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第五章 裁判終わって

第41話 公判トーク3

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 暫しの沈黙の後、神野が発言する。

神野「恐らく、……………恐らく警察署で散々とっちめられて傷つくのを期待したのではないかなあ」
仙人「裁判までは考えてなくて?」
神野「ウン、まあはっきりとは言えないが…」

村井「根拠は?」
神野「大友が警察署に行ったのが、俺が退会の手続きをした1週間後なんよ。退会するのなら、本店長にとっても大友にとっても裁判は必要ないと思う。ただ野々宮だけは俺の予定通りにはさせたくなかった。それで退会した翌月以後、警察の取り調べを受けるように細工したんだと思う」

仙人「裁判は?」
神野「裁判までは考えてなく、退会した後は再入会させない事にしたので顔を合わせる事もなく、後は警察に絞られればよいと考えたんじゃないかな」

仙人「じゃあ、裁判は予定外なん?」
神野「俺はそう思う。貧乳、短足を指摘されたぐらいでそこ迄やるとは思えない」
村井「どうだろうなあ。女は自分の懐計算はきっちりするが、他人の懐計算はしないからな」

仙人「確かに。裁判になったらなったで良いという事か?」
神野「判断を警察に任せたか。待てよ。なあ村井さん、告訴した時点で原告は裁判を期待しているんだよね?」
村井「ウン、正式に告訴したらそうだろうね。警察署に出向いた時点では、告訴ではなく被害届だから」

仙人「じゃあ、ヒロさんが警察で取り調べを受けた後?」
村井「ウン、俺はそう思うな。取り調べの後、警察の方から大友に正式に告訴するか問い合わせがあったのでは」
神野「…………」

仙人「それで、大友がO.K.した?」
村井「ウン、たぶん」
神野「両親や野々宮に相談したんだろう」
村井「そうだな。恐らくそんな流れだろうよ。野々宮が思い切り推したんだろうよ」

神野「警察が『裁判になったら勝てる』って言ったら、欲が出るだろうね」
村井「警察は国選弁護人を予想していたと思うわ」
神野「実際、村井さんがいなかったらそうしたよ」

仙人「もし国選弁護人だったら、勝つの難しかった?」
神野「絶対負けてた」
村井「絶対勝てない。彼らは機械的に動くだけ。先ず、現場検証はしない」

仙人「じゃあ、勝てないね。まあしかしヒロさんには悪いけど、現場検証も裁判も面白かったわ」
村井「現場検証を経験してたから、よけい面白かったろう?」
仙人「ウン、面白かった」

 神野、苦笑いしながら、
神野「……、まあそれは何より」

仙人「ところで途中検察側が席を外したり、一週間延長があったけど、あんなのよく有るん?」
村井「俺は初めて。凶悪事件は分からないが、これぐらいのでは珍しいんじゃないかな」
神野「俺も予想外だった」

仙人「そう言えばヒロさん、『鉄は熱いうちに打て』とか言ってなかった?」
村井「ハハハ………、あれは面白かった。ハハハ…………」
神野「笑い過ぎ!」

仙人「余裕が有ったんやね」
神野「聴いてるだけだと疲れるからね。たまには参加しないと」

村井「ところで二人に一つ訊きたい」
神野「ン、何?」
村井「あれは、どっちのアイデア?」
神野「あれって?」

 村井、ニヤニヤしながら、
村井「傍聴席での録音」
神野「ぎゃっ……、知ってたん?」

村井「当り前やないの。いくらヒロさんがスーパーメモリーマシンでも、あれだけ正確には憶えられんだろ。それに開廷してすぐ、仙人が胸にさり気なく手を入れたりしてた。まあ見え見えだったけど」

仙人「えっ、気が付いてたん?」
村井「勿論。これはヒロさんのアイデアか?」
神野「その通りでございます。だから仙人を逮捕しないように」

村井「まあ、山本さん公認だから。でなければ、二人とも死刑よ」
神野「危なかったあ。仙人、命拾いしたよ」
仙人「死刑を免れた命、大事にしよう」
神野「そうしよう」

 3人の会話はまだ続く。
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