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15話
しおりを挟む授業中に色々と考えたが結局何も思い浮かばなかった。休み時間は当たり前のように訪れる。
妖精さんの姿はもはや見えない。どこに行っちまったんだよ……。妖精さんが元気になるまでは1人で乗り越えなければいけない。
あー、やばい。死にたくなってきた。
彼女は必ず来るだろう。嵐のように。……あ、来た。
タタタタタタッ♪
眩しすぎる笑顔で向かってくる。
さぁ、どうする。俺に何が出来る……。流される事しか出来ないのだろうか。
「よいしょ!!」
俺がため息をつきかけた、まさにその瞬間。刹那の時間。俺は大きなミスを犯した事に気がつく。
時はすでに遅し。ちほは当たり前のように俺の上に正面を向いて座ってしまった。
俺は阿呆だ。やっちまった。また……またこの体勢か。
「ねぇ、りっくん! スマホ!」
「あぁ」
笑顔で手を出してくる。ID交換だったか。
ロックを解除してスマホを渡した。
俺はもう流れに身を任せる事しか出来ない。
ピッピッ! ピピピッ!
ID打ち込んでるのか。QRかな。
……………。
……………。
長過ぎないか? そんな時間掛かるか?
……………。
……………。
さすがに遅い。なにやってんだ?
この距離だから覗き込む事は訳ない。……覗くか。
「!!!!!!!!」
いや、いやいや! え、待って!! メッセージの履歴を普通に見てるんだが! はぁ? こんな堂々と?!
……あ、いや。そうか。「スマホ!」としか言われてないんだ。
俺はちほにスマホを渡した。つまりはそれは承諾したと言う事。
勝手に、俺がID交換をする〝だけ〟と誤解をした訳か。
こんなことってある?! ありなの?!
恐ろしい……。彼女とはここまで権利があるのか。
これがお付き合いをすると言う事か?
本当に……? あぁ、もう何もわからない。
……妖精さん。俺、君が居ないと何も出来ないよ。早く、早く戻ってきてくれ。
でも家族と杉山くらいしかやり取りしてないからな。見られて困る事はない。
この時間の俺は秋月さんのIDすら知らないんだし。
「ふぅ~、完了!」
にっこり笑顔で俺にスマホを返してきた。
いやいや、今IDの交換終わりましたよ。みたいな素振りはやめなさい。
ピコン。【ちぃちゃん♡】からメッセージ。
なにこれ。クマがチュウしてるスタンプ。
いや、その前にちぃちゃんとか初耳なんだが。♡のおまけ付きかよ。
──それは不意に訪れた。俺はあっさり唇を奪われてしまった。あ~クマのスタンプはフラグだったのか。さよならファーストキス。
「えへへ! りっくんだいしゅき!」
「あぁ、俺も好きだよ」
「くっつき虫ぃ~! ぎゅーーー。」
俺の寂しい寂しいメッセージ履歴を見てご満悦の様子だ。わかりやすい奴め。
だんだんとわかって来たぞ。割と頭は切れるタイプだな。
などと分析をしていると、廊下から騒がしい声が聞こえて来た。
「だから失せろって言ってんだろうが!!」
あの龍王寺が揉めているようだ。同学年に彼と揉められるような奴は居ないはず。
──どうした龍王寺?!
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