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world:05 あの嘘この嘘ヤツの嘘

第63話・色が色々

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 太陽の位置が日々高くなっている。季節で言えば、まさしく初夏なのだろう。
 しかしここ、チーム猫耳恐竜の拠点では、適度な木々と清流の涼気が強い日差しからウチ達を守ってくれ、快適なことこの上ない。

「大自然の脅威と大自然の守り。天然のマッチポンプみたいなもんか?」
〔……違うと思います〕
 環境が良いからって今まではなんとなく拠点にしていたんだけど、そろそろしっかり腰を落ち着けようと思って、ウチはとある計画をぶち上げた。


「ぱんぱかぱ~ん! ツリーハウスを作ることにしました!」


「マスター、急にどうしただすか?(キリッ)」

 あ……キティが滅茶苦茶不思議そうな顔になってる。

「いや、アンジーがウチのプライベートビーチを拠点にしちゃったからさ~。なんかこう、領地の主張? みたいなのをしておこうと思って」

 広めのログハウスも良いのだけれど、なんか、木の上ってのがワクワクするんだよね。隠れ家というよりは秘密基地的なとこがいい。

「ね。プチちゃんそう思うっしょ?」
「い、いきなり意味不明な同意求めないでください~」
「ところで、壊滅的なネーミングセンスのぱんぱかぱんツリーハウスってどんなものですの?」

 タルボ、君はボケ属性だったのか……つか、壊滅的言うな。 
 流石に個室は難しいけど、二~三人で一つのハウスってくらいでいけそう。それぞれのツリーハウスを橋で渡して行き来出来るようにすればいいし。

「あ、中心に広いログハウスみたいなのを作れば集まれていいよね」
〔そんなの、馬鹿でかい物を一つ作れば良いのでは?〕

 ウチは『わかってないな~』という表情で“チッチッチッ”と人差し指を振り、女神さんを“ビシッ”と指差して言い放った。

「秘密基地はロマンなんやで!」
〔はあ……〕

 こらこら、呆れてんじゃないよ。老若男女問わずロマンは大事だぞ。

「それにね、せっかくカバンから色々な食材が出せるんだからさ、食堂みたいなのがあった方が良くない?」
〔それは確かに一理あります、意外と考えているのですね〕
「……だからひと言多いって」
〔定時に集まったり、しっかりと食事管理することで、恐竜人ライズ達に文化的な考え方が浸透するきっかけにもなるでしょう〕
「そ、そうそう、それそれ。それが狙いやで!」

 ……嘘です。そこまで深く考えていませんでした。

 でもそれはつまり、肉食恐竜としての捕食本能を、各々が理性で管理出来るようにするってことに他ならないと思う。
 恐竜らしさが無くなるとも言えるけど、これも人類の進化が早まるだけの話だと考えることにした。

「姐さ~ん、こんな感じでいいっスかー?」
「そうそう、この辺りの木に絡んでいる食虫植物それは全部とっちゃってー」

 プチがまた中に落ちない様に、巨大なウツボカズラみたいなヤツは全部外しておかなきゃだ。最初は畑の肥料にでもしようと思ったんだけど、こいつ、滅茶苦茶くっさい。危険な臭いがプンプンしていて目にしみる。これで腐敗なんてしたらどうなることか……後で海にでも流しとこう。


 砂浜での闘いの後、ウチの思う“ガイアとのコミュニケーションの取り方”を全員に伝えた。一人だけ特別扱いするような形になるから、トラブルが起きるのを覚悟していたんだけど、そんなことはウチの危惧でしかなかった様だ。更にはこういった体を使う作業が、『ガイアには困難』だということを皆理解してくれて、文句を言わないばかりか『ガイアの分まで』って動いてくれている。

 ……なんか皆優しいわ~。ウチ、涙出てくるよ。

「みんな、素敵にジュランドリーすぎるぞ」
〔何ですかそれは? いや、というか、もしかして……〕
「ジュラシックなフレンドリーやで!」
〔やはり。今迄で最悪レベルにセンスがありませんね〕
「……ほっとけ」
  
 ちなみに、ガイアにピンチを救われたティラノは『馬鹿にするような事いって悪かった』と、みんなの目がある前で堂々と謝ってた。やはりこの一本筋の通った性格は尊敬に値する。その後はもう、ウチが引くくらい献身的で、このままいいコンビになってくれたらと期待してしまう。
 ただ、ウチにその後『浮気すんなよ~』と笑いながら言っていた。……なんかもう色々とふっ切れていた笑顔だったな。

 当のガイアと言えばティラノ達のことを『マナが……白色。デス』と、言っていた。ジュラたまの色とマナの色が一致していたから、なにか重要な意味がありそうな気がする。

「ガイアちゃん、ウチは? ウチは何色?」
「無色……透明。デス」

 うむ、余計に訳わからん。ちなみに初代新生の色を聞いてみたら『紫』で、アンジーは『空色』だった。

「腹黒は黒く見えたりしないのかな?」
〔それは、自分は透明だから清廉潔白ですよアピールをしようという腹黒な考えですね〕

 ……あ、読まれてた。
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