10 / 32
EX03
エイトライナー/メトロセブン03
しおりを挟む
メトロセブン計画を実現するにあたって、奈美さんの言ったように東武スカイツリーライン西新井駅での乗り換えを前提にしたところで、それは当初からの計画のままだ。
つまりここにきて建設を決定するファクターにはなり得なかったはずだ。
「確かに常磐線に乗り換えるのは楽でしょうが、敢えて東武スカイツリーラインで北千住に出るより、多少不便でも亀有で乗り換えるんじゃないですか?」
「そうね。東武線と千代田線(常磐緩行線直通)のホームはかなり離れてるから、2回も乗り換えるなら亀有乗り換えを選ぶと思うわ」
奈美さんもあっさり同意する。
「しかも運賃はメトロセブンと東武線の合算ですから、いくら早くてもJRを利用して赤羽まで来た乗客が乗り換えるとは思えないんですよね」
「まあ特定運賃が適用されてもJRだけのルートよりは高いでしょうね」
「ならやっぱり、この時期に建設が決定したのが解せないんですよね」
「そこが驚愕的な変更点なのよ。実はメトロセブンの運用は東京メトロに決定して、さらに赤羽~西新井間は東武線直通の列車も供用されることになったの」
「え? ええっー??」
確かに驚愕的な変更だ!
「東武が乗り入れるんですか? 乗り入れはしなかったんじゃないんですか?」
「だから驚愕的って言ったでしょ? そして大師前から分岐して西新井はそれぞれのホームを使用するんだって」
現在の東武大師線は全長1kmで全線単線。車両も20m車の8000系2両編成1本が往復してる。大師前駅のホームも50mほどしかなく、一面1線となっている。しかもほとんどが高架線なので、そのままメトロセブンに接続することはできない。
「そうなると、大師線は事実上廃線されるってことですか?」
「そうね。メトロセブンに移行するから発展的解消ってことね」
「直通ってことは…あれ? 今運用は東京メトロって言いました? 都営じゃないんですか?」
「うん。それには、事業者が東京メトロになった、もっともな理由があってね…」
奈美さんが東京23区の地図の足立区を開く。
「都交通局が事業者になった場合、沿線に車両基地を確保しなくちゃいけなくて、その用地取得がほぼ不可能だと判断されたの」
「ああ、車両基地も必要ですよね。でも既存の車両基地じゃ対応できないんですか? 東京メトロは幾つかの基地に集約してますよね?」
「既存の都営の車両基地ってどこ? 車両規格から三田線の基地しか使えないわよ。しかも現在相鉄直通の対応で8両編成化が予定されてるから、キャパシティ的に無理」
「あ、そうか。それに新宿線なら一之江付近から短絡線で…って思ったけど…」
「新宿線は1372mm軌間なので、3線化しなくちゃ無理。しかも地下鉄なので車両限界を大きく超えてしまいます」
3線化された区間は数あるが(最新では青函トンネルなど)、その場合は走行する車両の中心が変移するため、車両側面が大きくはみ出してしまう。車両限界寸法に余裕がなければ車体側面が接触してしまうのだ。
「でも東京メトロなら、メトロセブンの計画線上に綾瀬検車区が隣接しているし、東京メトロ最大の綾瀬工場もあるから、すべてがここでまかなえるの」
「おお! 確かにここなら分岐して引き込むだけで全て対応できますね」
「でしょ? さらに半蔵門線の押上止まりの数本を延長させて、赤羽まで走らせれば車両の増備も抑えることができるし、効率良く運用ができると考えたのね」
新線計画で意外と経費が嵩むのが車両にまつわるものだ。
特に完全な新型車両となると、設計・試作するだけで数十億円かかってしまう。
半蔵門線用の最新型車両は2002年にデビューした08系であり、6編成投入されたがその後は小改良に留まっている。
そろそろ新形式車18000系が登場するから、メトロセブンと供用すれば新型車の設計は省くことができるだろう。
「そうなると運用上は東急の車両も赤羽まで行くことになるんですか?」
「そこまではまだ分かんないけど、不可能じゃないよね」
さらに驚愕すべき事実と言って、奈美さんが示した資料を見た。
それは…
「この運賃設定って、すごく革新的ですね!」
「え? でも前例はあるのよ」
俺が歓喜してるのを、横で平板な顔つきで見つめる奈美さん。
「へ?」
「一番分かりやすいのは南北線/三田線供用の目黒~白金高輪間かな? 目黒から南北線の白金高輪以遠へは東京メトロの運賃が適用されて、同じく目黒から三田線の白金高輪以遠へは都交通局の運賃が適用されるの」
「目黒から白金高輪間は本来南北線ですよね? それでも東京メトロの運賃はかからないんですか?」
「その区間は東京都交通局は第二種鉄道事業者なので、運賃は東京メトロに準拠していて、その先の三田駅は本来の初乗り運賃になるのよ」
「へえ、それでメトロセブンの方は?」
「赤羽~西新井までが東京メトロが第1種鉄道事業者、東武は第二種鉄道事業者となり、赤羽から押上までは東武の運賃が適用されるの」
「押上? ああ、そうか半蔵門線直通だからですね」
「うんうん。で、ここからが今回の特例なんだけど、押上以遠まで乗車の場合は東京メトロの運賃だけで乗車可能になるの」
「はい? どういうことですか?」
「だから大手町まで乗ったとすると、押上まで東武線を利用したのか、北千住から日比谷線を経由したのか、はたまた千代田線経由なのか判別できないから、東京メトロのみの料金が適用されることになったのよ」
「東武は損しないんですか?」
「しないんじゃない? それに新たにJRとの結節点が得られる効果の方が大きいんじゃないかな?」
? 奈美さんらしくない…というか、こういう言い方してる時は、別の何かに興味が向けられている可能性が高い。
「奈美さん? 他にも何かありますね? 白状してください」
「へ? は、白状って失礼なっ!」
途端に顔色が白くなった。
「奈美さん? 顔が白状してますけど…」
「え? …うう~、分かったわよ。言います言います」
諦めた様子でゴソゴソとバッグからひと束の書類を出した。
そのまま俺に手渡すと、メトロセブンの配布資料に集中する。
俺にこの資料を読めということだろう。
やむなく表紙に目を落とした俺は、そこに印刷されていた文字を見て呆気にとられた。
『新・東武西練(にしねり)線のご提案』
西練線? なんだこりゃ。
奈美さんを見ると、こっちに顔を向けないように必死になって資料を読みふけっている。
何も説明するつもりはないらしい。
仕方ないので、とにかく表紙をめくって内容を確認することにした。
奈美さんが東武本社に提案したらしく、東上鉄道と合併して間も無く、本線と東上線の連絡のために計画した『西板線』のことが綴られていた。
『西板線』は環七に沿って西新井から常盤台付近まで進み、東上線の上板橋に繋がる計画だった。
しかし、未曾有の災害を引き起こした関東大震災の復興が最優先され、計画は延期せざるを得なかった。
さらに、荒川の整備のため北千住~鐘ケ淵間のルート変更により資金が底をつき、さらに計画が延期されているうちに、免許が失効してしまう。
その後は都心部からの人口流出により、計画線付近の地価が高騰。再度免許を申請することができずに計画そのものが破棄された。
奈美さんは今回のエイトライナーが上板橋~東武練馬感を通ることを理由に、エイトライナーに並走して東武新線の計画を提案したのだ。
なんとも無謀な… いや、夢想的…というより妄想的な計画なんだろう。
「奈美さんこれって、いや、これがやりたかったんですね」
鼻の頭をぽりぽり掻きながら、横を向いたままコクリと頷く。
「道理でテンション高かったわけですねぇ。でも、ここまでして本線と東上線を結ぶ必要あるんですか? 連絡線なら野田線…あ、東武アーバンパークラインの延伸で実現できたじゃないですか(※)」
(※妄想ライン/妄想トレイン第一話 TJライナーUPL参照※)
「そうだけど、大師線が新線に生まれ変わるなら、西板線計画も復活できないかなぁ~って思って」
「あの~、鉄道建設はゲームじゃないんですから、そう簡単に新線建設なんてできないですよ」
奈美さんは東武絡みになると、常軌を逸する傾向があったけど今回のは酷すぎる。
そもそも大師線が発展的解消されて、赤羽というターミナルを得られるだけで充分だと思うけど…。
「東武でも言われたわ。さすがにこれは夢物語でしょうって」
「でしょうねぇ。それにエイトライナーって今の所は都営が運営するんでしょ? それなら車両は大江戸線規格のリニアモーターだろうから、東武車を通すなら別線を建設するしかないじゃないですか。建設費を抑える目的で小断面地下鉄にするのに、複々線にしたら意味ないじゃないですかぁ」
地下鉄はその名の通り、地面の下を通る。
今でこそシールド工法によって、工期が大幅に短縮されたが、それでもトンネル断面は小さい方がより短くすることができる。
しかも当然、小さい方が建設費も抑えることができ、ルート策定も最小カーブ半径が小さいため、自由度が広がるのだ。
用地取得が難しい路線には特に有効なのだ。
さらにリニアモーター駆動の場合、車両と地上(レール間)に設置されているリアクションプレートによって駆動するため勾配に強く、駅間のみを地下深くを通すことにより、他の埋設物を余裕を持って回避することができる。
そんな利点ばかりに思われるリニアモーター地下鉄だが、小断面は当然車両の大きさも大幅に小さくなってしまう。
「まあ、東上線と赤羽が直結するだけでも十分じゃないですか?」
「そうなんだけどね。今まで赤羽に行こうとしたら、池袋から埼京線で行くしかないもんね」
「あれ? 湘南新宿ラインだったら一駅じゃないですか? そっちでは行かないんですか?」
「本数が少ないから埼京線の方が多いかな? どっちでも10分くらいだからどっちに乗ってもいいんだけどね」
「でもエイトライナーが開通したら、こっちの方が早いんですよね? 単純に乗り換え駅から池袋に行くまでの時間が短縮できるんじゃないですか?」
「どうかな? まあ今の時点であれこれ話しても意味ないと思うけど…」
「そりゃそうですね。影も形も、っていうかまだ建設されるかどうかもわからないんですからね」
エイトライナーに関してはまだまだ方向性すら決まっていないのだ。
今はメトロセブンに集中することになった。
「で、メトロセブンはいつ頃開通するんですか?」
「それが問題なのよ。まずは交通渋滞が深刻な北綾瀬から葛西臨海公園間を第1期開業区間として、車両基地は当然綾瀬車庫になるんだけど…」
「何か問題でも?」
「綾瀬車両基地は現在千代田線の他にJR常磐緩行線・小田急線・有楽町/副都心線・南北線・埼玉高速鉄道など多くの車両が入出場がしてるの」
「あ、そうか全検などで他路線の車両も来るんですよね?」
「そうなの。で、ここにメトロセブン用の車両まで入れるのは無理なので、地下に新しい留置線を増設するらしいのよ」
「地下に? そんな余裕があるんですか?」
「余裕はないだろうけど、そのあたりはうまくやりくりするんじゃない?」
あ~、東上線の話題から外れると途端にテンション落ちるのね(笑)
奈美さんの妄想…もとい、提案は東武社内でも検討されるらしい。
とはいえ、全社ベースではなく運輸企画課内でのことだが…。
それでも、可能性がないとは言い切れないから、東武からの返答を期待しているようだ。
<続く>
つまりここにきて建設を決定するファクターにはなり得なかったはずだ。
「確かに常磐線に乗り換えるのは楽でしょうが、敢えて東武スカイツリーラインで北千住に出るより、多少不便でも亀有で乗り換えるんじゃないですか?」
「そうね。東武線と千代田線(常磐緩行線直通)のホームはかなり離れてるから、2回も乗り換えるなら亀有乗り換えを選ぶと思うわ」
奈美さんもあっさり同意する。
「しかも運賃はメトロセブンと東武線の合算ですから、いくら早くてもJRを利用して赤羽まで来た乗客が乗り換えるとは思えないんですよね」
「まあ特定運賃が適用されてもJRだけのルートよりは高いでしょうね」
「ならやっぱり、この時期に建設が決定したのが解せないんですよね」
「そこが驚愕的な変更点なのよ。実はメトロセブンの運用は東京メトロに決定して、さらに赤羽~西新井間は東武線直通の列車も供用されることになったの」
「え? ええっー??」
確かに驚愕的な変更だ!
「東武が乗り入れるんですか? 乗り入れはしなかったんじゃないんですか?」
「だから驚愕的って言ったでしょ? そして大師前から分岐して西新井はそれぞれのホームを使用するんだって」
現在の東武大師線は全長1kmで全線単線。車両も20m車の8000系2両編成1本が往復してる。大師前駅のホームも50mほどしかなく、一面1線となっている。しかもほとんどが高架線なので、そのままメトロセブンに接続することはできない。
「そうなると、大師線は事実上廃線されるってことですか?」
「そうね。メトロセブンに移行するから発展的解消ってことね」
「直通ってことは…あれ? 今運用は東京メトロって言いました? 都営じゃないんですか?」
「うん。それには、事業者が東京メトロになった、もっともな理由があってね…」
奈美さんが東京23区の地図の足立区を開く。
「都交通局が事業者になった場合、沿線に車両基地を確保しなくちゃいけなくて、その用地取得がほぼ不可能だと判断されたの」
「ああ、車両基地も必要ですよね。でも既存の車両基地じゃ対応できないんですか? 東京メトロは幾つかの基地に集約してますよね?」
「既存の都営の車両基地ってどこ? 車両規格から三田線の基地しか使えないわよ。しかも現在相鉄直通の対応で8両編成化が予定されてるから、キャパシティ的に無理」
「あ、そうか。それに新宿線なら一之江付近から短絡線で…って思ったけど…」
「新宿線は1372mm軌間なので、3線化しなくちゃ無理。しかも地下鉄なので車両限界を大きく超えてしまいます」
3線化された区間は数あるが(最新では青函トンネルなど)、その場合は走行する車両の中心が変移するため、車両側面が大きくはみ出してしまう。車両限界寸法に余裕がなければ車体側面が接触してしまうのだ。
「でも東京メトロなら、メトロセブンの計画線上に綾瀬検車区が隣接しているし、東京メトロ最大の綾瀬工場もあるから、すべてがここでまかなえるの」
「おお! 確かにここなら分岐して引き込むだけで全て対応できますね」
「でしょ? さらに半蔵門線の押上止まりの数本を延長させて、赤羽まで走らせれば車両の増備も抑えることができるし、効率良く運用ができると考えたのね」
新線計画で意外と経費が嵩むのが車両にまつわるものだ。
特に完全な新型車両となると、設計・試作するだけで数十億円かかってしまう。
半蔵門線用の最新型車両は2002年にデビューした08系であり、6編成投入されたがその後は小改良に留まっている。
そろそろ新形式車18000系が登場するから、メトロセブンと供用すれば新型車の設計は省くことができるだろう。
「そうなると運用上は東急の車両も赤羽まで行くことになるんですか?」
「そこまではまだ分かんないけど、不可能じゃないよね」
さらに驚愕すべき事実と言って、奈美さんが示した資料を見た。
それは…
「この運賃設定って、すごく革新的ですね!」
「え? でも前例はあるのよ」
俺が歓喜してるのを、横で平板な顔つきで見つめる奈美さん。
「へ?」
「一番分かりやすいのは南北線/三田線供用の目黒~白金高輪間かな? 目黒から南北線の白金高輪以遠へは東京メトロの運賃が適用されて、同じく目黒から三田線の白金高輪以遠へは都交通局の運賃が適用されるの」
「目黒から白金高輪間は本来南北線ですよね? それでも東京メトロの運賃はかからないんですか?」
「その区間は東京都交通局は第二種鉄道事業者なので、運賃は東京メトロに準拠していて、その先の三田駅は本来の初乗り運賃になるのよ」
「へえ、それでメトロセブンの方は?」
「赤羽~西新井までが東京メトロが第1種鉄道事業者、東武は第二種鉄道事業者となり、赤羽から押上までは東武の運賃が適用されるの」
「押上? ああ、そうか半蔵門線直通だからですね」
「うんうん。で、ここからが今回の特例なんだけど、押上以遠まで乗車の場合は東京メトロの運賃だけで乗車可能になるの」
「はい? どういうことですか?」
「だから大手町まで乗ったとすると、押上まで東武線を利用したのか、北千住から日比谷線を経由したのか、はたまた千代田線経由なのか判別できないから、東京メトロのみの料金が適用されることになったのよ」
「東武は損しないんですか?」
「しないんじゃない? それに新たにJRとの結節点が得られる効果の方が大きいんじゃないかな?」
? 奈美さんらしくない…というか、こういう言い方してる時は、別の何かに興味が向けられている可能性が高い。
「奈美さん? 他にも何かありますね? 白状してください」
「へ? は、白状って失礼なっ!」
途端に顔色が白くなった。
「奈美さん? 顔が白状してますけど…」
「え? …うう~、分かったわよ。言います言います」
諦めた様子でゴソゴソとバッグからひと束の書類を出した。
そのまま俺に手渡すと、メトロセブンの配布資料に集中する。
俺にこの資料を読めということだろう。
やむなく表紙に目を落とした俺は、そこに印刷されていた文字を見て呆気にとられた。
『新・東武西練(にしねり)線のご提案』
西練線? なんだこりゃ。
奈美さんを見ると、こっちに顔を向けないように必死になって資料を読みふけっている。
何も説明するつもりはないらしい。
仕方ないので、とにかく表紙をめくって内容を確認することにした。
奈美さんが東武本社に提案したらしく、東上鉄道と合併して間も無く、本線と東上線の連絡のために計画した『西板線』のことが綴られていた。
『西板線』は環七に沿って西新井から常盤台付近まで進み、東上線の上板橋に繋がる計画だった。
しかし、未曾有の災害を引き起こした関東大震災の復興が最優先され、計画は延期せざるを得なかった。
さらに、荒川の整備のため北千住~鐘ケ淵間のルート変更により資金が底をつき、さらに計画が延期されているうちに、免許が失効してしまう。
その後は都心部からの人口流出により、計画線付近の地価が高騰。再度免許を申請することができずに計画そのものが破棄された。
奈美さんは今回のエイトライナーが上板橋~東武練馬感を通ることを理由に、エイトライナーに並走して東武新線の計画を提案したのだ。
なんとも無謀な… いや、夢想的…というより妄想的な計画なんだろう。
「奈美さんこれって、いや、これがやりたかったんですね」
鼻の頭をぽりぽり掻きながら、横を向いたままコクリと頷く。
「道理でテンション高かったわけですねぇ。でも、ここまでして本線と東上線を結ぶ必要あるんですか? 連絡線なら野田線…あ、東武アーバンパークラインの延伸で実現できたじゃないですか(※)」
(※妄想ライン/妄想トレイン第一話 TJライナーUPL参照※)
「そうだけど、大師線が新線に生まれ変わるなら、西板線計画も復活できないかなぁ~って思って」
「あの~、鉄道建設はゲームじゃないんですから、そう簡単に新線建設なんてできないですよ」
奈美さんは東武絡みになると、常軌を逸する傾向があったけど今回のは酷すぎる。
そもそも大師線が発展的解消されて、赤羽というターミナルを得られるだけで充分だと思うけど…。
「東武でも言われたわ。さすがにこれは夢物語でしょうって」
「でしょうねぇ。それにエイトライナーって今の所は都営が運営するんでしょ? それなら車両は大江戸線規格のリニアモーターだろうから、東武車を通すなら別線を建設するしかないじゃないですか。建設費を抑える目的で小断面地下鉄にするのに、複々線にしたら意味ないじゃないですかぁ」
地下鉄はその名の通り、地面の下を通る。
今でこそシールド工法によって、工期が大幅に短縮されたが、それでもトンネル断面は小さい方がより短くすることができる。
しかも当然、小さい方が建設費も抑えることができ、ルート策定も最小カーブ半径が小さいため、自由度が広がるのだ。
用地取得が難しい路線には特に有効なのだ。
さらにリニアモーター駆動の場合、車両と地上(レール間)に設置されているリアクションプレートによって駆動するため勾配に強く、駅間のみを地下深くを通すことにより、他の埋設物を余裕を持って回避することができる。
そんな利点ばかりに思われるリニアモーター地下鉄だが、小断面は当然車両の大きさも大幅に小さくなってしまう。
「まあ、東上線と赤羽が直結するだけでも十分じゃないですか?」
「そうなんだけどね。今まで赤羽に行こうとしたら、池袋から埼京線で行くしかないもんね」
「あれ? 湘南新宿ラインだったら一駅じゃないですか? そっちでは行かないんですか?」
「本数が少ないから埼京線の方が多いかな? どっちでも10分くらいだからどっちに乗ってもいいんだけどね」
「でもエイトライナーが開通したら、こっちの方が早いんですよね? 単純に乗り換え駅から池袋に行くまでの時間が短縮できるんじゃないですか?」
「どうかな? まあ今の時点であれこれ話しても意味ないと思うけど…」
「そりゃそうですね。影も形も、っていうかまだ建設されるかどうかもわからないんですからね」
エイトライナーに関してはまだまだ方向性すら決まっていないのだ。
今はメトロセブンに集中することになった。
「で、メトロセブンはいつ頃開通するんですか?」
「それが問題なのよ。まずは交通渋滞が深刻な北綾瀬から葛西臨海公園間を第1期開業区間として、車両基地は当然綾瀬車庫になるんだけど…」
「何か問題でも?」
「綾瀬車両基地は現在千代田線の他にJR常磐緩行線・小田急線・有楽町/副都心線・南北線・埼玉高速鉄道など多くの車両が入出場がしてるの」
「あ、そうか全検などで他路線の車両も来るんですよね?」
「そうなの。で、ここにメトロセブン用の車両まで入れるのは無理なので、地下に新しい留置線を増設するらしいのよ」
「地下に? そんな余裕があるんですか?」
「余裕はないだろうけど、そのあたりはうまくやりくりするんじゃない?」
あ~、東上線の話題から外れると途端にテンション落ちるのね(笑)
奈美さんの妄想…もとい、提案は東武社内でも検討されるらしい。
とはいえ、全社ベースではなく運輸企画課内でのことだが…。
それでも、可能性がないとは言い切れないから、東武からの返答を期待しているようだ。
<続く>
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる