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20話・来た?

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 ふわりとした生地とキラキラ光るレース。まるでお姫様が着そうなドレスの形のローブを着る。
 今日は、私が聖女だと街の人達にお披露目するパレードが行われる日だ。

「準備出来たかい?」
「はい」

 私はゆっくりとお辞儀する。それをカトルがじっと見つめる。

「とても綺麗だ」
「ありがとうございます」

 他人行儀なやり取りのあとカトルとともに私は街へと向かう。そのあとをリード、ルードがついてくる。
 リードは、ルードの双子の兄弟で、背が小さいリードがお兄さん。目もルードの青と黄色と違って両方とも黄色だ。ただ、二人の顔はよく似ている。

「殿下、私は警戒に」
「あぁ」

 彼はそう言ってから、城門を出たところでルードを残して消えた。

「行こうか」

 私は、今、馬に乗っている。何度か練習はしたけれど、すごく高くて怖い。
 カトルが支えてくれるけれど、落ちないかヒヤヒヤする。

「「聖女様! 聖女様!」」

 道の両側に溢れかえる人達。その真ん中を私達は進んでいく。
 私は、聖女なんかじゃないのに、皆が、期待の目をしてこちらを見ている。

「カナ、一緒に守っていこう。この国を――」

 カトルが何か言った気がするけれど、観衆の声に飲み込まれてきちんと聞き取れなかった。

 ーーー

「疲れた……」

 終わったあと、服を脱ぎベッドに座る。無理をしないようにと休憩時間を貰えた。

「学校の勉強遅れちゃうな。お父さん、お母さん、兄さん、タツミ、皆探してるかな」

 何度目だろう。こうして時間が出来ると考えてしまう。向こうの事。
 はやく、魔物をなんとかして向こうに帰りたい。もう一人、聖女が来たのなら、私だけ帰してもらえないのかな……。

 そんなずるいことを考えて。

「もうすぐ、くるそうだ」
「来る? 来るって何が?」

 ライトがなぞの言葉を発した。来るって、もしかして予言の魔物?

 ーーー

 ドンドン

 強い音で扉を叩く音がした。

「カナ様、お休みのところ申し訳ございません。魔物が街に現れました。カトル殿下もすぐに参ります。お着替えを!」

 お世話をしてくれる女の人が慌てている。もしかして、ついに?

「はい、わかりました」

 私は魔法の練習で使っている動きやすい服とローブを選び、用意した。

 ーーー

「カナ、大丈夫か?」
「はい」

 これがすめば、もしかしたら――。
 失敗は出来ない。

「行くよ!」

 私達は馬に乗り、もう一度街へとでる。
 沢山の兵士さんとリード、ルードを連れて。
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