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world:02 この娘が味方であの娘が敵で。
第29話・最恐。
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ガイアの鮮やかな手腕を横目に、中央ではティラノと三本スパイク盾の恐竜人が力比べをしていた。
「お前、すげー力だな。イイね、滾るぜ!」
しかし、純粋なパワーではティラノが少し不利な感時に見える。ジリジリと少しずつ押され始め、まったく余裕がなさそうだ。
「女神さん、あの三本角の娘は多分、超有名なトリケラトプスだよね?」
〔草食恐竜でありながら肉食恐竜と対等にわたり合える、数少ない恐竜ですね〕
やはりか。ティラノが恐竜人相手に互角に持ち込まれるなんて滅多にないだろう。つまり、あの娘も相当な技量の持ち主ってことだ。
「ティラちゃん、負けるな~!」
「お? ……そうか、そいつがティラノサウルスの恐竜人か」
初代新生がニヤリとしながらティラノを見ている。……これは、嫌な予感しかしない。
「二人とも、十分警戒して」
「おうよ!」
そしてここは、そう『まさしくここは!』ってやつだ。ウチはポケットからティラノのジュラたまを取り出しティラノに合図を送る。
「ジュラたまブーストするよ!」
「ああ、いつでもいいぜ!」
――しかし、キラキラと輝くその指輪をはめようとしたその時、初代新生がタイミングを計ったように口を開いたんだ。
「八白亜紀。さっきお前、タルボのことを言っていたよな」
初代新生は右手の親指を立て、自分自身の後ろを指さしながら言った。
「今頃、向こうでくたばってるんじゃね?」
「――今、何て!?」
うかつだった。これがあいつの作戦だったんだ。指さした先に気をとられた瞬間、初代新生の後に待機していたもう一人の恐竜人が、ウチに向かって突進してきた。
――あまりに咄嗟のことで避けられなかった。真正面から猛烈な体当たりを受けたウチは、文字通り吹っ飛ばされてしまう。しかし、それでも両腕でガード出来たからそれほどダメージはなかったんだけど、ゴロゴロと擦り傷だらけになりながら転がされてしまったんだ。
「痛ってぇ……」
巨大生物のパワーを凝縮した恐竜人の激強タックルだ。それでもこの程度で済んでいるのは、大地の恵みである草花のクッションと、猫人の柔軟性のおかげなのだろう。……さすがに体中擦り傷と打ち身だらけだけど。
「痛いの痛いの、飛んでいくニャ~!」
ベルノが可愛い手ですぐに癒してくれる。撫でられた場所から痛みがス~っと消える。取っては投げ取っては投げと、そのまま無造作に“痛い”を投げ捨てるベルノ。そのうちのひとつがが枯れ木の枝にぶつかり、派手な『バキバキバキッ』という音と共に折れてその場に落ちた。
「何だ、今のは? それにあれは……回復能力か?」
――しまった。ベルノに目をつけられたか。ニヤっとしながら初代新生がベルノを見ている。そして、たった今ウチに体当たりをかました恐竜人がベルノに向かって突進しようと構えた。
「ベルノはやらん!」
痛いとか怖いとか言っている場合でない。恐竜人とベルノの間に割って入り、相手の出方をうかがう。とりあえず足を止めるだけでもしなきゃ……。
「ネネ~」
ベルノ守ってやるからな。姉ちゃんにまかせとき!
「ネネ~~~!」
あれ、頭の上からベルノの声が……って⁉
「ベルノ!」
「よ~し、よくやった、ランフォ」
なんてこった……まだ仲間がいたのか。これは完全にやられた。目の前の相手に注意を向けているスキに、ランフォと呼ばれた翼竜の恐竜人がベルノを掴み飛び上がっていた。
“チーム新生には戦略性がない”なんて勝手に思い込んでいたウチのミスだ。彼女自身に戦略性がなくても、もしかしたら送り込んだ神さんの入れ知恵の可能性もあるってことを考えてなかった。
「ティラちゃん、頼む! 石投げてあいつ落としてくれ。ベルノは絶対に受け止めるから!」
…………あれ?
「ティラちゃん?」
「亜紀っち。マズイぜ……」
そう言って、初代新生を指差すティラノ。
「よく見ろよ。……さて、これはなんでしょうか~?」
そこには不敵な笑いを浮かべる初代新生が、人差し指と親指で何かをつまんでプラプラとさせていた。揺れるたびにキラキラと光る……あれはまさか?
「え、それ……ティラちゃんのジュラたまじゃんか。なんでお前が!?」
「今お前が転がりながら落としたんじゃねぇか。ジュラたまって言うのかこれ。ラッキーだぜ。どうやって奪おうかと思っていたくらいだからな」
「返せよ、それ」
「やだね。ジュラシック最恐、ティラノサウルスの指輪だ。返す訳ねぇだろ」
「おい、何をすんだよ」
言い終わると同時に初代新生は、ティラノのジュラたまを左の薬指にはめた。
――その瞬間、ウチとティラノの意思疎通が途切れた感覚があった。
「え、なにこれ……」
「知らないのか? このジュラたまってのを手に入れれば、恐竜人を奪えるんだぜ?」
「お前、すげー力だな。イイね、滾るぜ!」
しかし、純粋なパワーではティラノが少し不利な感時に見える。ジリジリと少しずつ押され始め、まったく余裕がなさそうだ。
「女神さん、あの三本角の娘は多分、超有名なトリケラトプスだよね?」
〔草食恐竜でありながら肉食恐竜と対等にわたり合える、数少ない恐竜ですね〕
やはりか。ティラノが恐竜人相手に互角に持ち込まれるなんて滅多にないだろう。つまり、あの娘も相当な技量の持ち主ってことだ。
「ティラちゃん、負けるな~!」
「お? ……そうか、そいつがティラノサウルスの恐竜人か」
初代新生がニヤリとしながらティラノを見ている。……これは、嫌な予感しかしない。
「二人とも、十分警戒して」
「おうよ!」
そしてここは、そう『まさしくここは!』ってやつだ。ウチはポケットからティラノのジュラたまを取り出しティラノに合図を送る。
「ジュラたまブーストするよ!」
「ああ、いつでもいいぜ!」
――しかし、キラキラと輝くその指輪をはめようとしたその時、初代新生がタイミングを計ったように口を開いたんだ。
「八白亜紀。さっきお前、タルボのことを言っていたよな」
初代新生は右手の親指を立て、自分自身の後ろを指さしながら言った。
「今頃、向こうでくたばってるんじゃね?」
「――今、何て!?」
うかつだった。これがあいつの作戦だったんだ。指さした先に気をとられた瞬間、初代新生の後に待機していたもう一人の恐竜人が、ウチに向かって突進してきた。
――あまりに咄嗟のことで避けられなかった。真正面から猛烈な体当たりを受けたウチは、文字通り吹っ飛ばされてしまう。しかし、それでも両腕でガード出来たからそれほどダメージはなかったんだけど、ゴロゴロと擦り傷だらけになりながら転がされてしまったんだ。
「痛ってぇ……」
巨大生物のパワーを凝縮した恐竜人の激強タックルだ。それでもこの程度で済んでいるのは、大地の恵みである草花のクッションと、猫人の柔軟性のおかげなのだろう。……さすがに体中擦り傷と打ち身だらけだけど。
「痛いの痛いの、飛んでいくニャ~!」
ベルノが可愛い手ですぐに癒してくれる。撫でられた場所から痛みがス~っと消える。取っては投げ取っては投げと、そのまま無造作に“痛い”を投げ捨てるベルノ。そのうちのひとつがが枯れ木の枝にぶつかり、派手な『バキバキバキッ』という音と共に折れてその場に落ちた。
「何だ、今のは? それにあれは……回復能力か?」
――しまった。ベルノに目をつけられたか。ニヤっとしながら初代新生がベルノを見ている。そして、たった今ウチに体当たりをかました恐竜人がベルノに向かって突進しようと構えた。
「ベルノはやらん!」
痛いとか怖いとか言っている場合でない。恐竜人とベルノの間に割って入り、相手の出方をうかがう。とりあえず足を止めるだけでもしなきゃ……。
「ネネ~」
ベルノ守ってやるからな。姉ちゃんにまかせとき!
「ネネ~~~!」
あれ、頭の上からベルノの声が……って⁉
「ベルノ!」
「よ~し、よくやった、ランフォ」
なんてこった……まだ仲間がいたのか。これは完全にやられた。目の前の相手に注意を向けているスキに、ランフォと呼ばれた翼竜の恐竜人がベルノを掴み飛び上がっていた。
“チーム新生には戦略性がない”なんて勝手に思い込んでいたウチのミスだ。彼女自身に戦略性がなくても、もしかしたら送り込んだ神さんの入れ知恵の可能性もあるってことを考えてなかった。
「ティラちゃん、頼む! 石投げてあいつ落としてくれ。ベルノは絶対に受け止めるから!」
…………あれ?
「ティラちゃん?」
「亜紀っち。マズイぜ……」
そう言って、初代新生を指差すティラノ。
「よく見ろよ。……さて、これはなんでしょうか~?」
そこには不敵な笑いを浮かべる初代新生が、人差し指と親指で何かをつまんでプラプラとさせていた。揺れるたびにキラキラと光る……あれはまさか?
「え、それ……ティラちゃんのジュラたまじゃんか。なんでお前が!?」
「今お前が転がりながら落としたんじゃねぇか。ジュラたまって言うのかこれ。ラッキーだぜ。どうやって奪おうかと思っていたくらいだからな」
「返せよ、それ」
「やだね。ジュラシック最恐、ティラノサウルスの指輪だ。返す訳ねぇだろ」
「おい、何をすんだよ」
言い終わると同時に初代新生は、ティラノのジュラたまを左の薬指にはめた。
――その瞬間、ウチとティラノの意思疎通が途切れた感覚があった。
「え、なにこれ……」
「知らないのか? このジュラたまってのを手に入れれば、恐竜人を奪えるんだぜ?」
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