4 / 46
第二草
4・最初の街へ
しおりを挟む
「あー、草うめぇー」
手に抱えた大量の草をもしゃもしゃと食べる手足の長いうさぎは言った。まあ、オレだ。人間だった味覚が少し戻ったのか雑味を感じてしまう。何てこった。
でも、始まりが草食で良かったよ。食い物に困ることがそうそうなさそうだ。草だけに。
肉食獣スタートだったら苦労したんだろうな。じーちゃんがたまにもらしていた苦労話を思い出す。
「あの、ユーリ」
チャミちゃんが呆れたようにオレを見ていた。
「はっ! ごめん。ちょっと魔力の回復を」
回復させて、ここを出る前に蛇避けを作り直していくつもりだった。今度はもう少ししっかりしたものを作ることができる。チャミちゃんにも手伝ってもらった。
「これに魔力をこめてっと」
流れこんだ魔力はすっと雨のように染み込んでいき蛇避けの魔術が完成した。
「これでもう蛇はきませんか?」
「あぁ、でも永続するわけじゃない。何かがこれに触れて形を変えたりすればそこまでだし、気休めだよ」
「それでも、少し平和であれば」
「うん、オレ達と仲良くしてくれた人達だもんな」
「さぁ、行こうか」
「はい」
◇
赤色のラインが続く場所。ここを越えれば、第二の層だ。
オレ達がいた第一の層は、比較的穏やかな場所。今から踏み出すのは、まったく違う世界。
「チャミちゃん、ここからはオレ達みたいな知性を持った者達や凶暴性がつよくなった獣が多くなる。次に進めば進むほど大変になっていく。ごめんね。巻き込んで」
「なぜ、謝るの? 私は後悔なんてしてないよ。あなたを守れるようになったんだから」
彼女がそう言ってくれてオレの心は少し軽くなった。
「オレも後悔はしない。チャミちゃんが言ってくれてるのに、悪いよな」
じーちゃんから聞いた話のままなら、ここから進めば少ししてあそこに辿りつけるはず。
嘘か本当かわからないけれど……。
緑色の木々の中を進む。たまに休憩しながら前に前に進んでいく。
たまにガサリと草が揺れ動物と遭遇したりした。
ただ、警戒していたような怪物には出会わなかった。
「チャミちゃん、下がって!」
「あ、小鳥です」
そんな事が何度か続いたあと、川の流れる音が聞こえてきた。
「川がある……、もうすぐだ」
「何か、あるんですか?」
「うん、街があるんだ。じーちゃんから聞いた通りなら」
川の音を辿っていく。あった。街だ。
「あれが始まりの街ヒーラスター」
「街?」
泥を重ねて作ったような小山。地面には穴がポコポコとあいている。
「そう。あれで立派な街なんだ。人間だった頃見てたのとだいぶ違うけどねー」
「……」
チャミちゃんは前に耳を向けて何かを聞いているようだった。
あー、そういえばオレもうさぎだった。
チャミちゃんのように耳を動かすと、何かが動く音が聞こえてきた。おぉー、なんかすげぇー。あまり気にしていなかったが、かなり遠くの音も拾えるみたいだ。
「良かった。誰かいるみたいだな」
「行くのですか?」
「あぁ、そんなに難しいのはいないって話だけど。変わってないといいなぁ」
入り口らしき場所につくと、狼のようなヤツと狐のようなヤツが門番に立っていた。二人とも布のようなものをまとっていた。ここなら服になるような布を手にいれられそうだ。葉っぱや蔓はさすがに萎びてしまうからな。いくら毛皮で隠れているとはいえ、チャミちゃんは女の子だ。この先、もっと人間の姿に近付くような事があれば恥ずかしいだろう。
近付いて見ると、オレ達よりでかい。上からじろじろと見られることになった。まさか、いきなりぱくっとなんてされないよな。
「あの、ここにロイスさんって人いますか?」
じーちゃんから聞いたこの街で一番偉い人の名前。まだいるのかな。
「○✕△✕△□ロイス?」
「あー……」
ヤバい。言葉がわかんねぇ!!
手に抱えた大量の草をもしゃもしゃと食べる手足の長いうさぎは言った。まあ、オレだ。人間だった味覚が少し戻ったのか雑味を感じてしまう。何てこった。
でも、始まりが草食で良かったよ。食い物に困ることがそうそうなさそうだ。草だけに。
肉食獣スタートだったら苦労したんだろうな。じーちゃんがたまにもらしていた苦労話を思い出す。
「あの、ユーリ」
チャミちゃんが呆れたようにオレを見ていた。
「はっ! ごめん。ちょっと魔力の回復を」
回復させて、ここを出る前に蛇避けを作り直していくつもりだった。今度はもう少ししっかりしたものを作ることができる。チャミちゃんにも手伝ってもらった。
「これに魔力をこめてっと」
流れこんだ魔力はすっと雨のように染み込んでいき蛇避けの魔術が完成した。
「これでもう蛇はきませんか?」
「あぁ、でも永続するわけじゃない。何かがこれに触れて形を変えたりすればそこまでだし、気休めだよ」
「それでも、少し平和であれば」
「うん、オレ達と仲良くしてくれた人達だもんな」
「さぁ、行こうか」
「はい」
◇
赤色のラインが続く場所。ここを越えれば、第二の層だ。
オレ達がいた第一の層は、比較的穏やかな場所。今から踏み出すのは、まったく違う世界。
「チャミちゃん、ここからはオレ達みたいな知性を持った者達や凶暴性がつよくなった獣が多くなる。次に進めば進むほど大変になっていく。ごめんね。巻き込んで」
「なぜ、謝るの? 私は後悔なんてしてないよ。あなたを守れるようになったんだから」
彼女がそう言ってくれてオレの心は少し軽くなった。
「オレも後悔はしない。チャミちゃんが言ってくれてるのに、悪いよな」
じーちゃんから聞いた話のままなら、ここから進めば少ししてあそこに辿りつけるはず。
嘘か本当かわからないけれど……。
緑色の木々の中を進む。たまに休憩しながら前に前に進んでいく。
たまにガサリと草が揺れ動物と遭遇したりした。
ただ、警戒していたような怪物には出会わなかった。
「チャミちゃん、下がって!」
「あ、小鳥です」
そんな事が何度か続いたあと、川の流れる音が聞こえてきた。
「川がある……、もうすぐだ」
「何か、あるんですか?」
「うん、街があるんだ。じーちゃんから聞いた通りなら」
川の音を辿っていく。あった。街だ。
「あれが始まりの街ヒーラスター」
「街?」
泥を重ねて作ったような小山。地面には穴がポコポコとあいている。
「そう。あれで立派な街なんだ。人間だった頃見てたのとだいぶ違うけどねー」
「……」
チャミちゃんは前に耳を向けて何かを聞いているようだった。
あー、そういえばオレもうさぎだった。
チャミちゃんのように耳を動かすと、何かが動く音が聞こえてきた。おぉー、なんかすげぇー。あまり気にしていなかったが、かなり遠くの音も拾えるみたいだ。
「良かった。誰かいるみたいだな」
「行くのですか?」
「あぁ、そんなに難しいのはいないって話だけど。変わってないといいなぁ」
入り口らしき場所につくと、狼のようなヤツと狐のようなヤツが門番に立っていた。二人とも布のようなものをまとっていた。ここなら服になるような布を手にいれられそうだ。葉っぱや蔓はさすがに萎びてしまうからな。いくら毛皮で隠れているとはいえ、チャミちゃんは女の子だ。この先、もっと人間の姿に近付くような事があれば恥ずかしいだろう。
近付いて見ると、オレ達よりでかい。上からじろじろと見られることになった。まさか、いきなりぱくっとなんてされないよな。
「あの、ここにロイスさんって人いますか?」
じーちゃんから聞いたこの街で一番偉い人の名前。まだいるのかな。
「○✕△✕△□ロイス?」
「あー……」
ヤバい。言葉がわかんねぇ!!
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる