4 / 143
四話 これからのことを考えて立ち上がりますわ
しおりを挟む私が今までのベレッタではなく前世の記憶を思い出した今のベレッタとして、フィンレルに自分の主張をしたのだけど、フィンレルは「そんな…」や「…ああ」「…そうなのか」と本当にわかっているのかという曖昧な生返事をするだけで、呆気に取られたような表情のまま肩を落として部屋を出て行った。
何なのよ!気のない返事ばっかりでもお!
私のことなどどうでもいいと思っているのかもしれないけど、私だけならまだしも自分の子供のことでもあるんだから、ちゃんと聞いて答えて欲しいものだわ。
まあいいわ、とりあえずはフィンレルに言いたいことは言ったわ。
あら息子の名前をどうするのかとか聞くのも忘れてしまったわ。
それは後で私が考えましょう。
さあこれから使用人たちをどうするかよね?
息子と私の平穏の為にも使用人たちをこのままにはしておけないわ。
使用人をどうするかの最終決定権は旦那であるフィンレルにあるのだろうけれど、私を蔑ろにしている証拠を突き付けて何とかしてもらわないと!
でも蔑ろにしているだけじゃ弱いかもしれないのよね…。
私のことに無関心なフィンレルが長年勤めている使用人を私を冷遇して蔑ろにしているからといってクビにしたりしないかもしれない。
そこでふとフィンレルと結婚してから侯爵家で生活していたことを思い返してみる。
そういえば、執事長と侍女長が私が嫁入りしてしばらくしてから街であれこれと贅沢品を買っていたり、いち使用人がおいそれとは入れないような貴族御用達レストランから家族と出てきたところを目撃したメイドたちが噂していたのをベレッタは聞いたことがあるのよね。
もしかして当主夫人ベレッタ用の予算を使い込んでいたりしていないわよね?いやそれかもしれないわ。
前世の記憶が甦ってから気付いたけど、私は侯爵夫人だからちゃんと私の為の予算っていうのがあるはずよね?
私は一応侯爵夫人の執務をやっていたけど、肝心な邸などの予算についての管理は執事長が全部していたから、私はまったくタッチしていない。
以前のベレッタはそういうものだと思っていたから自分用に予算があるなんて知らなかったのよ。
ベレッタは実家の子爵家でも蔑ろにされて虐げられ、使用人のような扱いをされて、ろくに外出もさせてもらえず邸に押し込まれていたし、母が亡くなってから貴族令嬢としての教育をろくに受けさせてもらえなかった。
アカデミーには通っていたけど、義母と義妹が私が連れ子の義妹を虐げているで性悪で、大の男好きの節操のない女って噂を流していたから、友人など出来るはずもなく、いつも一人でアカデミーの寮と学舎の往復だけだった。
だからベレッタはとんでもない世間知らずだったのよね。
これは私の予算についてとか、使用人のこと全部調べてみる必要があるわね。
私の専属侍女は私への行ないだけで何とかクビに出来るかしら?
私はこれでも侯爵夫人なんだから、フィンレルが何を言おうがガンガン主張するわ。
彼女たちにはちゃんと対価を払っているのだから、それなりに働かないのだったら居てもらう意味ないもの。
これからちゃんと証拠集めしなきゃ!
でも専属侍女だけじゃなく執事長、侍女長もなのよ!
彼らは私を蔑ろにしているだけじゃなく、うちのお金を横領しているかもしれない、それはもう犯罪よ!
でも証拠を集めて彼らをクビにすることが出来たとして、次の執事長、侍女長、専属侍女を早急に決める必要があるわね。
息子の乳母と専属侍女もね。
私が出来る時はお乳をあげたりしたいけど、1ヶ月くらいしたら私も侯爵夫人としての業務があるから息子につきっきりにはなれないのよね。
だからこれから早急にお乳が出る乳母が必要なの。
っていうか、乳母とかそういうのは子供が出来るまでに決まっているものじゃないの?
子供まで蔑ろにするつもり?はあ?ほんとに許せないわ。
あの旦那じゃ宛にならないから私が自分で探したいのだけど…ベレッタにそんな宛はないのよね…。
この邸の中のすべての使用人たちも調べたいわ…もし中に優秀で信用出来る人が眠っているのならその人たちに任せた方がずっとこの邸で働いているのだから手っ取り早いわよね。
興信所とかに頼むべきかしら?でもどこに行けばいいかわからないわ。
前世ならネットで調べたり友人に聞いてみたり出来たけれど、ベレッタってほとんど外に出たことがないものね、それにアカデミーに通っていた時も友人もいなかったのよね、困ったわね。
あっそうだ!母の弟、叔父がいるじゃない。
叔父は私の母もだけど両親も早くに亡くしていて、若くして商会を継いでいろいろと苦労していたみたいだけど、凄くやり手で両親の代より商会を繁盛させていると言われているわ。
まあ長年ベレッタが虐げられていたことを気付かない時点で、優秀かといえば疑問だけれども…。
でもベレッタは自分が虐げられていたことを言えなかったし、叔父が気付かないくらいあの父と義母が狡猾だったということなんだろうね。
叔父は両親が亡くなってから商会のことで手一杯で余裕がなかったのかもね。
自身の結婚も遅くて子供が二人いるけどまだ幼いのよね。
でもそんな忙しい中でもベレッタのことを気にかけて会いに来てくれていた人なのよね。
悪い人ではないはずだわ。
叔父に子供が出来たことを告げて会いに来てもらおうかな?
忙しいかもしれないけれど、ずっと私のことを気にかけてくれていた人だから連絡すればきっと会いに来てくれると思うのよね。
本当はこの邸の人間を調べる為に興信所を紹介してもらうから、この邸では会わない方がいいのかもしれないけど、私はお産直後で1ヶ月はあまり動いてはいけない時期なのよね。
でも1ヶ月後だと遅いのよ。
やっぱり叔父に来てもらって事情を話して、興信所を紹介してもらおう。
それとこの際実家でのこともこの邸のことも洗いざらい叔父に話すわ。
叔父は未だにあの家族に資金援助している可能性があるもの。
家族は母と不仲で私を虐げてきた人たちなのよ。
叔父が頑張って稼いだお金をそんな人たちにいつまでも渡しているなんて許せないわ。
本当は今までのお金も返せって言いたいけど、それは難しいかもだわ。
でもとりあえず叔父に今までベレッタがどうやって生活していたか、あの家族がどれだけベレッタを虐げていたか話して、今資金援助はどうなってるか聞いてみないとね。
さあ決まったわ!今頼れるのは叔父だけだもの、さあ決まったわ、早速手紙を書きましょう。
1,499
お気に入りに追加
3,426
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる