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五十七話
しおりを挟む昼頃から始まった決起集会でいいんだっけ?は、飲んで食べて騒いで夜遅くまで賑やかに開かれた。
シリウス様と私は少し早めに場を後にさせてもらって、それぞれの部屋に戻って休んだ。
そして一夜明けて魔族討伐隊と相まみえる日になった。
私は昨日レナンドさんからもらったイアリングとシリウス様と街に行った時に買ってもらったブレスレット、ブローチとペンダントも付けている。
あの箱のようなものも買ってもらったけど、それだけ部屋に置いておくことにした。
箱は手の平に乗るくらいのファンタジー作品に出てくる宝箱のようなもので、四方に魔石が埋め込まれていて、シリウス様の魔力がちゃんと籠もっているものだけど、落としたりしたくないので置いておくことにしたのだ。
これでもかとシリウス様に守られている感じだけど、そんな私を見てシリウス様は満足そうだ。
早朝に船で向かってくる討伐隊を監視しているヴァンパイア族から報告がきて、予定通り彼らは昼頃に到着するとのことだった。
こちらは朝早くに街に住んでいる魔族たちが続々と王城にやってきているようで、それぞれ指定された講堂に入っていっているそうだ。
そちらに終わるまで待機してもらうことになっている。
シリウス様と私、側近さんたちと討伐隊に対峙するメンバーたちは各々朝食を食べた後、応接室に集まっている。
もちろんレナンドさんもいる。
「時間がきたら出発するが、リゼットは我の側を離れるでないぞ。
それからナリナたちもリゼットを守るのだ」
「えっ?ナリナさんたちも行くのですか?」
私はシリウス様の言葉を聞いて驚いて尋ねた。
「当然だ、ナリナたちはリゼットの世話役であるが何かあってもリゼットを守れるように腕の立つ者を選んでおる」
シリウス様が何でもないように言う。
「えええそうなんですか?!」
私はナリナさんたちはお世話をしてくれる方だとてっきり思っていたから、彼女たちが強いとか思っていなかった。
私は目をパチパチさせながらナリナさんたちを見る。
「ナリナはデーモン族の幹部なのじゃ、同種の中でも魔力と能力、強さは3番目なのじゃ。
それによう気が利くからの、だからリゼット様の世話役に選んだのじゃ」
「えっ?」
アンディナさんの言葉に思わずナリナさんを見る。
ナリナさんてそんなに強いの?ナリナさんがにっこりと私を見て微笑む。
「あぁ、シニョンは私の姉なのですよ。
実力は私の次くらいですね」
クラウスさんからも聞き捨てならないことを言われた。
私はまた驚いて振り向いてシニョンさんを見る。
「シニョンさんがクラウスさんのお姉さん?クラウスさんの次に強いの!?」
「あら心外だわクラウス、私は貴方より強いわよ」
シニョンさんが不敵な笑みを浮かべてクラウスさんを見つめる。
「それはそれはでは、またお手合わせしましょうか、姉上」
「もちろん受けて立つわ」
クラウスさんとシニョンさんが目でバッチバチに戦っている感じ。
そう言われてみればクラウスさんもシニョンさんも妖艶な甘い美形で雰囲気も似ているかも。
ふえええ、ナリナさんもシニョンさんも私なんかよりめちゃくちゃ強いじゃない!
「ちなみにケネンはワシの妻なのですよ、リゼット様」
とドラキエスさんがにっこりしながら私を見て言った。
今度はドラキエスさんからの爆弾発言!
「えええ!ドラキエスさんの奥さんがケネンさん?!」
「そうなんですよ、リゼット様。
ドラキエスとあたしは異種族なので子は出来ませんが、長く夫婦をしております」
ケネンにそう言われて私は今度は口をポカンとさせた。
異種族の結婚もビックリだけど、異種族だと子が生まれないことにもビックリだ。
それに警戒心が強く他の方とあまり馴れ合わないと言われているドラゴン族のトップのドラキエスさんが異種族のオーガ族のケナンさんと夫婦になっているなんて!
「クククッリゼットよ、みながこの魔国で暮らすようになってから異種同士で伴侶を持つこともあるようになったのだ」
「そうなんですね!」
私は今日初めて聞く衝撃的なことばかりで、ビックリしっぱなしでアワアワしてしまう。
「とにかく我もだがナリナたちもリゼットの側で必ず守ると誓う」
「シリウス様ありがとうございます。
私はみなさんの中ではあまり役に立たないかもしれないですけど、私もみなさんの生活を邪魔する者は許せません!私も戦います!」
「ほっほっほっリゼットさまがやる気になられてて心強いですわい」
レナンドが笑いながら私を見つめる。
「はい!」
私は元気に笑顔で返事した。
この魔国に来てから私はシリウス様始め魔族みんなが優しさやあったかさをくれたから、前向きになれた。
前世を思い出したことあるかもしれないけれど、私が自分を認めて生きていていいんだと思わせてくれたのは間違いなく魔族の方たちだ。
シリウス様が私に家族になって欲しいって言ってくれたけど、今や私にとってシリウス様も魔族のみんなが家族だ。
その家族を害そうとする者は人間であっても誰であっても私は許さない。
向こうが攻めてくるなら叩き潰すつもりだ。
私怨がない訳ではない、私は元は神という存在だったけど、そんな崇高な者ではない。
自分のあの人たちに対する憎しみや落胆、怒りすべての気持ちをぶつけるつもりなのだ。
「リゼットよ、我はそなたのヒト族に対する憎しみや悲しみをちゃんとわかっておる。
この機会だ、それらすべてをぶつけてやればよい。
だが無理はするでないぞ、我もみながおる、ナリナたちもそなたを必ず守るから」
「はい!ナリナさん、シニョンさん、ケネンさんいつもありがとう、よろしくお願いします」
「「「はい!」」」
ナリナさんたちが笑顔で答えてくれた。
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