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二章

三十三話

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 ふかふかベットの上で女の子座り。短めぴっちりルームウェア。チロルちゃんに選んでもらった女子力MAXのやばいやつだ!!

 枕を抱きしめ、下乳を乗せる。キュートなお腹は隠れてしまうが、綺麗な太ももで想像力を掻き立てる!

 膨らむのは妄想だけではない。
 お胸も枕に乗ってる分、強調される。

 奥義にして秘伝ッ‼︎ 

 〝マクーラシタチチバスター‼︎〟

 さぁ、こい勇者レオ。名前に似つかわしい野獣なような目を向けろ!
 本性を出しやがれ!! どうせやりたいだけだろ!!

 お手軽そうでお手軽ではない。
 焦らしてやるぞチャラ男がッ!!

 恋するウィッチの心を弄ぶ四股野郎……許すまじ!

 イケメンシバくマジ‼︎




 ──勇者レオのドアドン待ちッ!



 ◆◇

 バタンッ!

 勢いよく開かれるドア。まさにドアドンッ。きゅん。

「ゴクアーク! 追い詰めたぞ!」
 


 き、来たッ!! れ、レオ様だぁぁぁ!!!!


 ……………………。

 ハッ。〝様〟? レオ様? 危うく意識を刈り取られるところだった。イケメンまじ危なしッ!!


 チラッ。勇者レオの視線が高速で下がる。
 刹那の時間。高速で上に戻る。


 みた! 今、絶対おっぱいみた!!

 きゅんっ♡


 チラッ。

 またも視線が高速で一瞬だけ下がる。


 きゅんっ♡ きゅんっ♡


 れ、レオ様がチラ見してくれたぁぁぁ!!



 …………。治れよ。心。鼓動。あやのちゃんモード。

 イケメンに負けてたまるかぁぁぁぁ!!

 うぅぅぅぅぅぅーーーー!!!!


 ──必死に葛藤をしていた。
 周りを見る余裕なんて無かった。


 気がついたら目の前に箒に跨るあの女が、距離数十センチに居たんだ。

 一瞬で我に返る。ハッとしたその瞬間、その女の手が目の前を覆った。



 ──終わった。チロルちゃん……ごめん。



「みずみずしい。なにこれぇー?」

 えっ? 唇に感じる。温かさ。えっ?

「よいしょっと」

 えっ、えっ? 死を覚悟した瞬間、思わぬ光景が広がった。

 あのエリリンが唇を指で触り、ループ始まって以来、乗りっぱなしだった箒から降りたのだ。

 向き合うように女の子座りをし、敵意など1ミリもない優しい顔で名前を呼んでいた。


「──ク、ねぇ、ゴクアーク? あれぇ? あぁ。なるなるぅ。呼び方が違ったかぁ。アヤノちゃぁーん? おーーい? アヤノちゃぁーん?」

 顔をパーの手で振り、おーいおーいと呼び掛けていた。


「あ、はい」


 慌てて返事をすると、急に手が伸びた。あっ、次こそは殺されると覚悟を決めた時、その手は髪の毛は触っていた。

「うわぁ、髪の毛もツヤツヤぁ。すごぉーーい!!」


 えっ? ツヤツヤ? 
 え、えぇ。美容院行きたてですからね……。ってそうじゃない。なに? なんなの?

 まさか、これは。エリリン生存ルート?!

 と、とりあえず返事を。


「あっ、はい……」

 ダメだぁ。殺された時の印象が強過ぎる。


「んー。もしかして怯えてる? こんな状況だもんねー。仕方ないかぁ」

 やばいやばい。呆れ口調。不機嫌を纏っている。
 ど、どーにかせねば……。でもどうしたら……。

「大丈夫だよー。あやのちゃんは死なない。あたしが保証するっ!」

 またもや手が伸び死を覚悟した瞬間だった。笑顔でブイを。指でピースしていた。


 ──間違いない。これはエリリン生存ルート。


 なんてこった。真っ直ぐレオ様がこちらに向かって来て魅了する手筈だったのに。


 嬉しいけど、悲しい。
 いつかは仲良くなりたい。大切なハーレムの一人。

 でも、今じゃないんだ。


 残念な金太郎ヘアでジャスミン姉さん。
 残念な三つ編みヘアでカシスちゃんとヒメナちゃん。

 そして、残念ではない状態ならエリリンだったんだ。

 NOT残念。嬉しい発見だが、これは大誤算だ。


 また……死ぬのか? 破滅エンドが脳裏を過る。

 ──エリリン。君はどうやってわんわんモードへと導いてくれるんだい?

 所詮は見せパン。頭の中が不安で押し潰されるのを感じた。
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