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15話・知らせ
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「もう一人、魔法陣から女性が現れた」
急に告げられたのは、そんな知らせ。それって、私は実は偽物だったってこと? 聖なる力と魔力どちらもある本物が来たってこと?
カトルの言葉の続きが気になり、じっと彼を見つめる。カトルは、私が心配しているのだろうと思って、優しく微笑みながら続けた。
「カナは心配しなくていいよ、もう一人の女性は、聖なる力が10しかない。カナが聖女で間違いないよ」
「じゃあ、魔なる力は?」
そう言った時、カトルは一瞬だけ止まってから答えてくれた。
「彼女の方が高い」
一言だけ言って、また止まってしまった。言いにくいということは、きっと、すごい値だったのだろう。私と正反対……とか?
「もしかしたら、カナの足りない魔力を補う為に神が遣わしたのかもしれない! これで、予言に立ち向かえと!」
勝手すぎる――。その人だって、生活があり、恋人だっているかもしれないのに。
「その人に会えない?」
「ダメだ」
急にカトルが、厳しい表情で告げる。
「まだ、彼女についてはわからないことが多すぎる。カナに害する存在であれば大変だ。私が判断するからそれまで待ってくれ」
「……はい」
私は彼の言うことを聞くだけの人形なのだろうか。
あぁ、会ってみたい。もし、同じ境遇の人だったら、一緒に帰る方法を探してくれるかもしれない。タツミのいる世界に! そうよ、きっと恋人に会いたいと、その人だって泣いてるはず。
「私は、まだ仕事が残っているから、一緒にいられないが」
ぎゅっと、手を握られる。放してほしい。
「外に行く時や、何かあれば、必ず誰かと一緒に行動してくれ」
「わかりました。お仕事頑張って下さい」
にこりと笑って見せ、カトルを安心させる。こうしておけば、彼は仕事に戻ってくれるから。
そう思っていたのに……。
手を引かれて、彼の腕の中に引き込まれる。
「心配しなくていいよ。私が守るから。聖女は間違いなく、カナだけだ。そして、私の――」
そこまで言って、カトルの言葉は途切れた。
「ありがとうございます。カトル。私は大丈夫です」
だから、はやく放してほしい。タツミの匂いが、体温が、心臓の音が、この人のものに塗り替えられてしまう前に。
名残惜しそうに離れて、彼は仕事へと戻っていった。
私は、息を吐き、ベッドに座り込む。
途端に、涙が次々に溢れだし、頬を伝っていく。止まらなくなってしまったけれど、私はそのまま溢れてくる涙が尽きるまで、付き合ってあげた。
真っ赤な目になっていたら、またカトルが抱き締めてくるんだろうな……。
急に告げられたのは、そんな知らせ。それって、私は実は偽物だったってこと? 聖なる力と魔力どちらもある本物が来たってこと?
カトルの言葉の続きが気になり、じっと彼を見つめる。カトルは、私が心配しているのだろうと思って、優しく微笑みながら続けた。
「カナは心配しなくていいよ、もう一人の女性は、聖なる力が10しかない。カナが聖女で間違いないよ」
「じゃあ、魔なる力は?」
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「もしかしたら、カナの足りない魔力を補う為に神が遣わしたのかもしれない! これで、予言に立ち向かえと!」
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「その人に会えない?」
「ダメだ」
急にカトルが、厳しい表情で告げる。
「まだ、彼女についてはわからないことが多すぎる。カナに害する存在であれば大変だ。私が判断するからそれまで待ってくれ」
「……はい」
私は彼の言うことを聞くだけの人形なのだろうか。
あぁ、会ってみたい。もし、同じ境遇の人だったら、一緒に帰る方法を探してくれるかもしれない。タツミのいる世界に! そうよ、きっと恋人に会いたいと、その人だって泣いてるはず。
「私は、まだ仕事が残っているから、一緒にいられないが」
ぎゅっと、手を握られる。放してほしい。
「外に行く時や、何かあれば、必ず誰かと一緒に行動してくれ」
「わかりました。お仕事頑張って下さい」
にこりと笑って見せ、カトルを安心させる。こうしておけば、彼は仕事に戻ってくれるから。
そう思っていたのに……。
手を引かれて、彼の腕の中に引き込まれる。
「心配しなくていいよ。私が守るから。聖女は間違いなく、カナだけだ。そして、私の――」
そこまで言って、カトルの言葉は途切れた。
「ありがとうございます。カトル。私は大丈夫です」
だから、はやく放してほしい。タツミの匂いが、体温が、心臓の音が、この人のものに塗り替えられてしまう前に。
名残惜しそうに離れて、彼は仕事へと戻っていった。
私は、息を吐き、ベッドに座り込む。
途端に、涙が次々に溢れだし、頬を伝っていく。止まらなくなってしまったけれど、私はそのまま溢れてくる涙が尽きるまで、付き合ってあげた。
真っ赤な目になっていたら、またカトルが抱き締めてくるんだろうな……。
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