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第四草

25・二人目

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 チャミちゃんの姿が見えた。何かで繋がれた数人の人達と一緒に。
 茶色い耳がない人の姿の彼女をオレはチャミちゃんと呼んでもいいのだろうか。彼女の名前をいまだ思い出せないでいる。

「風の精霊よ! 押し返せ!!」

 迫りくる相手に彼女は精霊術で対抗していた。助けに入らなければ!!

「ヨキ!!」

 チャミちゃんが気がつく。だが、オレの名前は呼ばない。それはそうだ。オレは今、違う姿だから。
 暴風が迫ってくる。オレ達はチャミちゃんの起こした精霊術によってまた風の外側へと追いやられた。
 上手く避けた怪物がまだ中に残っていた――。

「ヨキ、もう一度だ!!」
「うん」

 体勢を立て直し降下しようとした瞬間、頭上から大きな口が襲いかかってきた。

氷の槍アイスランス!!」

 口の中につっかえ棒の様に槍を出現させる。ヨキは急いでその槍を蹴りその場を離脱する。
 鋭い歯がたくさん並ぶ、そいつの口はかなり恐ろしく感じた。

「うわ、こいつが悪いヤツのボス?」

 大きな口の正体は巨大なさめだった。

「そうかもな」

 先ほど見た小さめの怪物は恐らくヨキの服の持ち主。
 なら、こいつが靄の犯人か?
 巨大な口が勢いよく閉じる。氷の槍は粉々に割れた。

「嘘だろ。オレの魔力で固めた氷だぞ」

 かなりの硬度のはずなんだがな。
 鮫は青と灰色の体表。先ほどの蛸とは違って、人の顔は見えない。
 目がギョロリとこちらに狙いを定める。

「ヨキ、躱せるか? くるぞ」
「ボクは負けないよ!!」

 ズズッとヨキの姿が変わった。より流線形になった気がする。

 ドンッ

 空気を押し出すようにして鮫はこちらを目指しすごい勢いで突進してきた。
 ヨキは上空に移動してそれを躱すとぐるりと旋回し鮫の後ろについた。

「よくやった。氷の槍アイスランス!!」

 鮫の背に向けて無数の氷の槍を放つ。
 だが、すべてを受けながらソイツはまたこちらへと突進してきた。
 右、左、上、下とヨキは躱し続ける。
 下に避けた時、見つけた。

「ヨキ! 次は下だ」
「え、うん」

 鮫が振り返る。次がくる。
 オレはその時に備え魔力を練る。
 くる!!
 ヨキがグッと下に首を下げる。
 鮫はオレ達の上を通り過ぎて行く。

「ここだ!」

 男の顔と目があった。
 何かを追い求める様に声なき声で叫び続けている男。

「ラビブロストライクっっ!!」

 草による増幅がない分を自分の魔力で補う。
 鮫の腹にそれが届くと大きな爆発が起こった。
 顔だけを狙って放った。
 そのまま上空を通過していく鮫。ヨキは急いで旋回し次に備える。

「あれ?」

 鮫はそのまま進み続け、下へと落下していった。

「勝ったの?」
「ヨキ、次はチャミちゃんだ」
「うん」

 確かめている時間なんてない。
 チャミちゃんは今もあの中で戦っている。
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