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第二章 赤の瞳と金の瞳

第79話 柔らかさ親指二本分

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 今日はブレイドとスピアーも一緒にできるみたい。それと、フレイルまでいる。

「エマ様の好みの男性はやはりそれなりの体格でなければならないのですね。あぁ、生まれ変わりなんてするんじゃなかったなぁ。子どもの姿からやり直しとか……。なんとか元に戻る薬を発明しないとなぁ」

 それまでに基礎体力だけでもあげておこうとフレイルは気合を入れていた。
 いつ、誰がそんなこと言ったのかな?
 たぶん、言った本人ルニアを見ると「さぁ、始めるぞー!!」とにこやかだ。
 血は繋がってないけど久しぶりに会えたフレイルと一緒に鍛錬できるのが嬉しいのかな。そういえばルニアをここに留めてしまったけれど、彼女にも家族がいるんじゃないか。もしかして、向こうで悪いようにされてたりしないだろうか。聞いてあげたほうがいいのかな。

「ほら、エマ!! まずは柔軟だ」
「はい!!」
「よし、はじめの頃に比べてだいぶ体が柔らかくなってきたな」
「ありがとうございます!」

 最初はもう腹筋、親指一本分も頭が上がらない。背筋、親指一本分も顎が上がらない。前屈、足の指先タッチ? 無理無理。めちゃくちゃ遠いわ!! だったもんなぁ……。
 毎日少しずつでも頑張る事で、体の柔らかさはしっかり変化するみたい。
 まあ、まだ親指二本分進んだだけだけどね!!

「お疲れ様です。エマ様」

 フレイルがお水を持ってきてくれた。

「ありがとう、フレイル」

 子どもらしい可愛い笑顔は見ててほっこりしてしまう。
 少し動いただけでけっこう汗をかいてしまったので水分はしっかりとらないとね。ありがたく持ってきてくれたお水をもらいゴクリと飲み干す。
 気のせいか、フレイルの口がにやりと弧を描く。
 水なのになんだか、甘い?

「っ!? レイ、こら!! 何飲ませてるんだ!?」

 え、お水だよね? 何でルニアびっくりしてるの?
 そういえば、なんだか視界がぐるぐるまわるような……。

「やだなぁ、ルニア姉様。ちゃんと自分で安全確認はしてますよ?」

 フレイルのそんな言葉が耳に入ってきた。

「エマ、こっちの水をはやく!!」

 えっと、なんだか勢いが怖いんですけど――。渡されるままとりあえず水を流し込む。
 少ししてぐるぐるまわるのは治まった。

「いったい、何だったの?」

 皆が私を見てくる。え、何? そんなに見られると照れてしまう。

「「「あーーーーーーっ!」」」

 え、だから何なの? 一斉に叫ばれても何なのかわからない。

「エマ、瞳の色が」

 ブレイドに言われ、私は残ってる水に自分を映す。
 うーん、わからない。

「瞳の色が何?」
「またボクと同じ色になってる」
「え?」
「いや、ブレイド! それだけやないやろ!! エマちゃんがまた細くなっとる!!」
「え?」

 いやいや、ちゃんとお肉はありますよ? ここに……。
 ぷにぷにと自分のお腹を確かめる。あれ、なんか変だ。
 見える情報と触れる情報が一致しない。お肉がある場所に何も見えない。いったいどういうこと?

「あーあ、薄まっちゃったかぁ。せっかく理想の体になれる薬(時間限定)だったのに。エマ様のその様子じゃ、視覚だけになってるようですね。でも、悪くなさそうな結果です。瞳の色が変わったのはもしかして赤い瞳が嫌だったからですか?」
「あ、あのぉ」

 どう反応すればいいのかわからない。私はフレイルの作った薬の実験台にされたって認識で合ってるのかな?

「レーイーーー!!」

 そして、ルニアが怒ってる。すごくすごく怒ってる。
 何も考えず飲んでしまった私のせいでもあるような気がするけれど……。うん、怒るのはお姉さんのルニアに任せよう。
 ルニアがフレイルをつかみ上げようとした時、ブレイドとスピアーが私に覆い被さってきた。
 何が、何でっ!?
 次の瞬間、天井があるはずの場所から空が見えた。冷たい風が一気に入りこんでくる。

「驚きました。瘴気の中でも生活を続ける人達が、いらっしゃるなんて……」

 優しさと冷たさが混在する女の人の声が響く。
 空から、また人が降ってきた。しかも二人も……。
 何なの、空から人が降ってくるのが最近の流行りなの!?
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