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猫は麻酔が効きにくい
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猫は帝王切開を決断し、医師に伝えて、出産予定日も確定しました。
お互いの両親にも連絡して、たぬきさんの両親は手術日に駆けつけてくれることになりました。毎度ありがたいことです。どっちが嫁親かわかんないぜ。自分のところは、母だけが来るようでした。まぁじぃさん出不精だからな…高齢猫もいるし…
たぬきさんのご両親とは、何度か顔を合わせましたし、本州にあるお宅にお邪魔してお泊りもしていたり。たぬきさんのお姉さんにもお会いしていますし、わたしは顔見せは終わった段階。うちの実家が逃げに逃げてここまできただけです。お義母さんにはすべて話しています。その際、『うちの息子もまだまだ半人前、そしてあなたも半人前。二人合わせて一人前で頑張ってください』と諭されました。…まぁ、わたしらわりと性格に難があるのは自覚してるんで…そうだよなあって思いました。たぬきさんは、自分の大事なもの以外は基本的に関心がありません。気も短いほうですし、最近流行のフェミニズムなどには懐疑的。
『男女平等をうたいながら、完全に男女平等にすると文句を言うから嫌い』
だそうです。彼が言うのは、男女平等ならば土木作業や高所作業、そういった作業にも女性は積極的に参加すべきなのに、そういうときだけは女性だから、と及び腰になるそういう矛盾が許せないんだとか。
男と女は違って当たり前、だからその違いを生かしてお互い得意な分野で頑張ればいいのに。というのが趣旨らしいです。
そういうわけなんで、とうふメンタルを理由に未だに専業主婦な猫には寛容です。『ちゃんとおうちのお仕事頑張ってるからいいじゃん』だそう。
たぬきさんのご実家では、ご両親の夫婦仲がナチュラルに良くて眼福でしたよ。
さりげないところで距離が近い。思いやりのある行動。ああ、うちの実家にはこれが無い…
こんな親御さんの下で育てば、確かにこんなポンコツ嫁でも大事にしてくれるたぬきさんができあがるわけだわ。そう思いました。
だってさ、息子夫婦(まだこの時点では予定段階)の目の前でふっつーにぴたってできる!?うちの実家じゃありえない!半径1メートル以内に入るだけでもお互い嫌そうなのに!
はぁ。興奮した。
そんなこんなで、よく夫婦二人で一緒な義両親。わたしらもあんなふうに年をとりたいなあ。
初夏に、腹を切ることになりました。
帝王切開は、基本的に臨月前、早めに手術を行います。陣痛が来る前ですね。普通分娩では危険が伴うお産で行われるものなので、胎児がある程度育って陣痛が来ないうちにやるものらしいです。
手術は昼ごろ。朝ごはんは抜かれました。水分摂取も制限されてます。おなかすいた。
どきどきしながら手術の準備へ。下な話ですが、剃られました。手術で体毛は邪魔だかららしい。そのせいで今も手入れしないといけない。仕方ないけどー。
いざ手術、まずは腹を割くわけなので、痛みに耐えるために麻酔を行います。脊髄麻酔です。お背中にぶっといお注射さして麻酔にかけます。もちろん失敗リスクあるんで承諾書書きます。下手すると下半身不随なんだと。怖い。
後々判明しますが猫は麻酔が効きにくかった。昔浴びるほど精神科で薬をもらったせいなのか?もともとなのか、わからないけど。
お薬一本ブッスーとさされて。背中で鈍い痛みがします。ズウウウウウウウウウンって痛み。思わずひぃぃぃぃって声が出た。
だめですよーせなかをつけてくださーいって、言われたけど痛いの。痛いのに痛いほうによらなくてはいけない、これ苦しい。
そのあとばらくして、医者がニヤニヤしながら私のおなかの皮を思いっきりつまんだ。
「いたいですかー?」
いたいいたいばかくそじじい!!
「いたいですううううう!!」
「おやぁ、きいてないかもしれないね?もう一本麻酔しようかね」
なんですとー!?…痛かった。
執刀される前、ぼんやりと記憶に残るのは、麻酔のおかげか象の足のように太くなったわたしの太もも。
麻酔のせいで、大分意識もぼんやりとはしていました。
あ、なんかきられてるってわかるんです。ただ痛みが無いだけ。引っ張られてる、きられてる。おなかのところが、ぼうっとした感じ。
そうして。血まみれの塊が、取り出されました。
最初、あの子は泣きませんでした。でも、泣かせないといけないそうで。肺呼吸にしっかり切り替えるために必要なんだそうです。
「はい、げんきな男の子ですよー」
「…こんにちは」
麻酔のせいか、思考がかなりぼやけておりました。
一瞬見えたのは、血まみれで赤黒いキューピー人形さんでした。
「おとうさん、うまれましたよー」
手術室の向こうで、父になった喜びに打ち震えるたぬきさんの声が聞こえました。
「猫ちゃん、ありがとう!」
おー、やったぜ。わたしはあんまり頑張ってないけど。
その日、わたしは母になりました。
お互いの両親にも連絡して、たぬきさんの両親は手術日に駆けつけてくれることになりました。毎度ありがたいことです。どっちが嫁親かわかんないぜ。自分のところは、母だけが来るようでした。まぁじぃさん出不精だからな…高齢猫もいるし…
たぬきさんのご両親とは、何度か顔を合わせましたし、本州にあるお宅にお邪魔してお泊りもしていたり。たぬきさんのお姉さんにもお会いしていますし、わたしは顔見せは終わった段階。うちの実家が逃げに逃げてここまできただけです。お義母さんにはすべて話しています。その際、『うちの息子もまだまだ半人前、そしてあなたも半人前。二人合わせて一人前で頑張ってください』と諭されました。…まぁ、わたしらわりと性格に難があるのは自覚してるんで…そうだよなあって思いました。たぬきさんは、自分の大事なもの以外は基本的に関心がありません。気も短いほうですし、最近流行のフェミニズムなどには懐疑的。
『男女平等をうたいながら、完全に男女平等にすると文句を言うから嫌い』
だそうです。彼が言うのは、男女平等ならば土木作業や高所作業、そういった作業にも女性は積極的に参加すべきなのに、そういうときだけは女性だから、と及び腰になるそういう矛盾が許せないんだとか。
男と女は違って当たり前、だからその違いを生かしてお互い得意な分野で頑張ればいいのに。というのが趣旨らしいです。
そういうわけなんで、とうふメンタルを理由に未だに専業主婦な猫には寛容です。『ちゃんとおうちのお仕事頑張ってるからいいじゃん』だそう。
たぬきさんのご実家では、ご両親の夫婦仲がナチュラルに良くて眼福でしたよ。
さりげないところで距離が近い。思いやりのある行動。ああ、うちの実家にはこれが無い…
こんな親御さんの下で育てば、確かにこんなポンコツ嫁でも大事にしてくれるたぬきさんができあがるわけだわ。そう思いました。
だってさ、息子夫婦(まだこの時点では予定段階)の目の前でふっつーにぴたってできる!?うちの実家じゃありえない!半径1メートル以内に入るだけでもお互い嫌そうなのに!
はぁ。興奮した。
そんなこんなで、よく夫婦二人で一緒な義両親。わたしらもあんなふうに年をとりたいなあ。
初夏に、腹を切ることになりました。
帝王切開は、基本的に臨月前、早めに手術を行います。陣痛が来る前ですね。普通分娩では危険が伴うお産で行われるものなので、胎児がある程度育って陣痛が来ないうちにやるものらしいです。
手術は昼ごろ。朝ごはんは抜かれました。水分摂取も制限されてます。おなかすいた。
どきどきしながら手術の準備へ。下な話ですが、剃られました。手術で体毛は邪魔だかららしい。そのせいで今も手入れしないといけない。仕方ないけどー。
いざ手術、まずは腹を割くわけなので、痛みに耐えるために麻酔を行います。脊髄麻酔です。お背中にぶっといお注射さして麻酔にかけます。もちろん失敗リスクあるんで承諾書書きます。下手すると下半身不随なんだと。怖い。
後々判明しますが猫は麻酔が効きにくかった。昔浴びるほど精神科で薬をもらったせいなのか?もともとなのか、わからないけど。
お薬一本ブッスーとさされて。背中で鈍い痛みがします。ズウウウウウウウウウンって痛み。思わずひぃぃぃぃって声が出た。
だめですよーせなかをつけてくださーいって、言われたけど痛いの。痛いのに痛いほうによらなくてはいけない、これ苦しい。
そのあとばらくして、医者がニヤニヤしながら私のおなかの皮を思いっきりつまんだ。
「いたいですかー?」
いたいいたいばかくそじじい!!
「いたいですううううう!!」
「おやぁ、きいてないかもしれないね?もう一本麻酔しようかね」
なんですとー!?…痛かった。
執刀される前、ぼんやりと記憶に残るのは、麻酔のおかげか象の足のように太くなったわたしの太もも。
麻酔のせいで、大分意識もぼんやりとはしていました。
あ、なんかきられてるってわかるんです。ただ痛みが無いだけ。引っ張られてる、きられてる。おなかのところが、ぼうっとした感じ。
そうして。血まみれの塊が、取り出されました。
最初、あの子は泣きませんでした。でも、泣かせないといけないそうで。肺呼吸にしっかり切り替えるために必要なんだそうです。
「はい、げんきな男の子ですよー」
「…こんにちは」
麻酔のせいか、思考がかなりぼやけておりました。
一瞬見えたのは、血まみれで赤黒いキューピー人形さんでした。
「おとうさん、うまれましたよー」
手術室の向こうで、父になった喜びに打ち震えるたぬきさんの声が聞こえました。
「猫ちゃん、ありがとう!」
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その日、わたしは母になりました。
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