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後編
好きと大好き
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思い出した。あの時の男だ。でも、今さら何の用だろ? スマホは見つかったのよね?
「それで、私に何か用ですか?」
「あ、その、――。髪型変わったんですね」
「何……、当て付けを言いたかったの? 別に言われたから変えたわけじゃないし……」
私の顔が不機嫌に変わったせいだろう。目の前の男は、言おうかどうしようか悩んでいるみたい。
アルテを探さなきゃいけないのに、ありがとうも言ったしもう行ってもいいよね。やっぱり、家の近くにいた方がいいかな? はやく戻らなきゃ。もしすれ違ってしまったら、嫌だ。だから、これ以上他の人に時間をとられたくない。
「もう行ってもいい? 私、探さなきゃいけない人がいるの。約束してるから」
そう言って、歩きだそうとすると、腕を掴まれた。あれ、でも痛くない。すごく軽く、掴んでる?
「俺…………、絶対に負けられないヤツが現れたから、ソイツに持っていかれる前に、急がないとなんだ」
「え――?」
そのセリフ、聞いたばかりの言葉。
「アイツに負けたくない。俺だけど俺じゃない。アイツには――」
「あの……」
「佐々木絵理奈さん」
「はいっ」
フルネームで呼ばれ、返事をしてしまう。
「俺もエリナって呼んでもいいですか!」
「え? 意味がわかりません」
悲しそうに眉をさげる真面目君。
「うぅ、そろそろわかって……。すぐに会いに行くから、待ってろ」
「え……? えぇ?!」
「月城大輔です。ゲーム名はアルテ――」
「?!?!?!」
キャラ違わない? 喋り方も違いすぎだし、それに――。
頭の中で、またたくさんの私が必死に彼とアルテを繋げようとするがエラーばかり。だって、全然違う。あ、身長だけは似てるかもしれないけど……。そう、彼も大きい。まあ、アルテよりは低いのかな?
「やっぱり、俺では、アイツに勝てないですよね」
「ちょっとまって、私、私は!」
そっと握られていた手を離されたので、私は掴み返す。
「私はアルテを外見で好きになったわけじゃないんだから!」
途端、赤くなる月城さん。
「だけど、その、まだ混乱してて……」
だって、イメチェンどころの話じゃないよ? 見た目も感じも本当に別人だもの。
「それに、その……、私むこうでアルテに好きだって言えてなかったし……、だからアルテが、す――、好きかどうか聞けてないし」
そこまで言って、両手をぎゅっと握られた。
「俺、好きです。エリナが。大好きです」
握られた両手と頬と耳が熱くなる。
「あの日から、エリナの事忘れられなくて。ずっと、探してて――。きちんと謝りたかった。気持ちを伝えたかった。ただ、俺、こんなだし、出会い方最悪だったし、勇気が出なくて……。何度も何度も言いそびれて。でも、やっと言えた。エリナは? 俺じゃ駄目ですか?」
「ちょっと……言い方が、……ずるいよ。私は……」
ぱっぱっと手をふって、両手を自由にする。そして、背伸びして、彼のほっぺたをぐにっとつねった。
「まずは、ナホを振った分」
ぐいーっと伸ばす。
「私、まだ呼び捨てを許可してない分っ!」
ぱっと手を離して、後ろを向いた。真っ赤な顔をこれ以上見られたくない。
「むこうではありがとうございました。月城さん。でも、知ってると思うけど、私はこんなだからさ、お嬢様でもない、美人でもない……」
「勘違いしないで欲しい。俺はエリナさんが好き。エリーナじゃない、リリーナでもない。あの日、見つけた、エリナさんが好きなんだ。俺と付き合って下さい」
本当に、私でいいの?
「私、……エリナでいいよ。面倒なんでしょ。あとさ、教えてよ。私の知らないこといっぱい。まだ月城さんのこと私は、全然知らない」
「俺も、月城さんじゃなくて、……アルテでもなくて、ダイスケがいいな。話すよ。だから、俺の事知って欲しい。もう、俺の事全然知らないなんて言わなくなるぐらい」
「それで、私に何か用ですか?」
「あ、その、――。髪型変わったんですね」
「何……、当て付けを言いたかったの? 別に言われたから変えたわけじゃないし……」
私の顔が不機嫌に変わったせいだろう。目の前の男は、言おうかどうしようか悩んでいるみたい。
アルテを探さなきゃいけないのに、ありがとうも言ったしもう行ってもいいよね。やっぱり、家の近くにいた方がいいかな? はやく戻らなきゃ。もしすれ違ってしまったら、嫌だ。だから、これ以上他の人に時間をとられたくない。
「もう行ってもいい? 私、探さなきゃいけない人がいるの。約束してるから」
そう言って、歩きだそうとすると、腕を掴まれた。あれ、でも痛くない。すごく軽く、掴んでる?
「俺…………、絶対に負けられないヤツが現れたから、ソイツに持っていかれる前に、急がないとなんだ」
「え――?」
そのセリフ、聞いたばかりの言葉。
「アイツに負けたくない。俺だけど俺じゃない。アイツには――」
「あの……」
「佐々木絵理奈さん」
「はいっ」
フルネームで呼ばれ、返事をしてしまう。
「俺もエリナって呼んでもいいですか!」
「え? 意味がわかりません」
悲しそうに眉をさげる真面目君。
「うぅ、そろそろわかって……。すぐに会いに行くから、待ってろ」
「え……? えぇ?!」
「月城大輔です。ゲーム名はアルテ――」
「?!?!?!」
キャラ違わない? 喋り方も違いすぎだし、それに――。
頭の中で、またたくさんの私が必死に彼とアルテを繋げようとするがエラーばかり。だって、全然違う。あ、身長だけは似てるかもしれないけど……。そう、彼も大きい。まあ、アルテよりは低いのかな?
「やっぱり、俺では、アイツに勝てないですよね」
「ちょっとまって、私、私は!」
そっと握られていた手を離されたので、私は掴み返す。
「私はアルテを外見で好きになったわけじゃないんだから!」
途端、赤くなる月城さん。
「だけど、その、まだ混乱してて……」
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「それに、その……、私むこうでアルテに好きだって言えてなかったし……、だからアルテが、す――、好きかどうか聞けてないし」
そこまで言って、両手をぎゅっと握られた。
「俺、好きです。エリナが。大好きです」
握られた両手と頬と耳が熱くなる。
「あの日から、エリナの事忘れられなくて。ずっと、探してて――。きちんと謝りたかった。気持ちを伝えたかった。ただ、俺、こんなだし、出会い方最悪だったし、勇気が出なくて……。何度も何度も言いそびれて。でも、やっと言えた。エリナは? 俺じゃ駄目ですか?」
「ちょっと……言い方が、……ずるいよ。私は……」
ぱっぱっと手をふって、両手を自由にする。そして、背伸びして、彼のほっぺたをぐにっとつねった。
「まずは、ナホを振った分」
ぐいーっと伸ばす。
「私、まだ呼び捨てを許可してない分っ!」
ぱっと手を離して、後ろを向いた。真っ赤な顔をこれ以上見られたくない。
「むこうではありがとうございました。月城さん。でも、知ってると思うけど、私はこんなだからさ、お嬢様でもない、美人でもない……」
「勘違いしないで欲しい。俺はエリナさんが好き。エリーナじゃない、リリーナでもない。あの日、見つけた、エリナさんが好きなんだ。俺と付き合って下さい」
本当に、私でいいの?
「私、……エリナでいいよ。面倒なんでしょ。あとさ、教えてよ。私の知らないこといっぱい。まだ月城さんのこと私は、全然知らない」
「俺も、月城さんじゃなくて、……アルテでもなくて、ダイスケがいいな。話すよ。だから、俺の事知って欲しい。もう、俺の事全然知らないなんて言わなくなるぐらい」
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