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world:08 あの娘どこの娘チートの娘

第128話・ヤツに向かって撃て!

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 なんかものっすごい久々にライズ化する気がする。このところアンジーや初代はつしろ新生ねおの手伝いばかりしてたからな。

「無駄にテンション上がるな」
〔落ち着いて下さい。あなたは普段から無駄すぎるのですから〕
「んもう……。ひと言多いって」

 小型恐竜のこのは、昔観たアニメ映画に出て来た首長竜そのものだった。女神さん曰く『この種はドリコリンコプスだと思われます』と言っていた。まったく聞いた事すらない恐竜さんだけどとりあえず……
「はいはい、口開けて~」

 ――ミルクチョコin!
 ――煙deポンッ!!


「なんか、人間なったったー!」


 変身した自分の手足を見ながら、楽しそうに体を動かしている“リコりん”。降り注ぐ太陽と青い海、打ち寄せる波にはしゃぐ姿がめちゃ映える。ジュラたまの色はマリンブルーだから、ウチよりもアンジーの方が相性良い感じだ。……まあ、やらんけど。

「普通に海に遊びに来ているJKにしか見えないな。なんかほのぼのするわ~」

 この娘は“ほわほわ”っとした印象で、ルカよりも少し幼い感じだ。短く切りそろえているゴールドの髪は、海水を浴びてボサボサと飛び跳ねてしまっている。それでも本人は全く気にせず、キラキラした笑顔を振りまいていた。
 健康的な素肌と手が隠れる長さの白ジャケット、そこにローライズデニムを合わせて腰にはホルスター……って、ホルスター!? 

 ……この娘、銃が武器なの? 

「なんか、怖い物持ってるね……」
「あ、これってば水鉄砲ですよぉ~」
「マジ?」
「マジでっすぅ」

 そう言いながらリコりんは右脚のホルスターから銃を抜くと同時に、躊躇せずに引き金を引いた。それはまるで……そう、西部劇のガンマンが銃を抜くと同時に弾を撃つファスト・ドロウってやつだ。

いてっ! って、なにしやがるデスかー!」
「意外と痛いのですよ、これ」
「やめるデスよぉ~」

 確かに水鉄砲だけど、その勢いはとんでもなくすさまじい。

「高圧洗浄機よりすげぇ……」

 スーの痛がる様子からもその威力のほどがうかがえる。見た目は普通の拳銃なのに、水が無限に放出されている様だ。

「暴徒鎮圧とかに威力発揮しそうだね。それに、殺傷能力がないのがウチ好みだな。なんかちょっと安心」

 みんな武器は持っているとは言っても、プチの手榴弾やリコりんの拳銃なんて異質だからな。殺傷能力がないに越したことはない。

「ふっふっふっ、亜紀チャンそれわ甘いというものですよぉ~」

 人差し指を立てて“チッチッチッ”と左右に振ると、リコりんは腰の後ろから理科の授業で使う試験管の様なものを取り出した。中には緑や紫の色のついた液体が入っている。

「まずわぁ~。紫!」
「お、なんかおもしろそうじゃん」

 これはカートリッジ式の銃ってことなのか。紫の試験管を銃に装填し、速射! 直後クルクルと回しながら、ホルスターにストッと収めた。

「なんかかっこええな~」
「えへへへ~」

 そして笑顔も眩しい。うん、いい娘だな。あとでアンジーに自慢してやろう。

 リコりんは構えることもなく無造作に撃っているようにも見えたけど、その弾道は正確に“スーを捉えていた”。
 
 ――煙を吐きながら飛んでいく紫の

「このスー様を狙うとは、お目が高いでいやがりますな!」

 鎌をバットの様に構え、打ち返そうとするスー。左足を上げ右足だけでバランスをとっていた。

「あれは伝説の一本足打法じゃないか!」

 そのスイングは鋭く、玉を確実にとらえてジャストミート! しかし……当たった瞬間玉は破裂し、モワモワっとした紫の煙がスーを包みこんでいく。

「紫は毒の玉なんですよぉ~」
「こらこら、なんてやばいものを飛ばすのよ~」
「うう、なんか体力がバキバキ減っていきやがりますデス……」

 キラキラの笑顔で毒を撃っていたのかよ……。ってもしかしてこれ、スーへの仕返しか? それはそれとしてスリップダメージはヤバイ。目に見えてヘロヘロしていくじゃないか。

「セイレーン、ヒールお願い」
「次は黄色を食らわせますぅ~!」

 続けざまに玉を撃ち込むリコりん。

「リコりん、ちょっと加減しなさいって……」
「あ、そこにいると当たりますよぉ~」
「……え?」

 黄色の玉は誰かを狙ったのではなく、砂浜に撃ち込まれた。これまた着弾と同時に破裂し、ヒールに近づいたセイレーンはおろか、ウチやルカ達まで黄色の範囲に巻き込まれてしまった。

「あれ、ピリピリする様な……」

 皆、膝をついたり寝転んだりと動けなくなっている。

「黄色は麻痺玉なんですよぉ~」
「だか……らなんで、そ・ういう危……険なものを……」 
「ふっふっふっ。あれは痛かったですねぇ。受けた恩は返さないとですねぇ~」

 いやそれ……恩じゃなくて恨みと言うものでは?

「スーちゃん…がヤバ、いって。毒って麻痺って……口からエク、トプラズ…ム出て、んじゃん」
「では、これが最後です……とどめの赤ですぅ!」

 そう言うとリコりんは、三つ目の“赤”のカートリッジを装填すると頭上に向けて撃ち出した。

 え、ちょ、マジか。なにこの娘、ウチ達を全滅させようっての? ウチの恐竜人ライズじゃないの? そこんとこどうなんですか、女神さん? 女神……あかん、声が出ねえ。

「ふふふ……赤って……血の色ですねぇ」
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