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第三章 アルプス・スキー(オーストリア)
第20話 オーバーグルグルスキー場5(大晦日)
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翌日、オランダに帰ったヘンドリックの後釜にニューゲストあり。新しいテーブルメートは30歳ぐらいの女性である。
初対面の朝食時は少し堅かった。英語は少し話せるというがあまり話し好きではないようだ。夕食時になって少し話したが声が小さく聞き取りにくい。ドイツから12日間の予定で、オーバーグルグルは昨年に続き2度目との事であった。
前のテーブルメートのヘンドリックの事を話してるうち、最後の夜ダンスバーに行ってジャケットを失くした事を話したら、心配げな表情で、訊いてきた。
”Stolen?"
”Maybe."
この件は結局、オーバーグルグルを去る日まで、ポリスからの連絡はなかった。
年末まで好天が続いた。山は天気に恵まれると気持ちが良い。スキー操作も楽で上手くなったように錯覚してしまう。カナダから帰国後北海道のニセコチセヌプリスキー場のニセコの仙人から教わった、ターンする時の山腰姿勢を意識して練習してみる。時々は上手くいくがコンスタントには難しい。
大晦日前夜、何故か夜中の3時前に目が覚めて眠れなかった。この日の夕食にはラム肉が出たが柔らかくとても美味しかった。
さて、海外で迎える初めての大晦日である。
昨日はバスが定員オーバーで行けなかったホッホグルグルに行ってみた。思った以上に混んでいたが好天の中、頂上に登ってみた。最上にあるリフトを降りて10mぐらいで頂上である。
360度の大パノラマであった。イタリア・アルプス(だと思う)が眼前に見事に広がっている。何と素晴らしい景観であろうか!
ホッホグルグルのコースは広くて長い。晴天続きで雪質は固く滑りづらかったが、景色には堪能した。
さて、大晦日の夜。ディナーの後、宿泊客全員でダンスや会話を楽しんだ。正確に言えば全員の中に自分は入っていない。学生時代からずっと変わらずダンスが苦手である。専ら会話を楽しむ事にした。
宿泊客の会話はだいたいがドイツ語であるが、私には英語で話してくれる。ドイツ・フランクフルトから男女2人ずつの4人グループの20代後半の男女が来ており 、テーブルメートのドイツ人女性と6人で会話が弾んだ。
あまり日本では味わえないいろんな事があった。
日本人特有の箸の使い方を披露してやろうと思い、お菓子のポッキー2本を箸代わりにしてお菓子のボーロをつまんで食べてみせたらこれが大受け。何人もが真似てチャレンジを始めた。やがて皿の中は2つに折れたポッキーだらけになった。これを見て私が笑ったら、向いにいた男性も一緒に笑い始めた。
4人の中の1人に底抜けに明るい女性がいた。こんな事があった。
賑やかで明るい雰囲気で、1人の中年のおっさんがグループの中に割り込んできた。そのおっさんが彼女に冗談半分だと思うが、キスをしようとした。彼女は苦笑いしながら顔を横に向けて逃げた。おっさんはすぐに笑いながらグループを離れた。
みんな何事も無かったかのように知らん顔をしている。彼氏らしい青年さえも。
その明るい女性とテーブルメートの女性と3人でグラスを軽く傾けたあと、あまりのアルコールの強さに私が思わず、
"Too strong!"
と叫んだら、すかさずテーブルメートの女性が
"Not strong."
と言いつつ、ぐいっと一飲みにした。
私のかなり苦しい表情を見て、明るい女性は楽しそうに笑っていた。
その直後の事。2人の女性が示し合わせたかの如く何ごとか口にした後、両サイドからいきなり完璧なタイミングで両頬にキスをされた。どうもドイツ語で明るい女性が合図し、テーブルメートの女性が呼応したようだった。
びっくりするやら、こっぱずかしいやら、まあ嬉しいやら、いやはや何とも…。Sandwich Kiss は初めてである。
この大晦日のパーティー会場には終始リズミカルな曲がかかっていた。曲の中に何度も『スーパードゥルッパー』と聞こえる歌詞があったが、この曲のタイトルであろうか⁉
私が興味を感じていそうだと気づいた明るい女性が、その後私と顔を合わせるたびに『スーパードゥルッパー』と挨拶代わりに言っていた。
(少し前にスマホで調べてみると、ABBAの『Super Trouper』という曲だと分かりました。『大きな照明』という意味のようです。40数年ぶりに聴きました。懐かしい)
カレンダーが変わり、新年が明けました。
その瞬間、明るい女性は隣にいる彼氏としっかりとキスを交わしました。みんな一斉に新年の言葉を発しました。
"Gutes Neues Jahr."
英語の "Good New Year." ですが、”Frohes Neues Jahr.” (英語の "Happy New Year.")とは言ってませんでした。
本格的にダンスが始まりました。ジェンカ(レッツ キッス)の曲に合わせて、みんなが一列になって。
我々のグループは観衆になりましたが、中年の多い他のグループは殆どが参加していたようです。それにしてもおっさんたちの積極的な事。
大満足のうち、a.m. 1:30に解散しました。
初対面の朝食時は少し堅かった。英語は少し話せるというがあまり話し好きではないようだ。夕食時になって少し話したが声が小さく聞き取りにくい。ドイツから12日間の予定で、オーバーグルグルは昨年に続き2度目との事であった。
前のテーブルメートのヘンドリックの事を話してるうち、最後の夜ダンスバーに行ってジャケットを失くした事を話したら、心配げな表情で、訊いてきた。
”Stolen?"
”Maybe."
この件は結局、オーバーグルグルを去る日まで、ポリスからの連絡はなかった。
年末まで好天が続いた。山は天気に恵まれると気持ちが良い。スキー操作も楽で上手くなったように錯覚してしまう。カナダから帰国後北海道のニセコチセヌプリスキー場のニセコの仙人から教わった、ターンする時の山腰姿勢を意識して練習してみる。時々は上手くいくがコンスタントには難しい。
大晦日前夜、何故か夜中の3時前に目が覚めて眠れなかった。この日の夕食にはラム肉が出たが柔らかくとても美味しかった。
さて、海外で迎える初めての大晦日である。
昨日はバスが定員オーバーで行けなかったホッホグルグルに行ってみた。思った以上に混んでいたが好天の中、頂上に登ってみた。最上にあるリフトを降りて10mぐらいで頂上である。
360度の大パノラマであった。イタリア・アルプス(だと思う)が眼前に見事に広がっている。何と素晴らしい景観であろうか!
ホッホグルグルのコースは広くて長い。晴天続きで雪質は固く滑りづらかったが、景色には堪能した。
さて、大晦日の夜。ディナーの後、宿泊客全員でダンスや会話を楽しんだ。正確に言えば全員の中に自分は入っていない。学生時代からずっと変わらずダンスが苦手である。専ら会話を楽しむ事にした。
宿泊客の会話はだいたいがドイツ語であるが、私には英語で話してくれる。ドイツ・フランクフルトから男女2人ずつの4人グループの20代後半の男女が来ており 、テーブルメートのドイツ人女性と6人で会話が弾んだ。
あまり日本では味わえないいろんな事があった。
日本人特有の箸の使い方を披露してやろうと思い、お菓子のポッキー2本を箸代わりにしてお菓子のボーロをつまんで食べてみせたらこれが大受け。何人もが真似てチャレンジを始めた。やがて皿の中は2つに折れたポッキーだらけになった。これを見て私が笑ったら、向いにいた男性も一緒に笑い始めた。
4人の中の1人に底抜けに明るい女性がいた。こんな事があった。
賑やかで明るい雰囲気で、1人の中年のおっさんがグループの中に割り込んできた。そのおっさんが彼女に冗談半分だと思うが、キスをしようとした。彼女は苦笑いしながら顔を横に向けて逃げた。おっさんはすぐに笑いながらグループを離れた。
みんな何事も無かったかのように知らん顔をしている。彼氏らしい青年さえも。
その明るい女性とテーブルメートの女性と3人でグラスを軽く傾けたあと、あまりのアルコールの強さに私が思わず、
"Too strong!"
と叫んだら、すかさずテーブルメートの女性が
"Not strong."
と言いつつ、ぐいっと一飲みにした。
私のかなり苦しい表情を見て、明るい女性は楽しそうに笑っていた。
その直後の事。2人の女性が示し合わせたかの如く何ごとか口にした後、両サイドからいきなり完璧なタイミングで両頬にキスをされた。どうもドイツ語で明るい女性が合図し、テーブルメートの女性が呼応したようだった。
びっくりするやら、こっぱずかしいやら、まあ嬉しいやら、いやはや何とも…。Sandwich Kiss は初めてである。
この大晦日のパーティー会場には終始リズミカルな曲がかかっていた。曲の中に何度も『スーパードゥルッパー』と聞こえる歌詞があったが、この曲のタイトルであろうか⁉
私が興味を感じていそうだと気づいた明るい女性が、その後私と顔を合わせるたびに『スーパードゥルッパー』と挨拶代わりに言っていた。
(少し前にスマホで調べてみると、ABBAの『Super Trouper』という曲だと分かりました。『大きな照明』という意味のようです。40数年ぶりに聴きました。懐かしい)
カレンダーが変わり、新年が明けました。
その瞬間、明るい女性は隣にいる彼氏としっかりとキスを交わしました。みんな一斉に新年の言葉を発しました。
"Gutes Neues Jahr."
英語の "Good New Year." ですが、”Frohes Neues Jahr.” (英語の "Happy New Year.")とは言ってませんでした。
本格的にダンスが始まりました。ジェンカ(レッツ キッス)の曲に合わせて、みんなが一列になって。
我々のグループは観衆になりましたが、中年の多い他のグループは殆どが参加していたようです。それにしてもおっさんたちの積極的な事。
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