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第一章 カナダ・バンフ

第3話 7年ぶりのバンフ2

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 サンシャイン・スキー場がシーズンクローズの後、雨の日が多い。天気が良ければレイクルイーズにサイクリングの予定だったが、ここ数日の膝の痛みもあり断念して図書館に行ってみる事にした。
 図書館のすぐ近くにギャラリーがある。先にそこに入ってみた。古き良き時代のカナディアンロッキーやバンフ・アベニューの白黒写真が多く展示されている。1887年~1949年のバンフ・アベニューのが特に興味深かった。

 眼の保養の後は図書館に入る。7年前にも小学生コーナーで童話を何冊か読んでいた。今回、日本でも子供の頃からよく絵本等で読んでいた『赤ずきん』の英文を読んでみようと思う。日本版ではいろいろな終わり方があり、必ずしもハッピー・エンドにはなっていない。英文ではどうか?
 書架で見つけた3種の童話を読んでみると、全て内容が違っていた。

 最初のは、赤ずきんは狼に食べられたが、通りかかったハンターにより数われた。
 2つ目は赤ずきんは狼に食べられたまま。
 3つ目は赤ずきんは狼に食べられそうになったが、通りかかったハンターに救われた。

 これらは日本で自分が読んでいたのと同じであった。

 図書館からの帰りに7年ぶりにマーチン、ゆう子夫妻に遇った。マーチンは7年前からスイス出身のカナダ人になっている。相変わらず元気で明るい。ゆう子さんより2歳年下であり彼女には勿体ない…かな? いやいや、ゆう子さんも素敵な女性だ。

 さて夕食後、恒例のFenland散策に出かけてみたが、この日はかなり収穫があった。
 先ずは、ビーバーを撮影しようとカメラ持参で出発。1匹目には逃げられてしまったが、2匹目は遊泳中のをしっかり撮影できた。これは狙い通り成功。予想外の収穫はこの2つである。

 1つ目。
 ビーバーの撮影前にエルクに遭遇したが、町中でも毎日のように見かけているので特別な思いはなかったのであるが、それでも森の中で遭遇すると野生らしくてちょっと良い感じだ。
 ところがこのエルク、散策コースのすぐ横(1~2m)にいたのであるが、自分が通り過ぎたらすぐ5mぐらい後ろをついて来る。あれっ? 私に気があるのかな? 動物には野生も含めて好かれる方ではあるけど…⁉
 こちらが振り返れば、止まる。歩き出すとまたついて来る。これを7~8回繰り返した。猫や犬なら、眼つきである程度
は好意的か敵意ありか判断できるのであるが、野生ともなると判らない。そのエルクがいきなり突進してきた。

「うぁっ!」
 このままだと後ろから背中か頭に頭突きを食らわされる。
 思わず振り向いた。エルクの頭から50~60cm  。

(左に倒れ込むか!)
と思った瞬間、相手の方からスピードを落とす事なく左に避けて通り過ぎた。
 その直後の事は記憶がない。我に返ったら、エルクの姿はどこにもなかった。あれは夢か⁉ それとも幻⁉ いや現実だ、間違いない。
 エルクに驚かされた原因で思い当たる事が一つあった。それはリュックの色である。外出時、いつも背負ってる細い紐付きの安いやつ。これの色が赤茶色である。野生動物は赤い色に興奮し易いと耳にしたことがあるが、これは真実のようだ。この色に興奮したのであろう⁉

 2つ目。
 帰り道、頭上から聞き覚えの無い音が聞こえてきた。非常に小気味よい響きの良い音だ。これはもしや、絵本や写真でしか見た事のないアレでは?
 期待を込めて樹々の上部を探してみる。見つけた。小鳥にしては少し大きめの鳥が葉っぱの無い木のてっぺん近くで幹を大きな嘴ですごい勢いで突っついているではないか! やはりそうだ。啄木鳥だ。

 その樹の周囲には樹木は無く、一本だけで枯れかかっているようだ。お陰で見つけ易かった。じっくり見せて貰った。
 いや、聴かせてもらったと言うべきか。時々音色が変わるのは幹の太さによるのであろうか? 
 いや、中の空洞の大きさによるのであろう。
 
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