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実家で頭が痛い猫。
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ある日。父が倒れました。
ガンでした。
手術したのち、今度は脳出血を起こし…血栓を取り切れず、彼には後遺症が残りました。
そんな話を聞いたのは、かなり事態が進んだときでした。
『言語分野がね…ダメみたいで、話せないらしいのよね』
電話口にて、母はそうこぼしました。
『今はリハビリしてるみたいだけど…医者は、もどることはないでしょうって』
母の流れるような愚痴は私の耳を通り抜けていきます。
なによりさ、と続けた母の言葉に、私は打ちのめされました。
『お父さん記憶があまりないみたいなのよ』
取止めもない母の愚痴を総合すると、昔の記憶はあるらしいという。妻である母の名前、娘二人の名前も記憶していると。
『ただね、猫のこと忘れてたのよ!』
母は憤慨していました。二十年も一緒に暮らしていたのに、と。
写メ見せたら思い出してきたみたいだけどー、と母は続けました。
『じゃあさ…』
『うん?』
『子供達の事はわかるだろうか…』
『…』
母は沈黙しました。
父の症状は、発語から記憶、体の一部の麻痺などに渡っていました。そして昨今の感染症対策のため、主治医にも本人にもまともにアポイントメントも取れない状況。
『正直、あの状態のあの人とこの家で暮らすのは無理』
そう母は締めくくりました。
私は、『お母さんの人生だから、お母さんの好きに生きて。手助けがほしいときは連絡して』と返すので手一杯でした。
親も老いる。そして自分も。
父はひねくれものでしたから、延命処置や移植手術などに懐疑的で、常に『そこまでして長生きしたくない、見捨てろ』などと口にしていました。
しかし病院からの報告によれば、自宅に戻りたいか?と聞かれると頷き、退院したい意思を示しているといいます。
母にすべてを委ねている手前、内心ぐちゃぐちゃしていましたが、父が次に入所する手続きもすんでいた矢先、父がやらかしました。
退院のときに医師の対応に怒り、暴れて医師に怪我を負わせたため精神科に入院してしまったとの知らせが届きました。
母自身も自らのがんで退院したばかりのときでした。
悪いことってどうして続くんでしょうね…
ガンでした。
手術したのち、今度は脳出血を起こし…血栓を取り切れず、彼には後遺症が残りました。
そんな話を聞いたのは、かなり事態が進んだときでした。
『言語分野がね…ダメみたいで、話せないらしいのよね』
電話口にて、母はそうこぼしました。
『今はリハビリしてるみたいだけど…医者は、もどることはないでしょうって』
母の流れるような愚痴は私の耳を通り抜けていきます。
なによりさ、と続けた母の言葉に、私は打ちのめされました。
『お父さん記憶があまりないみたいなのよ』
取止めもない母の愚痴を総合すると、昔の記憶はあるらしいという。妻である母の名前、娘二人の名前も記憶していると。
『ただね、猫のこと忘れてたのよ!』
母は憤慨していました。二十年も一緒に暮らしていたのに、と。
写メ見せたら思い出してきたみたいだけどー、と母は続けました。
『じゃあさ…』
『うん?』
『子供達の事はわかるだろうか…』
『…』
母は沈黙しました。
父の症状は、発語から記憶、体の一部の麻痺などに渡っていました。そして昨今の感染症対策のため、主治医にも本人にもまともにアポイントメントも取れない状況。
『正直、あの状態のあの人とこの家で暮らすのは無理』
そう母は締めくくりました。
私は、『お母さんの人生だから、お母さんの好きに生きて。手助けがほしいときは連絡して』と返すので手一杯でした。
親も老いる。そして自分も。
父はひねくれものでしたから、延命処置や移植手術などに懐疑的で、常に『そこまでして長生きしたくない、見捨てろ』などと口にしていました。
しかし病院からの報告によれば、自宅に戻りたいか?と聞かれると頷き、退院したい意思を示しているといいます。
母にすべてを委ねている手前、内心ぐちゃぐちゃしていましたが、父が次に入所する手続きもすんでいた矢先、父がやらかしました。
退院のときに医師の対応に怒り、暴れて医師に怪我を負わせたため精神科に入院してしまったとの知らせが届きました。
母自身も自らのがんで退院したばかりのときでした。
悪いことってどうして続くんでしょうね…
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