂しいな。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
怨霊師
覧都
ホラー
怨霊師とは怨念を纏いて怨霊を使役する者也
一人の少年の両親が目の前で怨霊となり、少年はそれが見えるようになります。
そのせいか、人々の黒い物、怨念まで見えるようになりました。
見えるようになった少年の目には、世の中に黒い怨念があふれているように見えます。
そして、その中でも強い怨念は人に悪影響を及ぼす事を知り、人知れずそれを取り除いていました。
あるとき怨霊に取り憑かれた暴走族が、殺人をするところを目撃します。
少年は怒りに我を忘れます。
我を忘れた少年の体から、取り除いていたはずの大量の怨念が飛び出しました。
飛び出した大量の怨念は怨霊に吸収されると、とりついている暴走族を自由に動かし、殺してしまいました。
その時、少年は自分の出来る事を理解し、自らを怨霊師と名のる事にしました。
怨霊師となった少年は、その力で怨霊に取り憑かれてもなお悪事を働く者達に正義の鉄槌を加えます。
[完結]何か誰か
夏伐
ホラー
私は大学のサークル仲間に会いに行く。
卒業して何年経っても、どんなに大変でも、それは蔵に幽閉された彼女の一瞬見せる何かに魅せられてしまったからだと思う。
それほどにその一瞬が美しい。
カクヨムさまにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる