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第11章
11-08異世界?
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夜明けが遠かった。
どこからか漏れ聞こえてくる話し声が安眠を妨害していた。
耳を澄まして会話に集中するが、ごにょごにょと意味をなさないノイズにしか聞こえない。
いずみはだんだんとイラつき始め、とうとう壁に耳を押しあてる。
「(全く! 内容が聞き取れない会話って腹が立つわね)」
そう言ったところで、聞き取れるようになるはずがない。
そもそも奴らが何者なのか? それが一番の問題だ。
宗主そっくりの老人(敢えて挑発的な言い方をすることに決定!)。
そして、愛する?湧のコピー野郎(湧と同一人物とは死んでも…いや、殺されても思いたくない!)……。
「(あれ? 私って湧のことを愛してる?)」
自分でボケて顔を真っ赤にしてしまういずみだった。
「(やぁ~~ん…)」
……。
「(やめとこ…)」
いずみは一人ツッコミで意識をリセットした。
奴らは敵か? 味方…とは到底考えられないから、敵に決定!
で、今後どう対応すべきなのか?
いずみの能力なら、こんな地下牢からは簡単に脱出できるが、最初から計画が狂っていたからこの後どうすればいいのか何も思いつかない。
「一体どうしたらいいんだろ?」
と言いつつ、亜空間ゲートを試してみる。
しかし、相変わらずゲートが開く気配すらない。
「お前が誰でどこから来たかはわからないが…」
翌朝、縛られたまま通された執務室のような部屋で、湧似の男が開口一番いずみに告げた。
「お前に危害を加える意思はない。ただ、我々の計画に何らかの悪影響があることは予想できるので、しばらくここで生活してもらう。もちろん地下牢などではなく、ちゃんとした部屋を用意してあるから安心しろ」
「何で? いきなり態度が変わってるのよ?」
「質問に答える義理はない。黙って従え」
傲慢な言い方に“カチン!”ときたが、辺りが何か騒がしいので睨むだけで素直に従った。
男が言ったように、ホテルのスイートにも匹敵する豪華な部屋に放り込まれた。
なぜかみんないずみを恐れて、本当にただドアの中に“放り”込まれた。
「…縄は解いてくれないの? これでどうしろっていうのよっ!」
しかし、いずみの訴えには耳も貸さずにそそくさと出て行ってしまう。
ドアにしっかり鍵をかけて。
「……、ま、いいか。こんな拘束すぐに解けるもんね。? もしかすると気付かれてた? ま、まさか…ね」
意外と冷静ないずみだった。
理解できないのは奴らの昨夜と今朝の対応の違いだ。
昨夜は犯罪者まがいの扱いが、今では行動の自由こそ制限されているものの、VIP扱いと言える。
拘束を解いたいずみは窓際に寄って、外を眺める。
そこには予想だにしてなかった光景が広がっていた。
「え? 何この町並み…。明治時代とはいえ…」
そこにはいずみの知らない明治時代の京都があった。
窓の外は何通りなのか不明だが、そこに、
「電車? え?京都に市電が開業したのって確か明治時代の中期よね? 何で明治6年に市電が?」
いずみは驚愕した。
これは確実にいずみの居た世界の明治時代ではない証拠だ。
「な、何でこんなことに…。道理でおじい…宗主や、湧っぽい男がいるわけだわ…」
世界が異なっても宗主や湧がいることに疑問を持たないのはいずみらしいが、だからと言って現状が改善されたわけじゃない。
むしろ元の世界に戻れる保証がないことが重要だった。
しかし、この世界でも陰陽師の残党は悪事を働いているのか? それが気になった。
それにしても驚いたのは街路を歩いている人々の服装だ。
大介の話では明治維新以後、急速に洋服が広まったという話だが、それは一部の富裕層に限られたことだ。一般市民は江戸時代の着物とちょんまげ姿が多いはずだ。
が、この世界は皆、袈裟のような不思議な服を着ていた。
「まるで異世界ね。日本とは思えないわ…」
唖然としつつも、自分の羽織袴姿を見下ろした。
「…誰もこんな格好してないじゃない! 溶け込むどころか目立ってしょうがないわよっ!」
どうりで昨夜不審者に間違われたわけだ。
が、ここの人間は道着のような服装だったことを思い出した。
「(もしかすると、ここの奴らって反社会組織?)」
だとしても、いずみへの対応は割と(?)紳士的だった。のかもしれない。
それに外の様子を見ていると、歩いている人々には活気が感じられない。
まるで亡霊の行列のような雰囲気だ。
もっともそう感じるのは、いずみが験力の持ち主だからかもしれない。
袈裟を着ているから僧侶の行進とも言える。
それが一部ならおかしいとは思わなかっただろう。でもさすがに全ての通行人が袈裟姿だと異様だ。
「(う~ん、全く判断できない(涙)。ここから脱出しても果たして目的が遂行できるのかな?)」
いずみはある意味で窮地に立たされた。
いずみの世界の明治時代なら、ある程度予測が立てられるが、ここではそれが正しいとはどう考えても思えない。
いわゆるいずみの常識が通用するとは思えないのだ。
「これは…、最初にすることは決まったわね」
いずみは不敵な笑顔で呟いた。
<続く>
どこからか漏れ聞こえてくる話し声が安眠を妨害していた。
耳を澄まして会話に集中するが、ごにょごにょと意味をなさないノイズにしか聞こえない。
いずみはだんだんとイラつき始め、とうとう壁に耳を押しあてる。
「(全く! 内容が聞き取れない会話って腹が立つわね)」
そう言ったところで、聞き取れるようになるはずがない。
そもそも奴らが何者なのか? それが一番の問題だ。
宗主そっくりの老人(敢えて挑発的な言い方をすることに決定!)。
そして、愛する?湧のコピー野郎(湧と同一人物とは死んでも…いや、殺されても思いたくない!)……。
「(あれ? 私って湧のことを愛してる?)」
自分でボケて顔を真っ赤にしてしまういずみだった。
「(やぁ~~ん…)」
……。
「(やめとこ…)」
いずみは一人ツッコミで意識をリセットした。
奴らは敵か? 味方…とは到底考えられないから、敵に決定!
で、今後どう対応すべきなのか?
いずみの能力なら、こんな地下牢からは簡単に脱出できるが、最初から計画が狂っていたからこの後どうすればいいのか何も思いつかない。
「一体どうしたらいいんだろ?」
と言いつつ、亜空間ゲートを試してみる。
しかし、相変わらずゲートが開く気配すらない。
「お前が誰でどこから来たかはわからないが…」
翌朝、縛られたまま通された執務室のような部屋で、湧似の男が開口一番いずみに告げた。
「お前に危害を加える意思はない。ただ、我々の計画に何らかの悪影響があることは予想できるので、しばらくここで生活してもらう。もちろん地下牢などではなく、ちゃんとした部屋を用意してあるから安心しろ」
「何で? いきなり態度が変わってるのよ?」
「質問に答える義理はない。黙って従え」
傲慢な言い方に“カチン!”ときたが、辺りが何か騒がしいので睨むだけで素直に従った。
男が言ったように、ホテルのスイートにも匹敵する豪華な部屋に放り込まれた。
なぜかみんないずみを恐れて、本当にただドアの中に“放り”込まれた。
「…縄は解いてくれないの? これでどうしろっていうのよっ!」
しかし、いずみの訴えには耳も貸さずにそそくさと出て行ってしまう。
ドアにしっかり鍵をかけて。
「……、ま、いいか。こんな拘束すぐに解けるもんね。? もしかすると気付かれてた? ま、まさか…ね」
意外と冷静ないずみだった。
理解できないのは奴らの昨夜と今朝の対応の違いだ。
昨夜は犯罪者まがいの扱いが、今では行動の自由こそ制限されているものの、VIP扱いと言える。
拘束を解いたいずみは窓際に寄って、外を眺める。
そこには予想だにしてなかった光景が広がっていた。
「え? 何この町並み…。明治時代とはいえ…」
そこにはいずみの知らない明治時代の京都があった。
窓の外は何通りなのか不明だが、そこに、
「電車? え?京都に市電が開業したのって確か明治時代の中期よね? 何で明治6年に市電が?」
いずみは驚愕した。
これは確実にいずみの居た世界の明治時代ではない証拠だ。
「な、何でこんなことに…。道理でおじい…宗主や、湧っぽい男がいるわけだわ…」
世界が異なっても宗主や湧がいることに疑問を持たないのはいずみらしいが、だからと言って現状が改善されたわけじゃない。
むしろ元の世界に戻れる保証がないことが重要だった。
しかし、この世界でも陰陽師の残党は悪事を働いているのか? それが気になった。
それにしても驚いたのは街路を歩いている人々の服装だ。
大介の話では明治維新以後、急速に洋服が広まったという話だが、それは一部の富裕層に限られたことだ。一般市民は江戸時代の着物とちょんまげ姿が多いはずだ。
が、この世界は皆、袈裟のような不思議な服を着ていた。
「まるで異世界ね。日本とは思えないわ…」
唖然としつつも、自分の羽織袴姿を見下ろした。
「…誰もこんな格好してないじゃない! 溶け込むどころか目立ってしょうがないわよっ!」
どうりで昨夜不審者に間違われたわけだ。
が、ここの人間は道着のような服装だったことを思い出した。
「(もしかすると、ここの奴らって反社会組織?)」
だとしても、いずみへの対応は割と(?)紳士的だった。のかもしれない。
それに外の様子を見ていると、歩いている人々には活気が感じられない。
まるで亡霊の行列のような雰囲気だ。
もっともそう感じるのは、いずみが験力の持ち主だからかもしれない。
袈裟を着ているから僧侶の行進とも言える。
それが一部ならおかしいとは思わなかっただろう。でもさすがに全ての通行人が袈裟姿だと異様だ。
「(う~ん、全く判断できない(涙)。ここから脱出しても果たして目的が遂行できるのかな?)」
いずみはある意味で窮地に立たされた。
いずみの世界の明治時代なら、ある程度予測が立てられるが、ここではそれが正しいとはどう考えても思えない。
いわゆるいずみの常識が通用するとは思えないのだ。
「これは…、最初にすることは決まったわね」
いずみは不敵な笑顔で呟いた。
<続く>
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