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第一草
2・平穏の終結
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ふにふにとくすぐったい。何かがオレをつっついてくる。まだ夜中じゃないか? ほら、外だってこんなに暗い。
「あれっ!?」
オレが作った蛇避けの結界がひとつ崩れているのを感覚で知る。
「ヤバい! チャミちゃん。逃げよう」
つっついていたのはチャミちゃんだった。彼女を押しながら急いで巣穴の外に出る。
外はすでに数匹が連れていかれ、うさぎより大きな蛇達に巻き付かれ、――そう、もう遅かった……。
チャミちゃんはそれを呆然と見ている。
あの後ろについてくる小さな子どもや、むっしゃむっしゃとゆっくり食事するじーさんや、意志疎通出来ないオレと仲良くしてくれたうさぎ達。
「オレがもっとしっかり蛇避けを作れていれば」
うさぎの身体じゃ、何をするにも限界がある。今だってチャミちゃん一人連れていくのにも必死だ。
「チャミちゃん、お願いだから動いてくれぇぇぇぇ」
なぜ、こんなに必死なのかって?
オレとこの子はここに来た時に勝手に決められた番。隣にいた。ただそれだけの関係だった。
オレがこんな姿になって、ショックでぼーっとしてたら寄り添ってくれたんだ。引っ張っていってくれて、ずっとそばにいてくれたんだ。ちび達のところで一緒に遊んだり、ここでの意志疎通を代わりにしてくれて――。復活した今ではオレの方がこうやって押したりしてるけれど、本当に助けられた。今度はオレが助ける番だ。
「キュァァァァァァァァ!!」
一匹のうさぎの声でチャミちゃんが我を取り戻した。そして、そのまま駆け出す。
「チャミちゃん!!」
ダメだダメだ!! 死んでしまう!!
――――また守れない。
帰ってきてくれ!
――――力があっても、お前は駄目なんだな。
オレの腕が、足が、こんなじゃなければ!
『力はここにあるの』
誰かの声が頭に響く。
『ただし、ここに住み続けることは出来なくなるの。それでもあなたは――』
今はただ、彼女を守りたい。ここでのたったひとつの絆だから。
オレは思い出した。じーちゃんが言っていた言葉を。
『強い赤い光に触れると進化が始まるの。ただ、次の場所に移動しなきゃならなくなるの』
赤い光が集まっている場所に走る。オレはその中に突っ込んだ。
力をくれ!!!!
懐かしい感覚が戻ってくる。腕と足。
これなら、魔術が使える!!
「間に合えぇぇぇぇぇっ!!」
オレが戻るとチャミのいた場所に彼女の姿はなく、大きな腹の蛇がいた。
「すまん、お前らはただ、ごはんを食べにきただけかもしれないがその子は渡せない!! オレの大事なチャミちゃんなんだぁぁぁぁ!!」
過去の記憶を手繰り寄せ、手で陣を描く。そして発動の言葉を紡ぐ。氷の魔術。
「氷の牢獄!!」
蛇の頭部をすべて氷の中に閉じ込める。あとは、膨らんでいるところを避けて狙いを定める。
「風の刃!!」
蛇の身体を刃で切り、彼女を見つけた。他にもたくさんのうさぎ達。
オレは急いでその場所に駆けつけた。
良かった。まだ生きてる。
二回目の人生を思い出す。神聖術師だったあの頃を。
「この者を癒せ、回復」
オレの中からずるりと何かが抜けていく。
そりゃそうだ。何も修行していないこの身体でこんなにたくさんの人数を回復するのだから。
「戻ってきてくれぇぇぇぇ」
もう信じるつもりもなかった神にもう一度、願ってみる。
「キュ……」
チャミちゃんが動いた。オレと目が合う。良かった、あとは、蛇避けの結界を直して……。
ぞわりとした何かが全身をなめるように這う。恐怖で思考が停止する。
おれの後ろに大きいのがいる。オレの背を越えて影が落ちる。……これ、ヤバいやつだ。
「チャミちゃん、逃げ――」
ありったけの魔力を後ろに向かって放とうとしたが、空っぽだった。もう術を使えるだけの魔力が残ってないみたいだ。ここまでかと覚悟した。
どうか、オレだけでコイツの腹が満足してくれますように――。
衝撃が後頭部に走りオレの意識はここで飛んだ。
「あれっ!?」
オレが作った蛇避けの結界がひとつ崩れているのを感覚で知る。
「ヤバい! チャミちゃん。逃げよう」
つっついていたのはチャミちゃんだった。彼女を押しながら急いで巣穴の外に出る。
外はすでに数匹が連れていかれ、うさぎより大きな蛇達に巻き付かれ、――そう、もう遅かった……。
チャミちゃんはそれを呆然と見ている。
あの後ろについてくる小さな子どもや、むっしゃむっしゃとゆっくり食事するじーさんや、意志疎通出来ないオレと仲良くしてくれたうさぎ達。
「オレがもっとしっかり蛇避けを作れていれば」
うさぎの身体じゃ、何をするにも限界がある。今だってチャミちゃん一人連れていくのにも必死だ。
「チャミちゃん、お願いだから動いてくれぇぇぇぇ」
なぜ、こんなに必死なのかって?
オレとこの子はここに来た時に勝手に決められた番。隣にいた。ただそれだけの関係だった。
オレがこんな姿になって、ショックでぼーっとしてたら寄り添ってくれたんだ。引っ張っていってくれて、ずっとそばにいてくれたんだ。ちび達のところで一緒に遊んだり、ここでの意志疎通を代わりにしてくれて――。復活した今ではオレの方がこうやって押したりしてるけれど、本当に助けられた。今度はオレが助ける番だ。
「キュァァァァァァァァ!!」
一匹のうさぎの声でチャミちゃんが我を取り戻した。そして、そのまま駆け出す。
「チャミちゃん!!」
ダメだダメだ!! 死んでしまう!!
――――また守れない。
帰ってきてくれ!
――――力があっても、お前は駄目なんだな。
オレの腕が、足が、こんなじゃなければ!
『力はここにあるの』
誰かの声が頭に響く。
『ただし、ここに住み続けることは出来なくなるの。それでもあなたは――』
今はただ、彼女を守りたい。ここでのたったひとつの絆だから。
オレは思い出した。じーちゃんが言っていた言葉を。
『強い赤い光に触れると進化が始まるの。ただ、次の場所に移動しなきゃならなくなるの』
赤い光が集まっている場所に走る。オレはその中に突っ込んだ。
力をくれ!!!!
懐かしい感覚が戻ってくる。腕と足。
これなら、魔術が使える!!
「間に合えぇぇぇぇぇっ!!」
オレが戻るとチャミのいた場所に彼女の姿はなく、大きな腹の蛇がいた。
「すまん、お前らはただ、ごはんを食べにきただけかもしれないがその子は渡せない!! オレの大事なチャミちゃんなんだぁぁぁぁ!!」
過去の記憶を手繰り寄せ、手で陣を描く。そして発動の言葉を紡ぐ。氷の魔術。
「氷の牢獄!!」
蛇の頭部をすべて氷の中に閉じ込める。あとは、膨らんでいるところを避けて狙いを定める。
「風の刃!!」
蛇の身体を刃で切り、彼女を見つけた。他にもたくさんのうさぎ達。
オレは急いでその場所に駆けつけた。
良かった。まだ生きてる。
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「キュ……」
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