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第三章 アルプス・スキー(オーストリア)

第26話 ツェルマットスキー場1(マッターホルン)

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 オーストリアに別れを告げ、スイスにやってきました。アルプス最後のスキーはツェルマットスキー場。ヨーロッパを代表する最高の景観をほこるスキー場である。あのマッターホルンを観ながらスキーができる。何と贅沢な事か!

 長時間、車中でワクワクしながらツェルマットに向かう。スイスに入ってもチューリヒからベルンあたりまでは平凡な景色が続いたが、ブリークが近づくにつれアルプスの白銀の峰々が姿を現してきた。
 ツェルマットに到着する少し前、車窓から初めてマッターホルンの雄姿を観た時は年甲斐もなくドキリとした。日本で何度も写真で眼にしていた姿ではあるが。
 第一印象としては、日本で見慣れていた姿より2年前にカナダ・バンフで観ていたカナディアンマッターホルン(アシナボイン山)に似ている気がした。
 日本で観る写真は最高の角度のものでとんがった姿の印象が強いが、ツェルマットの町からだと、もう少し丸みがあり女性的な印象を受ける。

 翌朝、観光案内所に行く前にスイス銀行を見つけたので外貨購入証明書持参で入ってみた。
 オーバーグルグルのダンスホールで盗難にあった小銭入れの中身のうちトラベラーズチェックの分は再発行してもらえるはずである。
 ところが、銀行側の見解は違っていた。ポリスの証明書がなければ再発行できないとの事だった。
 日本で聞いていた話とは違うではないか。それとも私が聴き漏らしていたのか⁉ 知っていれば、証明書ぐらい貰えたものを。
 当然、他の銀行でも同じ事を言われ、ツェルマットのポリスを訪ねても相手にしては貰えなかった。結局、この件は諦めざるを得なかった。金額的には大した事はなかったが、不愉快な事には変りはない。

(今なら躊躇なく、オーバーグルグルのポリスに連絡をとってもらい、盗難証明書をツェルマットのポリスまたは自分の宿泊先に送ってもらえないか交渉するのであるが)

 そんなわけで、朝から少々気分の良くない思いをしたけれど、昨日の夕方に観たマッターホルンも素晴らしかったが今朝好天気の中で再会したその姿は実に美しい。ツェルマットの町から観ても、登山電車の車窓から観ても、ゲレンデのどこから観ても見事な美しさである。
 何と言っても、ゲレンデ内にあるレストランのテラスでアルプスの陽光を浴びつつ、スイスチーズサンドウィッチとホットコーヒーで美しいマッターホルンと心静かに過ごすひと時こそ最高の贅沢と言えるであろう。

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