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五十二話
しおりを挟む私が目覚めてから5日経った、明日で毒が魔国に落ちてから10日になる。
ゲオング王国とカナンゲート聖王国に潜入している魔族たちの情報から明後日にあらたに編成された魔族討伐隊が船で魔国に向けて出航するらしい。
前回大陸から魔国まで1ヶ月以上はかかった。
距離もあるが、大陸から魔国までの海路は海が相当荒れているから魔道具を搭載した船でもなかなか思うように進まないのだ。
順調にいったすると1ヶ月と少し程で魔国に到着するだろう。
私はシリウス様が毎日魔力を注ぎに来てくれて、ナリナさんたちがあれこれと丁寧にお世話をしてくれているし、食事も私の身体を考えてくれたものを厨房担当の方が毎食作って提供してくれるからだいぶ回復してきた。
前回より魔力が完全になくなり枯渇状態になっていたようだけど、順調に回復していると思う。
魔族討伐隊が到着するまでには全く問題なく回復すると思う。
私が目覚めた翌日にシリウス様と共に側近の方たちが私の部屋にやってきて、お礼を言われてから以降シリウス様に了解を取ってらしいけど、毎日のように側近の方たちが誰かしら部屋を訪れて私の様子を見に来るようになった。
その時にみんな私の体調を気遣ってくれてあれが身体に良いこれが身体に良いとフルーツや野菜、魚、肉などを持ってきてくれるのだ。
みんながそれぞれにわざわざ畑や海まで行って取ってきてくれているらしい。
まるで雛鳥に餌を与える親鳥のようにせっせと運んできてくれるのだ。
みんなが私に誠意を見せようとしてくれているのはわかっていてとても嬉しいのだけど、毎食きっちりと食べそれにお茶の時には必ず私の好きなお菓子やフルーツも厨房担当の方たちが用意してくれているから、いつも満腹状態でもう他に入る余地ないくらいなのだ。
「凄く有り難いけど、一度にそんなには食べれないです」
嬉しいけど、少し困っていてそんなことを言うと、みんなが目に見えてシュンとする。
それも何だか申し訳ない気持ちになって、アンディナさんには転移魔法を教えて欲しいと言ったのだけど。
「リゼット様が妾に教えて欲しいなんて言ってもらえるなんて感激なのじゃ」
と目を輝かせて凄く喜んでくれた。
その時に他の側近の方にも得意なものを教えてもらおうと思ってアンディナさんに聞いて見ると。
すべてシリウス様が一番なのらしいけれど、ドラキエスさんはトータルに優れているけれど、特に強力な身体強化は魔族随一。
クラウスさんは魔力コントロールが魔族の中でも凄く上手いんだそう。
私も魔力コントロールは出来ていると思うけど、今回のことで無駄に魔力を使うことは自分の命を縮めるんだと実感した。
フロムウェルさんとコムシジャさんは身体の使い方がとにかく上手いのだそう。
もちろん上位のアンディナさん、ドラキエスさん、クラウスさんの方が強いのだけど、だからこそフロムウェルさんとコムシジャさんは有効的な身体の使い方をずっと自分たちで訓練しているそう。
なので私はこれからの自分の為にも側近の方たちに得意なものを教えてもらうことにした。
アンディナさん以外の側近のみんなもそれを凄く喜んでくれたからこれで良かったのかな?
最初の方は私の部屋に結界を張ってそれぞれの方に時間を作ってもらって教えてもらっていたのだけど、フロムウェルさんとコムシジャさんがだんだん熱くなって部屋で戦い始めてしまって。
「フロムウェル様!コムシジャ様!ここはリゼット様のお部屋ですよ!」
とナリナさんに叱られるということが起こって、私がシリウス様に了承をもらって私は完全に回復するまでは、見ているだけと約束させられて訓練所で教えてもらうことになった。
アンディナさんには一緒にいてもらって、部屋から訓練所に転移してみたりする。
例え失敗したとしても転移魔法の練習中はアンディナさんと手を繋いでいるから、不測の事態が起きてもアンディナさんが対処してくれるみたいで、安心して訓練することが出来ている。
ドラキエスさんは訓練所で他のドラゴン族の方たちと戦闘するのを見せてもらっている。
ドラキエスさんが身体強化をして打撃や蹴りを繰り出すと結界を何重にも張っていないと、人間より頑強に出来ている魔族の身体でも一発で木っ端微塵になる程なのだそう。
なので他の魔族の中でも身体が最も頑強なドラゴン族の方たちが何重にも結界を張って対戦するのを見せてもらったのだけど、ドラキエスさんは早さも力も圧倒的で、動きが早すぎて攻撃が当たるまで見えなかった程だった。
クラウスさんはあらゆる魔法をもちろん無詠唱で、驚くべき早さで発動させていた。
魔法の発動の早さはアンディナさんと同じくらいらしい。
私にはアンディナさんもクラウスさんもシリウス様と同じくらいの早さに見えるのだけど、シリウス様だけは規格外らしい。
クラウスさんもシリウス様アンディナさん同様、手を左右に振ったり攻撃する相手に手の平を向けるだけ。
「ファーシリウス様とアンディナ様に比べれば私はまだまだですよ」
とクラウスさんは言っていたけど、とにかくクラウスさんも凄いのだ。
かなりの魔力を必要とする最上級魔法もクラウスさんにかかれば初級魔法のように簡単に効率の良い魔力の量で放っているように見えた。
クラウスさんに効率的な魔力コントロールのコツを教わったけど、とても丁寧でわかりやすい。
またフロムウェルさんとコムシジャさん二方の対戦を目の前で見せてもらったけど、身体の使い方が上手いだけでなく動きがとても早く美しくて見応えが凄くあり、凄く参考になった。
私とても貴重なことをみんなに教えてもらっているのだ。
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