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第三章 アルプス・スキー(オーストリア)

第27話 ツェルマットスキー場2(マッターホルン)

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 天気が良くなかったので早めに切り上げて山岳博物館を訪れてみた。大勢の入館者で賑わっていたが、意外と思っていたよりは規模が小さく外見は信濃大町にある山岳博物館より劣って見える。マッターホルン登頂の歴史やら初登頂の時の事故時の切れたロープ等も展示されており興味深かった。

 同じペンションに日本人が宿泊していた。池田さんと言い外国人の奥様、それにお子様同伴である。2年前から仕事でチューリヒに滞在していてこの4月に帰国するそうだ。
 その池田さんに部屋に招待された。ヨーロッパ人の国民性などいろんな話が聞けて楽しかった。物腰の柔らかい感じの良い人だ。

 翌日出発時、池田夫妻と会ったので一緒に滑る事にした。強風でイタリア側に登るゴンドラ、リフトとも運休している。マッターホルンに一番近いシュバルツゼーで滑ったが、3人とも中級レベルで良い具合だ。
 日本人スキーヤーがずいぶん目立ったが団体客であろう。純粋にスキーをやるなら断然サンアントンを推薦するが、マッターホルンの雄姿を見ながら滑る事に価値を見出しているのであろう。その価値は十分あると思う。

 翌日再び池田さんに招かれた。この日は、私はゴルナーグラートで滑ったが、池田ご夫妻はブラウヘルトで滑ったそうだ。雪質はよく締っていて気持ちよく滑れた。池田ご夫妻は、翌日半日滑ってからと言っていたが、結局朝一番でマイカーで帰って行った。

 1か月余りの出張でヨーロッパ数か国を回っているという日本人男子3人に会った。出張先で本場アルプススキーが楽しめるなんて何とも羨ましいと思ったが、よく考えてみると他人を羨ましがる必要はないなと改めて思う。

 久しぶりに快晴に恵まれた。マッターホルンが全身を見せてくれた。魅せてくれたと言うべきか! 何という美しい姿。
 こういう快晴の日はできる限り高い位置に立つべきであろう。クライネマッターホルン頂上までゴンドラで登ってみた。ゴンドラ駅最高地点では、標高は富士山より高く3800m を超えている。自分の標高最高到着点は北岳の3193m だが、今回特に息苦しくはなかった。
 ここからのアルプスの眺めは実に美しい。すぐ間近に見る氷河の凄まじさ。ただ…、この位置からだとマッターホルンは平凡な山容にしか見えない。そのマッターホルンのすぐ右の後方に同じ山容の山が見える。こちらこそクライネマッターホルンの名に相応しいのではないかと私には思われる。一体何と言う名の山だろう。

 クライネマッターホルンからカチンカチンのアイスバーンを少しトラバースしたら、イタリア側のチェルヴィニアスキー場が見えた。延々と緩やかで細いロングコースが続いている。
 マッターホルンとはドイツ語で『草原の角』という意味らしいが、イタリア語ではチェルヴィーノと言うようだ。ツェルマットと逆にイタリア側の街はチェルヴィニアと言う。
 一度、イタリア側に下りてみよう。オーバーグルグルでテーブルメイトとジョークを言い合った事が思い出される。
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