上 下
94 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳

第94話 ルフムイアへ

しおりを挟む
 いつもの食堂。いつもの制限ご飯……ではなく、今日から特別。
 私の前にご飯をいつもの制限をなくして並べていく。

「お、おい。エマ、食べ過ぎじゃないか」
「もう少しっ」
「どうしたんだ。痩せるのはやめたのか?」

 ルニアが心配そうに言ってくれるけれど、今はしょうがないのだ。

「痩せるのはやめない。だけど、お父さんに知らせるには体重の増減しかない。だから、痩せておいでって言ってたから太るか維持するしかないのよ……。お父さんに安心してもらえるまで」

 そう言いながら次々手を伸ばす。そう、これは仕方がなくなの。どれくらいでお父さんにわかってもらえるかな。体重計みながら頑張って増やすか維持しなきゃ。
 一週間くらいすればきっとわかってもらえるよね。
 あぁ、これこの前カロリーオーバーになるからって渡してもらえなかった干し肉の甘辛炒め!! 美味しいぃぃぃ!

「あのな、少しは……。まあ、いいか」
「ん?」
「フラフラになって倒れられるよりそうやって食べてくれてる姿を見るのが安心する」

 そう言うルニアは私とは逆に少量しか食べていなかった。

「ルニア、大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫」
「ハヘラータとルフムイアの事か」

 ブレイドは食べ終わったみたい。量を見比べたら駄目だと思いつつ、見比べてしまった。反省しよう……。
 でも、お皿にとったものは全部食べないともったいないよねと心で呟き食べ進める。

「そうだな。王陛下からは連絡がないし。わたしはどうしたらいいのかなと考えてはみたものの――。わたしだけでどうにかできるような問題でもなさそうだしなぁ」
「そうだよね」
「ルフムイアか……」
「なんや、そこなら別に難しくないんやない?」

 スピアーも食べ終わったみたい。話に加わってくる。

「どうして?」
「ん、知らんのや? ルフムイアは竜信仰の国。オレらが姿を見せ、帰れ言うたらそれだけで引っ込むんやないかな」
「ほんとっ!?」
「たぶんやで!? 絶対とは言われんけど」

 それでも、姿を見せ言葉だけで帰ってくれるならやる価値はあるんじゃないだろうか。

「試してみよう」
「えー、オレはハヘラータもルフムイアにも興味ないからどうでもいいんやけど」
「ボクが行く」

 スピアーがはぁーと息をはく。

「そんで、またオレが気前よう言う事聞いて留守番すると思っとるんか? ずーっとエマちゃんひとり占めしておいて」

 怒ってる。確かに四六時中ブレイドといるから、スピアーと話す事って少なくなっている。
 スピアーは私と一緒にいたいのだから、機嫌も悪くなってしまうかもしれない。

「あの、私からお願い……でもダメ?」
「ダメ。さすがにこれだけされるとオレも我慢の限界や。だから、もし行くならオレとエマちゃん二人で――」

 ガタンとルニアが立ち上がる。つかつかと歩き入り口に向かった。

「わかった!! なら、わたしたちでここの瘴気を見張っとく。食べられるんだよな? レイ!!」

 ちょうど顔を出したフレイルを捕まえ、前に押し出した。

「え、え? 何ですか? 何の話ですか?」
「エマからのお願いだとよ」
「っ!? はい、何でも言ってくださいっ!」

 こうして、私、ブレイド、スピアーの三人でルフムイアに向かう事になった。
 事情を知ったフレイルの涙目が少し可哀想だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

ハズレの姫は獣人王子様に愛されたい 〜もしかして、もふもふに触れる私の心の声は聞こえていますか?〜

五珠 izumi
恋愛
獣人の国『マフガルド』の王子様と、人の国のお姫様の物語。  長年続いた争いは、人の国『リフテス』の降伏で幕を閉じた。 リフテス王国第七王女であるエリザベートは、降伏の証としてマフガルド第三王子シリルの元へ嫁ぐことになる。 「顔を上げろ」  冷たい声で話すその人は、獣人国の王子様。 漆黒の長い尻尾をバサバサと床に打ち付け、不愉快さを隠す事なく、鋭い眼差しを私に向けている。 「姫、お前と結婚はするが、俺がお前に触れる事はない」 困ります! 私は何としてもあなたの子を生まなければならないのですっ! 訳があり、どうしても獣人の子供が欲しい人の姫と素直になれない獣人王子の甘い(?)ラブストーリーです。 *魔法、獣人、何でもありな世界です。   *獣人は、基本、人の姿とあまり変わりません。獣耳や尻尾、牙、角、羽根がある程度です。 *シリアスな場面があります。 *タイトルを少しだけ変更しました。

処理中です...