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第一章 聖女と竜
第9話 水浴びはあっつあつ
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「なぁ、無理するなー。ほら、こっちの食べれる野草採取からでもいいんじゃないの?」
「私だって、やればできるんだから」
外に出て鳥を追いかけ回す。追いかけ……、追いつけるか!!
次、肉!!
弓矢、槍? そんなものない。狙うは素手で鷲掴み。
「まったく、何やってるんだ」
「んー、運動?」
後ろではルニアとブレイドが苦笑いを浮かべながら話してる。
手伝って欲しい! とは思ったけれど、分けあって食べる大きな獲物はさすがに立ち向かう勇気はないわっ。
「ふ、ふふ、今日はこれくらいにしといてあげるわ」
疲れたので二人のところに戻った。もちろん獲得した獲物は一匹もいない。
そして、泥だらけ、傷だらけ、草だらけ。ついでにたくさんかいた汗でなんだかネバネバする。
「ううぅ、水浴びしたい。ブレイド、どこかで出来ない?」
「水浴びか、そうだな……」
あぁ、でも水を浴びたいけどこの寒さの中入ったら死んでしまうのでは? 思いとどまった方がいいかしら。
なんて考え直し、タオルをもらおうとルニアの方へ手を伸ばす。
「寒いよね。やっぱり大丈夫です」
いつも温かい水を用意してくれていた世話役の事を思い出す。どうしてるかな、今頃。
「あぁ、任せろ。ちょうどいい時間だ」
「えっと、いい時間?」
いったい何がいい時間なの?
◇
少し歩いた場所に川が流れていた。その川が見える場所で身を隠しつつ私達は流れをぽけーっと眺めていた。
「いつまでここに?」
「もう来てるぞ?」
「え?」
ブレイドが指をさす。そこからのそりのそりとソレは姿をあらわした。
顔の横に常に赤い炎が燃えている。赤とピンクのつるっとした体。見た目は大きなトカゲ。
「ブレイドのご親戚?」
「違う。知らないのか?」
「本で読んだ知識にあてはめるとサラマンダー。火蜥蜴ね」
「正解」
「へぇ、こんなところにも住んでるんだ」
ルニアが戦いたそうにサラマンダーを見ている。え、あんな大きなトカゲに挑むの? 戦いを……。
サラマンダーはのそり、のそりと大きくて浅い川目がけて進んでいく。
近付く度にジュッジュッと音がする。顔の横に飛んだ水分が蒸発しているのだろうか。
川の真ん中に辿り着くとドスンと体を水に沈めた。
ジュワーとすごい音がする。
「あ、水が。あれじゃあ水浴び出来ないじゃない」
「しー。すぐに終わるから」
そんなに大きな声で話してるわけじゃないのにブレイドに口を塞がれた。
サラマンダーが体を大きく上下すると立ち上がりもと来た道を戻っていく。
ルニアがすごく残念そうな顔してた。まさか、私の幼馴染戦闘狂だったりする?
でも、ブレイド(竜)を見た時は私を盾にしましたよね。ということはブレイドってすごく強いとか? んん?
のそのそ動く姿が見えなくなって、私はブレイドの手から逃げた。この人、強いのかな……?
手を通さない冷たい空気が肺に入ってくる。ふぅ、空気が美味しい。
「で、どうするの? これじゃあ熱すぎて水浴び通り越して茹でられちゃうんですが」
「まあ、待っていろ」
そう言ったあとブレイドはすぅと息を吸いこんだ。
そして静かに言葉が紡がれる。
「これって風の魔法」
「そう、風の魔法」
小石がぽんぽんと飛び上がり積み上がる。丸く円を描きながら。
熱くなった川の水を引き入れる小さな水たまりができていく。
「下からも水が湧いてる」
「そ、これでちょうどいい温度になるはずだ。サラマンダーの熱は半日くらい持つからゆっくり入っても問題はないだろう」
温度を確かめるためにブレイドが手を沈めていた。
たぶんいい感じなのだろう。うんうんと頷いていた。
「よっし、入ろうぜ」
ルニアが言った次の瞬間、私の体に風が直接ふきつける。
「……えっ?」
あれ、私の服は? ルニア、あなた何を持っているの?
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私は色々を隠しつつ水の中へと飛び込む。
元婚約者にだって肌を見られた事なんてないのにっ!!
「秘技、瞬間脱衣」
決め顔でルニアが言う。え、騎士団ってそんな秘技あるの!? 何それぇぇぇ!?
「ってあっつぅぅぃい!」
お湯、思った以上に熱かった。慣れるまでピリピリするくらい。飛び出さないように必死に耐えた。すごく熱い……けど耐えられないほどではない。ただ、恥ずかしさで顔が熱いぃぃ。
「あ、悪い悪い。騎士団にいた時の感じでやってしまったな」
「じゃないよ? 私、男の人に肌を見られたの初めてなんだから。って、ブレイドもこっち見ないでよー!!」
「ん、あぁ。美味しそうだぞ」
「今はそんな事きいてなーーーいっ!!」
お湯の温度に慣れてきてピリピリはおさまった。だけど、気持ちがおさまりません!!
「まあ、エマ。ブレイドの見たろ? おあいこじゃないか」
……、ねぇ? 実はルニアってば、本当は追い出されたんじゃないの? 騎士団でどんな生活してたの?
団長がこんな感じでは、団員達は毎日大変だったろうな。
「ほらほら、温浴は汗かいて痩せられるぞー」
ルニアはバッと自分の服を脱ぎとり、スタイルのいいボディを見せる。
鍛えられた体はあちこち傷あとがあるけれどとてもきれいに見えた。
頑張れば、私もきれいになれるよね。
「うん……」
でも、ブレイドが見てるしと思い彼の方を見た。
彼は視線を外し、来た方へと歩きだしていた。私は急いで彼に言葉を投げた。
「ありがとう!!」
危なかった。せっかく作ってくれたのにお礼を言いそびれてしまうところだった。
「そのままでも美味しそうだぞ」
返ってきたのがこれ。
私は思いっきり息を吸ってブレイドにもう一度声をかける。
「ぜったい痩せますーー!」
私、食べられたくないし!!
「私だって、やればできるんだから」
外に出て鳥を追いかけ回す。追いかけ……、追いつけるか!!
次、肉!!
弓矢、槍? そんなものない。狙うは素手で鷲掴み。
「まったく、何やってるんだ」
「んー、運動?」
後ろではルニアとブレイドが苦笑いを浮かべながら話してる。
手伝って欲しい! とは思ったけれど、分けあって食べる大きな獲物はさすがに立ち向かう勇気はないわっ。
「ふ、ふふ、今日はこれくらいにしといてあげるわ」
疲れたので二人のところに戻った。もちろん獲得した獲物は一匹もいない。
そして、泥だらけ、傷だらけ、草だらけ。ついでにたくさんかいた汗でなんだかネバネバする。
「ううぅ、水浴びしたい。ブレイド、どこかで出来ない?」
「水浴びか、そうだな……」
あぁ、でも水を浴びたいけどこの寒さの中入ったら死んでしまうのでは? 思いとどまった方がいいかしら。
なんて考え直し、タオルをもらおうとルニアの方へ手を伸ばす。
「寒いよね。やっぱり大丈夫です」
いつも温かい水を用意してくれていた世話役の事を思い出す。どうしてるかな、今頃。
「あぁ、任せろ。ちょうどいい時間だ」
「えっと、いい時間?」
いったい何がいい時間なの?
◇
少し歩いた場所に川が流れていた。その川が見える場所で身を隠しつつ私達は流れをぽけーっと眺めていた。
「いつまでここに?」
「もう来てるぞ?」
「え?」
ブレイドが指をさす。そこからのそりのそりとソレは姿をあらわした。
顔の横に常に赤い炎が燃えている。赤とピンクのつるっとした体。見た目は大きなトカゲ。
「ブレイドのご親戚?」
「違う。知らないのか?」
「本で読んだ知識にあてはめるとサラマンダー。火蜥蜴ね」
「正解」
「へぇ、こんなところにも住んでるんだ」
ルニアが戦いたそうにサラマンダーを見ている。え、あんな大きなトカゲに挑むの? 戦いを……。
サラマンダーはのそり、のそりと大きくて浅い川目がけて進んでいく。
近付く度にジュッジュッと音がする。顔の横に飛んだ水分が蒸発しているのだろうか。
川の真ん中に辿り着くとドスンと体を水に沈めた。
ジュワーとすごい音がする。
「あ、水が。あれじゃあ水浴び出来ないじゃない」
「しー。すぐに終わるから」
そんなに大きな声で話してるわけじゃないのにブレイドに口を塞がれた。
サラマンダーが体を大きく上下すると立ち上がりもと来た道を戻っていく。
ルニアがすごく残念そうな顔してた。まさか、私の幼馴染戦闘狂だったりする?
でも、ブレイド(竜)を見た時は私を盾にしましたよね。ということはブレイドってすごく強いとか? んん?
のそのそ動く姿が見えなくなって、私はブレイドの手から逃げた。この人、強いのかな……?
手を通さない冷たい空気が肺に入ってくる。ふぅ、空気が美味しい。
「で、どうするの? これじゃあ熱すぎて水浴び通り越して茹でられちゃうんですが」
「まあ、待っていろ」
そう言ったあとブレイドはすぅと息を吸いこんだ。
そして静かに言葉が紡がれる。
「これって風の魔法」
「そう、風の魔法」
小石がぽんぽんと飛び上がり積み上がる。丸く円を描きながら。
熱くなった川の水を引き入れる小さな水たまりができていく。
「下からも水が湧いてる」
「そ、これでちょうどいい温度になるはずだ。サラマンダーの熱は半日くらい持つからゆっくり入っても問題はないだろう」
温度を確かめるためにブレイドが手を沈めていた。
たぶんいい感じなのだろう。うんうんと頷いていた。
「よっし、入ろうぜ」
ルニアが言った次の瞬間、私の体に風が直接ふきつける。
「……えっ?」
あれ、私の服は? ルニア、あなた何を持っているの?
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私は色々を隠しつつ水の中へと飛び込む。
元婚約者にだって肌を見られた事なんてないのにっ!!
「秘技、瞬間脱衣」
決め顔でルニアが言う。え、騎士団ってそんな秘技あるの!? 何それぇぇぇ!?
「ってあっつぅぅぃい!」
お湯、思った以上に熱かった。慣れるまでピリピリするくらい。飛び出さないように必死に耐えた。すごく熱い……けど耐えられないほどではない。ただ、恥ずかしさで顔が熱いぃぃ。
「あ、悪い悪い。騎士団にいた時の感じでやってしまったな」
「じゃないよ? 私、男の人に肌を見られたの初めてなんだから。って、ブレイドもこっち見ないでよー!!」
「ん、あぁ。美味しそうだぞ」
「今はそんな事きいてなーーーいっ!!」
お湯の温度に慣れてきてピリピリはおさまった。だけど、気持ちがおさまりません!!
「まあ、エマ。ブレイドの見たろ? おあいこじゃないか」
……、ねぇ? 実はルニアってば、本当は追い出されたんじゃないの? 騎士団でどんな生活してたの?
団長がこんな感じでは、団員達は毎日大変だったろうな。
「ほらほら、温浴は汗かいて痩せられるぞー」
ルニアはバッと自分の服を脱ぎとり、スタイルのいいボディを見せる。
鍛えられた体はあちこち傷あとがあるけれどとてもきれいに見えた。
頑張れば、私もきれいになれるよね。
「うん……」
でも、ブレイドが見てるしと思い彼の方を見た。
彼は視線を外し、来た方へと歩きだしていた。私は急いで彼に言葉を投げた。
「ありがとう!!」
危なかった。せっかく作ってくれたのにお礼を言いそびれてしまうところだった。
「そのままでも美味しそうだぞ」
返ってきたのがこれ。
私は思いっきり息を吸ってブレイドにもう一度声をかける。
「ぜったい痩せますーー!」
私、食べられたくないし!!
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