上 下
53 / 96

五十二話

しおりを挟む




 私が目覚めてから5日経った、明日で毒が魔国に落ちてから10日になる。

 ゲオング王国とカナンゲート聖王国に潜入している魔族たちの情報から明後日にあらたに編成された魔族討伐隊が船で魔国に向けて出航するらしい。

 前回大陸から魔国まで1ヶ月以上はかかった。

 距離もあるが、大陸から魔国までの海路は海が相当荒れているから魔道具を搭載した船でもなかなか思うように進まないのだ。

 順調にいったすると1ヶ月と少し程で魔国に到着するだろう。


 私はシリウス様が毎日魔力を注ぎに来てくれて、ナリナさんたちがあれこれと丁寧にお世話をしてくれているし、食事も私の身体を考えてくれたものを厨房担当の方が毎食作って提供してくれるからだいぶ回復してきた。

 前回より魔力が完全になくなり枯渇状態になっていたようだけど、順調に回復していると思う。

 魔族討伐隊が到着するまでには全く問題なく回復すると思う。


 私が目覚めた翌日にシリウス様と共に側近の方たちが私の部屋にやってきて、お礼を言われてから以降シリウス様に了解を取ってらしいけど、毎日のように側近の方たちが誰かしら部屋を訪れて私の様子を見に来るようになった。

 その時にみんな私の体調を気遣ってくれてあれが身体に良いこれが身体に良いとフルーツや野菜、魚、肉などを持ってきてくれるのだ。

 みんながそれぞれにわざわざ畑や海まで行って取ってきてくれているらしい。

 まるで雛鳥に餌を与える親鳥のようにせっせと運んできてくれるのだ。

 みんなが私に誠意を見せようとしてくれているのはわかっていてとても嬉しいのだけど、毎食きっちりと食べそれにお茶の時には必ず私の好きなお菓子やフルーツも厨房担当の方たちが用意してくれているから、いつも満腹状態でもう他に入る余地ないくらいなのだ。

「凄く有り難いけど、一度にそんなには食べれないです」

 嬉しいけど、少し困っていてそんなことを言うと、みんなが目に見えてシュンとする。

 それも何だか申し訳ない気持ちになって、アンディナさんには転移魔法を教えて欲しいと言ったのだけど。

「リゼット様が妾に教えて欲しいなんて言ってもらえるなんて感激なのじゃ」

 と目を輝かせて凄く喜んでくれた。

 その時に他の側近の方にも得意なものを教えてもらおうと思ってアンディナさんに聞いて見ると。

 すべてシリウス様が一番なのらしいけれど、ドラキエスさんはトータルに優れているけれど、特に強力な身体強化は魔族随一。

 クラウスさんは魔力コントロールが魔族の中でも凄く上手いんだそう。

 私も魔力コントロールは出来ていると思うけど、今回のことで無駄に魔力を使うことは自分の命を縮めるんだと実感した。

 フロムウェルさんとコムシジャさんは身体の使い方がとにかく上手いのだそう。

 もちろん上位のアンディナさん、ドラキエスさん、クラウスさんの方が強いのだけど、だからこそフロムウェルさんとコムシジャさんは有効的な身体の使い方をずっと自分たちで訓練しているそう。


 なので私はこれからの自分の為にも側近の方たちに得意なものを教えてもらうことにした。

 アンディナさん以外の側近のみんなもそれを凄く喜んでくれたからこれで良かったのかな?

 最初の方は私の部屋に結界を張ってそれぞれの方に時間を作ってもらって教えてもらっていたのだけど、フロムウェルさんとコムシジャさんがだんだん熱くなって部屋で戦い始めてしまって。

「フロムウェル様!コムシジャ様!ここはリゼット様のお部屋ですよ!」

 とナリナさんに叱られるということが起こって、私がシリウス様に了承をもらって私は完全に回復するまでは、見ているだけと約束させられて訓練所で教えてもらうことになった。

 アンディナさんには一緒にいてもらって、部屋から訓練所に転移してみたりする。

 例え失敗したとしても転移魔法の練習中はアンディナさんと手を繋いでいるから、不測の事態が起きてもアンディナさんが対処してくれるみたいで、安心して訓練することが出来ている。

 ドラキエスさんは訓練所で他のドラゴン族の方たちと戦闘するのを見せてもらっている。

 ドラキエスさんが身体強化をして打撃や蹴りを繰り出すと結界を何重にも張っていないと、人間より頑強に出来ている魔族の身体でも一発で木っ端微塵になる程なのだそう。

 なので他の魔族の中でも身体が最も頑強なドラゴン族の方たちが何重にも結界を張って対戦するのを見せてもらったのだけど、ドラキエスさんは早さも力も圧倒的で、動きが早すぎて攻撃が当たるまで見えなかった程だった。

 クラウスさんはあらゆる魔法をもちろん無詠唱で、驚くべき早さで発動させていた。

 魔法の発動の早さはアンディナさんと同じくらいらしい。

 私にはアンディナさんもクラウスさんもシリウス様と同じくらいの早さに見えるのだけど、シリウス様だけは規格外らしい。

 クラウスさんもシリウス様アンディナさん同様、手を左右に振ったり攻撃する相手に手の平を向けるだけ。

「ファーシリウス様とアンディナ様に比べれば私はまだまだですよ」

 とクラウスさんは言っていたけど、とにかくクラウスさんも凄いのだ。

 かなりの魔力を必要とする最上級魔法もクラウスさんにかかれば初級魔法のように簡単に効率の良い魔力の量で放っているように見えた。

 クラウスさんに効率的な魔力コントロールのコツを教わったけど、とても丁寧でわかりやすい。


 またフロムウェルさんとコムシジャさん二方の対戦を目の前で見せてもらったけど、身体の使い方が上手いだけでなく動きがとても早く美しくて見応えが凄くあり、凄く参考になった。

 私とても貴重なことをみんなに教えてもらっているのだ。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

ハズレ令嬢の私を腹黒貴公子が毎夜求めて離さない

扇 レンナ
恋愛
旧題:買われた娘は毎晩飛ぶほど愛されています!? セレニアは由緒あるライアンズ侯爵家の次女。 姉アビゲイルは才色兼備と称され、周囲からの期待を一身に受けてきたものの、セレニアは実の両親からも放置気味。将来に期待されることなどなかった。 だが、そんな日々が変わったのは父親が投資詐欺に引っ掛かり多額の借金を作ってきたことがきっかけだった。 ――このままでは、アビゲイルの将来が危うい。 そう思った父はセレニアに「成金男爵家に嫁いで来い」と命じた。曰く、相手の男爵家は爵位が上の貴族とのつながりを求めていると。コネをつなぐ代わりに借金を肩代わりしてもらうと。 その結果、セレニアは新進気鋭の男爵家メイウェザー家の若き当主ジュードと結婚することになる。 ジュードは一代で巨大な富を築き爵位を買った男性。セレニアは彼を仕事人間だとイメージしたものの、実際のジュードはほんわかとした真逆のタイプ。しかし、彼が求めているのは所詮コネ。 そう決めつけ、セレニアはジュードとかかわる際は一線を引こうとしていたのだが、彼はセレニアを強く求め毎日のように抱いてくる。 しかも、彼との行為はいつも一度では済まず、セレニアは毎晩のように意識が飛ぶほど愛されてしまって――……!? おっとりとした絶倫実業家と見放されてきた令嬢の新婚ラブ! ◇hotランキング 3位ありがとうございます! ―― ◇掲載先→アルファポリス(先行公開)、ムーンライトノベルズ

義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる

一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。 そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった

ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。 あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。 細かいことは気にしないでください! 他サイトにも掲載しています。 注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。

【R18】転生したら異酒屋でイキ放題されるなんて聞いてません!

梅乃なごみ
恋愛
限界社畜・ヒマリは焼き鳥を喉に詰まらせ窒息し、異世界へ転生した。 13代目の聖女? 運命の王太子? そんなことより生ビールが飲めず死んでしまったことのほうが重要だ。 王宮へ召喚? いいえ、飲み屋街へ直行し早速居酒屋で生ビールを……え? 即求婚&クンニってどういうことですか? えっちメイン。ふんわり設定。さくっと読めます。 🍺全5話 完結投稿予約済🍺

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

処理中です...