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五十一話
しおりを挟む私が目覚めた翌日、私があの時の話を聞きたいと言ったので、シリウス様だけでなく側近の方たち全員が部屋に訪れた。
みんなに気遣われて大袈裟な程のお礼を言われて、何だかこそばゆくなってしまった。
アンディナさんは涙を流しているし、他の側近の方たちも目を潤ませている。
フロムウェルさんは腕で乱暴に目を擦りながら鼻をズズッとさせている。
フロムウェルさんは顔を私に見えないように隠しているけど、フロムウェルさんも泣いてくれているの?
私の為に涙を流してくれていることに私は心がポッとあったかくなった。
それから今回みんなが何故血を吐いて倒れてしまったかをアンディナさんが説明してくれた。
それはあの時に少し話してくれたけど、ゲオング王国とカナンゲート聖王国がスキル聖剣の光と神聖魔法から抽出した毒を船で運び魔道具を使って魔国に撃ち込んできたという。
その毒はスキル聖剣の光と神聖魔法を持つ者以外は魔族だけでなく人間にとっても猛毒で、今は使用禁止となっているものだと聞かされた。
聖なるスキルも神聖魔法も量が過ぎるか濃縮されると魔族だけでなく、人間にも毒になるのだろうとアンディナさんが教えてくれた。
アンディナさんが450年程前にゲオング王国の当時の国王に召喚されたから知り得た情報だったことも聞いた。
ゲオング王国とカナンゲート聖王国がそこまでしてくるなんて!と私は思ったけど、シリウス様が「このままおめおめと引き下がるとは考えられん」と以前言っていたけど、その通りになった訳だ。
おまけに人間にも猛毒となる使用禁止になっている毒で全魔族を殺そうとした人間たちを許せないと思った。
いくら人間にとって憎むべき存在の魔族が相手でも、自分たちの矜持を守る為なのか何なのか知らないけど、人間にも害になるものを使うなんて。
自分たち以外はどうなろうが良いというような両国の王族の考えが本当に許せなかった。
それに今や魔族は私の大切な仲間なのだから。
シリウス様から魔国に上陸してくるであろう両国の人間たちを迎え撃ち、その後ふたつの国を滅ぼすと聞いても、私はそのことに罪悪感を感じなかった。
私はいくら魔族だと言っても人間だったのだが、当然だろうと思ったのだ。
冷たいと思われるかもしれないけど、魔族の方たちにあんな酷いことをしたんだもの、魔族はやられたことはちゃんと返すべきだと思う。
私も出陣すると言った。
みんな私の大切な仲間だ、仲間を害した人間たちを許すことは出来ない、私も戦う。
そのことに何の迷いもなかった。
私が倒れた後、シリウス様は魔力を失くすことなく自分に回復魔法をかけて復活してから、全魔族を蘇生したらしくその日の晩にはみんな元気になったそうで、デーモン族とヴァンパイア族を大陸に派遣して、探りを入れたらしい。
それであらためて魔族討伐隊を編成して毒が効果をなくす10日後に船で大陸を出発して、魔国に上陸する予定となっている。
シリウス様はそれを迎え撃つつもりで、私もそれまでに回復して戦うつもりだ。
その後、ゲオング王国とカナンゲート聖王国を滅ぼしに行くらしいけど、私もシリウス様と一緒に行くつもりだ。
それが済んだら私にはやることがある。
絶対にやらなければならないこと、私もちゃんと決着を着ける!
その前にシリウス様に私の気持ちをちゃんと言葉にして伝えようと思う。
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