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67話

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 ──厨房に到着! 

 熱気がすごい。まさに戦場。


「最側、今日のおすすめは〝ブドウ&ピーナッチェリー〟で頼む。よろしくな」
「はいはぁい」

 最側は怠そうに返事をするも、レジへ向かう姿は優秀なクルーのそれだった。

 ◆◇

 「「かえでさんお疲れ様です!!」」

 厨房に居た男性クルー二人が声を揃えて店長に挨拶をしてきた。

「はーい、お疲れー! ありがとうね」

 忠実な部下、と言うよりは何処と無く〝番犬〟のように見えるのは気のせいだろうか。楓さんと名前呼びしてるし……。
 ──きっと気のせいだろう。そうであってくれ。


「へー、新人の学生ちゃんですか?」
「大丈夫なんですかこいつ?」

 おいおい、随分と態度が悪いな。

「おっ、今一瞬だが、睨んできやしたぜ?」

 何故、そんなにも喧嘩腰なんだよ。バイト先の先輩ってこんな感じなのか……。短髪で血の気が多そうと言うか……。


「まぁ、そう言うな。つい先ほども最側に荷物を持たせ〝わかったか?〟と、ドヤしてきたところだ」

「そ、それは本当ですか楓さん?」
「な、なんと?! あの最側相手に?!」

 男性クルー二人は驚きを隠せない様子で店長に確認をする。

 店長は笑顔でうなずき、俺の肩を叩いた。
 小さな声で「ほら、挨拶」と続けた。

「今日からお世話になります八ノ瀬陸と申します。よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしく! 歓迎するよ!」
「さっきは悪かったな八ノ瀬くん! 非礼を詫びよう!」

 順番に握手をした。先ほどまでとは違ってとてもフレンドリーだ。
 田中たなかさんと、田中たなかさん?!

 
「口は少々悪いが、根はいい奴らだ。とは言っても応援で来ているだけだから、この店のクルーでは無いのだがな。わたしが選別したS級クルーだ」

 なるほど。どうりで親しげな訳だ。加えてあの見た目は特殊部隊レンジャーに居そうな程の面構え。

 ポテトを掬う仕草はまるで銃弾を込めるかのごとく。
 バーガーをトレイに乗せる仕草は手榴弾しゅりゅうだんを投げるかのごとく。

 無駄のない、洗礼された動き。これがS級クルーなのか……。すごっ。


 田中さんたちの働く姿をみて俺は完全に口が開いてしまった。ポカーンと眺める事しかできない。

「ダブル田中は大会で入選する程のS級クルーだ。そもそものステージが違う。気にするな。はははっ!」

 すかさず店長がフォローをいれてくれる。この人は本当に気が利く人だ。



 店長は俺の肩を叩き「レジを見てごらん」と小さな声で語りかけてきた。

 レジは全部で三つある。しかし二つのレジに客は並んでいない。

「次でお待ちのお客様、こちらへどうぞー」

 …………。

 しかし、誰もそのレジへは来ない。異様な光景。

 ──少しするとお婆ちゃんが「あら、いいのかしら?」と、空いてるレジで注文を始めた。


「いちごちゃん。もうわかったね? それじゃあ、研修を始める前に業務とこれからについて事務所で話そうか」


 ──なにごと?!
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