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第四章 イタリア・ローマ

第32話 ローマの休日3(帰国航空券盗難)

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 ピンチです。ヨーロッパを訪れて最大のピンチを迎えた。こともあろうに帰国の航空券を盗まれてしまった。今朝何気なくバッグの中を調べてみて分かった。
 恐らく昨日か一昨日であろう。同室の宿泊者か他の部屋の者か、いずれにしても同じゲストハウスの宿泊者の誰かに違いない。不運な事に今日は日曜日でいずこもクローズである。警察よりもパキスタン航空に行きたいが明日まで待つしかない。

 気を取り直して、映画”ローマの休日”でも馴染みになった”真実の口”のある教会に行ってみる。観光客が6~7人記念写真を撮っている。みんなが去ったあと、真実の口にそっと手を入れてみた。嘘つきが手を入れると噛みつかれるそうだ…。果たして…⁉ 
 大丈夫だった。噛みつかれはしなかった。嘘を吐くのは嫌いではある。しかしながら、害にならないタイプのは時として吐く事もあるにはある。
 真実の口はその辺をどのように判断するのであろうか? と少しだけ気になっていたが、どうやら悪意のないものには寛大のようだ。良かった。

 その後、カラカラ浴場跡を訪れてみたが入口が見つからない。探していて2人
連れの日本人女性に会ったので一緒に探したが見つからず、どうやら日曜日はクローズのようだ。
 2人とは近くのレストランで昼食を共にした。どちらも今春卒業の女子大生で、1人は昨年も1人でヨーロッパを旅したそうである。
 2人と別れて帰る途中、思い切り車に泥水を跳ねかけられた。30mほど先で停車したのでバックか降車して謝罪に来るのかと思ってたらそのまま行ってしまった。何の為の停車なんだろう? 助手席と意見が食い違ったのかな?
 
 ゲストハウスに帰った後、18歳の長女に盗難の旨話したら、ポリスが来るのか気にしていたので、来ないだろうと言っておいた。その夜、同室の絵描きさんが盗難に遭った航空券の事で話しかけてきた。
 『もし自分が盗ったのなら、すぐに捕まる』といった事を話しながら、自分の首根っこを掴むジェスチャーをしてみせる。自分が疑われていると思っているのかな? 却って疑いたくなるんだけど…。長女によると、常連客で貧乏な絵描きだそうだ。明るく話好きである。疑ってないよ。ちょっとしか。

 翌日。昨日同様、空模様が心を表したようだ。昨日は雨、今日は晴れ。航空券は問題ないようだった。たぶん。
 朝一番でパキスタン航空を訪ねようとしたがすぐ隣が日本航空だったので、先ずは得意の(?)日本語で説明を受けようとそちらへ行ってみた。エントランスで会った日本人スタッフに訳を話して対処方法はあるのか訊いてみた。
 再発行は可能だから心配無用との事であった。手続き方法はまだ解らなかったが、取り敢えずホッとした。
 そのスタッフの方の話では、再発行の手続きは簡単にできる。ただ、新航空券で帰国した後もし盗難に遭った航空券が使用された場合は、正規の航空運賃を自分が支払わねばならないとの事。
 自分は往復22万5千円で購入したが、正規の額だと70万円だった。帰国便の分は35万円。これはこれで拙いのでは…と気になったが、外人が日本人名義の航空券を使う事は非常に難しいのでまず大丈夫ですと言われ、ひとまず安心した次第。

 胸を撫でおろしながら、改めて隣のパキスタン航空を訪ねてみる。ベテランの男性スタッフの窓口で即、
『Oh, I have a big Problem. I lost my Air ticket.』
と言ったところ、
『No Problem.』
と涼しい顔で返答され、大安心。

 スタッフは名前とか生年月日とかで検索した後、納得したように頷いてから、翌朝改めて来るように言われた。
 今すぐ手続きできないのかな? と疑問を感じたが明日再発行して貰えるのならそれで十分だと思い、余計な質問は控える事にした。

 天気も晴れだが心も晴ればれ、のんびりとカラカラ浴場跡、コロセウム、エマニエル二世記念館、トレビの泉を経由してスペイン広場に向かう途中、何度も姿を見かけた日本人女性に気楽に声をかけてみた。1か月の学生だけのツァーで周遊しているとの事だった。1か月あるのなら、良い旅ができるであろう。学生の特権を生かしているようだ。

 夕食は気に入ってるゲストハウス近くにある例のオステリアで食べたが、何とフロアの客11人全員が日本人であった。実に驚きである。ローマは日本人には一番人気のある観光地かも。
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