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三十三話

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「こら!レナンドリゼットを怯えさせるでない!」

「えええぇ」

 シリウス様が私の前に出て私を隠すようにしてレナンドさんを叱りつけたのでレナンドさんは突然のことに驚く。

「し、シリウス様違うんです。

 確かに少したじろぎましたが、怯えたのではありません。

 その、アンディナさんに聞いたりもしていましたし、今まで実際に接してきてドラゴン族の方は特に警戒心が強いと思っておりましたので、レナンドさんが全然違ったので驚いてしまったのです」

「そうなのか…てっきり怯えているのかと…」

 シリウス様が苦笑いをしながら私を見つめてくる。

 シリウス様は私の思念が伝わってるみたいけど、こうやってたまに細かい感情については行き違いがあったりする。

「ほぉ~リゼットさまはファーシリウスさまの真名を呼ぶことを許される仲であるとそれはそれは、ほっほっほっ」

 そんなことを言ってレナンドさんはシリウス様と私を交互に見て愉快そうに笑う、私は何だかシリウス様の仲を誤解されているような気がして、顔が熱くなり恥ずかしくなって俯く。

 まだ恋人っていうの?そういうのじゃないから…シリウス様は自分の気持ちを隠したりしない方だから、私を好きでいてくれていることは疑いようはないし、私もシリウス様のことが好きだ。

 きっと私の気持ちはシリウス様に伝わっているはずだけど、私はまだ言葉にして伝えていないし、シリウス様もそれをわかってくれていて待ってくれている状態なのだと思う。

「まあ、他の同種はまだ子供ですわい」

「えっ?そうなのですか?」

 魔族は長命だと言われているし、シリウス様が蘇生したりしているようなので、みんな私なんかでは想像も出来ないくらい長生きしているだろうけど、レナンドさんに比べればってこのなのかな。

「まあ確かにドラゴン族は元々他の種族と馴れ合わない、用心深く警戒心の強い種族であるが、そうしたのはわしのせいですわい」

 レナンドさんがふむふむと腕を組んで言う。

「レナンドさんのせい?」

「そうじゃ、この世界はうんと昔元々ヒト族とドラゴン族、あとは動物と言われる獣だけが生きておったのですわい。

 その頃は魔獣もいなかったわい。

 まあ元からドラゴン族は他の種族とはそんなに関わらず離れて暮らしてきたが、それでも昔はあの大陸で暮らしていて、そのうち他の種族も生まれ出してきたのですわい。

 後から生まれた種族がみなヒト族より強かったんですわい。

 ヒト族は数は多いし知恵はあったが、個体だと一番弱いと言える種族となった訳だわい。

 まあそれで種の存続の危機を感じるのは当たり前だわいな。

 他の種族を警戒するようになり、特に身体も大きく力も一番上なわしらに一番危機感を持ったのですわい。

 それでわしらを敵と見做して排除しようとしてきたのですわい。

 ヒト族は頭を使う種族だからの、同種が一体でいる時に大勢に狙われて同種たちが次々に殺されてしまったのですわい。

 それに同種たちは怒り狂ってヒト族を皆殺しにすると息巻いたが、もしヒト族を皆殺しにしてもまた別の種族が増えて同じことの繰り返しになり、わしらを滅ぼそうとしてくることになろうとわしは思ったのですわい。

 わしらは元から少ない種族じゃ、戦になってこれ以上同種を失いたくないと思ったわしがヒト族が暮らす大陸から離れて暮らすことに決めたのですわい。

 それでこの魔国とは反対側にある孤島で同種だけで暮らすようになったのですわい。

 だからしてそれからは同種しかおらん生活での、他の種族と関わって生きてきた者は数える程しかおらんからの~それでより警戒心が強くなったかもしれんですわい」

 そうだったのか。

 だからドラゴン族も人間を憎んでいるのか。

 確かに人間が自分たちより強い種族が増えてくれば危機感を募らせるのは仕方のないことかもしれない。

 悪意ではなく自分たちが生き残る為だったのかもしれないけど、それが他種族に恨まれることになったんだね…。

 人間の味方をする訳じゃないけど、弱い者の方からすれば簡単に共存なんて言えないよね…。

「…そうだったんですね」

「おぉ、余計な事を喋ってしまいましたわい、で今日はどうされたので?」

 レナンドさんがシリウス様にと向かい合う。

「ああ、リゼットに魔道具を贈りたいのだ」

「ほぉ~リゼットさまに魔道具を?」

 レナンドさんが何だかニヤニヤしている。

「そうだ、我が魔力を流すから
 リゼットに似合いそうなものをいくつか見繕ってくれ」

 ニヤニヤするレナンドさんを意に介さずシリウス様が言う。

「それでファーシリウス様がわしの店を選んでくれたのは嬉しいのですわい。

 そうか、リゼットさまに似合いそうなものかの~う~んう~ん」

 レナンドさんが片手を顎に持っていって唸り出した。

 だけどしばらくすると「ちょい待っててくだされ」と言って店の奥にある扉を開けて中に入って行った。

 それからほんの数分程でレナンドさんが戻ってきて、店の奥のカウンターに4つほどの商品を並べた。

「ファーシリウスさまこれはすべて身に付けて、身を守るお守りのようなものですわい。

 小さい魔石が付いておるがの、ファーシリウスさまの魔力を流すだけで身に付けているだけでファーシリウスさまの魔力に守るられるものですわい、どうかの?」

 カウンターに並べられたものは、細いチェーンの輪になったものに小さい魔石が4つほど付いたもの、赤の花のような細工の真ん中に魔石が埋め込まれているブローチ?、太めの鎖の先にある蝶のような金の細工にこれまた真ん中に魔石が埋め込まれているペンダント、そして最後の1つは黒に金の細工がしてある長方形の小さい宝石箱のようなもので、これも四方の中央の所に魔石が埋め込まれている。

「ふむ、どれも良いものだな、すべて貰うとする」

「えっ?すべて?シリウス様ちょっと…」

 シリウス様がすんなり言ったことに私は驚く。

「リゼットさま良いではないですかの。

 シリウスさまがあなたさまに買ってあげたいのですわい。

 こちらはすべて身に付けた時に持ち主に合ったサイズへと変わりますわい。

 またどのサイズへも持ち主の希望通りに変わりますゆえ、末永く可愛がって下さいますようにお願いしますわい」

 レナンドさんがそう言って4つの魔道具をそれぞれの箱に入れていくのを私は止めようか、止めると失礼にあたるのか?とオロオロしながらシリウス様を見上げる。

「良いものに出会えた。

 レナンドの店に来て良かった」

 満足そうなシリウス様を見て私は何かを言うのはやめた。




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