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第一章 聖女と竜
第29話 あなたのそばにいたいな
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ブレイドが対応していた広場。瘴気もなくて無事解決できた事がわかる。そこに色々広げてちょっとしたパーティー会場みたいになっていた。
王様が開く本物はもっと豪勢だったりするのかな。だけど、比べるものが私の記憶にはなくて、この数人で始めるパーティーがすごくきらきらと光って見えた。
誰かと何かをするというのがすごく新鮮だ。聖女の仕事の時は世話役の人はいたけれど、こんなふうに楽しく話したりパーティーをしようなんてなくて側にいるけれど一人で何かしてることが多かったから。
「この魚からはいい味が出るのでスープを仕立てましょう。こちらの果物や野菜は……そうですねぇ」
そうつぶやきながらリリーはとってきた材料を持ってマチスとともに調理場へと向かう。その間もずっとなり続けるこのお腹。完成まで待てるのかな……。でも、美味しい料理を作ってもらえるという期待から心はもうウキウキしっぱなしだ。私はブレイドにもらった小さな干し肉の炙りを噛みしめながら空腹に負けず頑張って待つぞと心に決める。あぁ、お肉美味しいです。
「ブレイド、これもらってよかったの?」
王子様のおやつまで出させてしまうあたり、私とても失礼なのではないか。王子様って干し肉食べるんだ? 元婚約者も食べてたのかしら。なんて考えているとブレイドは笑いながら「いいよ」って言ってくれた。ありがとうございます。美味しくいただきます。
あぁ、干し肉もだけどきちんとお礼を伝えておかないとだった。
「ありがとう。ブレイド。あのね、私ここの人たちをもとに戻していってもいいかな? その、――」
果物に飽きたからリリーから人間にもどすつもりだった。なんて口が裂けても言えない。
何人になるかわからないけれどこう言っておけば戻し終わるまではぱくりと食べられちゃったりしなくなるよね。うん。
もしダメなら食べられる前に逃げるしかないのかなぁ。
「ここにいさせてくれるお礼に瘴気の浄化の手伝いをしながら、余裕があったらなんだけど、えっと」
話の途中でブレイドが私の両手をとって自分の手の上に持っていく。え、いまから食べられる?
「ごめんね、それはボクの仕事でボクがしなくちゃダメなことだから」
断られそうな雰囲気に続きを聞きたくないなと思ってしまう。
「……私、一人で頑張るのがすごく大変だって知ってる。だから、二人ならブレイドが助かるんじゃないかなって思って……迷惑だったかな」
涙より先に鼻水が出てしまう。これは寒いせいだ。きっと。
「違うよ。迷惑なんかじゃない」
ぎゅっと両手を包み込まれる。ブレイドはまっすぐ私を見ていた。
「ボクの国の問題だから、これ以上エマ達に迷惑をかけれないって思って、それでその、言い出せなかった。人に戻ったシルを見て涙を流す者が何人もいた。ボクにはその力はない。だから、エマお願いしてもいいかな。ボクは皆を元に戻してやりたい。ボクがエマに返せるものがあるなら何でも払う。だから」
私は顔をあげる。顔をぷるぷるとふって笑ってみせた。
「お肉もらったお礼です。また、食べたいです」
急いで食べてしまったから、もう少し味わいたかった!! あのお肉。
「わかった! またとってくる!」
びっくりした顔だったブレイドはふわりと笑った。なんだかいつもどこか思いつめてる顔をしていたから、その笑顔が私にとってとても嬉しいものだった。
私も一人で頑張っていた時はこんな顔をしていたのかな。
「あーもう、何いい雰囲気だしてるんやー!」
スピアーが頭に乗ってくる。一気に台無し感が増す。
「スピアー、重い」
「なら、はよオレも元に戻してくれ!!」
「ヤダ」
私からキスをするとかいう方法ではない別の方法があるなら考えてもいいけど、あるのかなぁ。
「なんでやー!!」
頭の上で暴れられフラフラする。がしりと掴んで胸の前に抱えると大人しくなった。
けれど気がつけばシルに呼ばれてブレイドが行ってしまった。
あぁ、もうブレイドの事をもっと知りたかったのに。なんだか邪魔されてしまったような気がする。
ブレイドもずっと瘴気と戦ってたんだよね。いつから、どうして、竜の事とかいっぱい知りたい事があったのに。
王様が開く本物はもっと豪勢だったりするのかな。だけど、比べるものが私の記憶にはなくて、この数人で始めるパーティーがすごくきらきらと光って見えた。
誰かと何かをするというのがすごく新鮮だ。聖女の仕事の時は世話役の人はいたけれど、こんなふうに楽しく話したりパーティーをしようなんてなくて側にいるけれど一人で何かしてることが多かったから。
「この魚からはいい味が出るのでスープを仕立てましょう。こちらの果物や野菜は……そうですねぇ」
そうつぶやきながらリリーはとってきた材料を持ってマチスとともに調理場へと向かう。その間もずっとなり続けるこのお腹。完成まで待てるのかな……。でも、美味しい料理を作ってもらえるという期待から心はもうウキウキしっぱなしだ。私はブレイドにもらった小さな干し肉の炙りを噛みしめながら空腹に負けず頑張って待つぞと心に決める。あぁ、お肉美味しいです。
「ブレイド、これもらってよかったの?」
王子様のおやつまで出させてしまうあたり、私とても失礼なのではないか。王子様って干し肉食べるんだ? 元婚約者も食べてたのかしら。なんて考えているとブレイドは笑いながら「いいよ」って言ってくれた。ありがとうございます。美味しくいただきます。
あぁ、干し肉もだけどきちんとお礼を伝えておかないとだった。
「ありがとう。ブレイド。あのね、私ここの人たちをもとに戻していってもいいかな? その、――」
果物に飽きたからリリーから人間にもどすつもりだった。なんて口が裂けても言えない。
何人になるかわからないけれどこう言っておけば戻し終わるまではぱくりと食べられちゃったりしなくなるよね。うん。
もしダメなら食べられる前に逃げるしかないのかなぁ。
「ここにいさせてくれるお礼に瘴気の浄化の手伝いをしながら、余裕があったらなんだけど、えっと」
話の途中でブレイドが私の両手をとって自分の手の上に持っていく。え、いまから食べられる?
「ごめんね、それはボクの仕事でボクがしなくちゃダメなことだから」
断られそうな雰囲気に続きを聞きたくないなと思ってしまう。
「……私、一人で頑張るのがすごく大変だって知ってる。だから、二人ならブレイドが助かるんじゃないかなって思って……迷惑だったかな」
涙より先に鼻水が出てしまう。これは寒いせいだ。きっと。
「違うよ。迷惑なんかじゃない」
ぎゅっと両手を包み込まれる。ブレイドはまっすぐ私を見ていた。
「ボクの国の問題だから、これ以上エマ達に迷惑をかけれないって思って、それでその、言い出せなかった。人に戻ったシルを見て涙を流す者が何人もいた。ボクにはその力はない。だから、エマお願いしてもいいかな。ボクは皆を元に戻してやりたい。ボクがエマに返せるものがあるなら何でも払う。だから」
私は顔をあげる。顔をぷるぷるとふって笑ってみせた。
「お肉もらったお礼です。また、食べたいです」
急いで食べてしまったから、もう少し味わいたかった!! あのお肉。
「わかった! またとってくる!」
びっくりした顔だったブレイドはふわりと笑った。なんだかいつもどこか思いつめてる顔をしていたから、その笑顔が私にとってとても嬉しいものだった。
私も一人で頑張っていた時はこんな顔をしていたのかな。
「あーもう、何いい雰囲気だしてるんやー!」
スピアーが頭に乗ってくる。一気に台無し感が増す。
「スピアー、重い」
「なら、はよオレも元に戻してくれ!!」
「ヤダ」
私からキスをするとかいう方法ではない別の方法があるなら考えてもいいけど、あるのかなぁ。
「なんでやー!!」
頭の上で暴れられフラフラする。がしりと掴んで胸の前に抱えると大人しくなった。
けれど気がつけばシルに呼ばれてブレイドが行ってしまった。
あぁ、もうブレイドの事をもっと知りたかったのに。なんだか邪魔されてしまったような気がする。
ブレイドもずっと瘴気と戦ってたんだよね。いつから、どうして、竜の事とかいっぱい知りたい事があったのに。
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