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直パン座りの真実③
しおりを挟む恐らく、音霧さんもこれがあまりよろしくないものだとわかっているからこそ、隠すように自分が腰掛ける真後ろに置いてしまうのだ。でも、その真後ろには……俺が居るんだよ……。
続いてスカートを履きハーパンを脱ぎ終わると、やはり俺の机に──。
そして制服に着替え終わった音霧さんは、尚も俺の机の上に座っていた。
「ふぅー! お着替え完了!」
俺の心境に気づく様子は一切なく、音霧さんは呑気なものだった。
しかし──。
「つーか、あず……。それ普通に前から丸見えだからやめたほうがいいよ? まあ、今はわたしらしか見えてないからいいけどさ」
「そうね。もぞもぞして隠して着替えているようだったけれど、普通に丸見えだったわよ? すごい手慣れた感じで自信あり気に着替えていたから、少し心配だわ」
「え⁈ えぇー!」
「あずってパステルカラー好きだよね~。今日は水色かぁ~!」
「い、い、言わないで!」
「あら。可愛くていいと思うわよ?」
「恥ずかしいから言わないで!」
おいおい。どうしてそこで恥じらうんだよ……。それだけ恥じらえるのなら、少しでいいから後ろに居る俺にも気を使ってくれよ……。
とはいえ──。
キーンコーンカーンコーン。
嵐のような時間はチャイムが鳴れば終わりを迎える。
音霧さんはシュタッと俺の机から降りると、体操着とハーフパンツを手に取り自分の席へと戻っていった。
……あれ。ちょっと待て。持っていくものはそれだけなのか?
使い終わった汗拭きシートのゴミが、俺の机の上に置きっぱなしにされていた。
ちょ……。えっ……。
それは彼女がひとたび俺の席を離れれば、鼻をかんだティッシュが置かれているようにしか見えない、自然な光景。
「よーし授業始めるぞー! 今日は二十三ページの続きからだな」
そして教師の声とともに授業が始まってしまった。
……おいおい、勘弁してくれよ。
もはや汗拭きシートをゴミ箱に捨てに行ける状況ではなかった。
このゴミは体育でがんばってしまったがばかりに“もうだめかもしれないにゃあ”と、弱音を吐くほどに疲れ切った音霧さんの身体を拭き拭きしたものだ。そのせいで多分に汗を含み、びっしょりと濡れている。
そんなゴミが、俺の机の上にぽつんと置かれている。
……いや、本当に……。どうするの、これ……。
しかし問題はそれだけには留まらなかった。
なにやら机に異様な跡がついているんだ。
それがいったいなんの跡なのか、もはや想像に容易いものだった。
ついに……。恐れていた日が現実のものとなってしまった。
跡がついている場所は、ついっさきまで音霧さんが腰を掛けている場所だった。つまり……あぁ……。
この場合、汗と言うのか沸え汁と言うのか……判断の難しいところだ。
でも、なにかがおかしい。
桃のような、なんかそんな感じの跡なんだ。
それは火照った体でパンツ越しに座ったからといって、出来るような跡とは少し違って見えた。
──ドクンッ。
ま、まさか……。今まで一度も考えもしなかった、衝撃的な事実が頭の中を駆け巡る。
もしかして音霧さん……。今しがたの君は、パンツが食い込んでしまっていたのか?
なんてことだ……。決して知ってはならない、禁断の真実。
考えてみれば当たり前のことだった。食い込んでしまう、そんな日もあるさ。
つまり、毎回必ずパンツ越しに座っていたのではなく──。
「────つまりはパイの二乗だ! ここテストに出るからな! 忘れずに覚えておくんだぞ!」
パイ……。ふたつの桃パイが、俺の机に……。
当然、授業に身が入るわけもなく──。
控える期末テストの対策と範囲を教えてくれる教師の声は、俺の耳には届かない。
一学年のときはクラスで五本の指には必ず入っていた。学年順位も20位台をキープしていたのに、二学年に上がってからは見る影もない……。
このままじゃ、だめだ。
愚かしい煩悩を消し去らないことには、たとえ席替えをしても音霧さんを目で追ってしまうかもしれない。
でも──。朝の俺は、パンチラする直パン問題をカエデライオンとのトレーニングで克服していた。
だったら、もう一度──。今度は……。
脳裏に浮かぶのは、兄としてはおよそ間違ったトレーニング内容だった。
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