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100.やっと一息 sideフレイ
しおりを挟むそれから、山賊達を片付けた後にラック達が向かったのがここお楽しみボックス、罠だらけの鍾乳洞だった。
途中ちょっとラックの機嫌が悪くなって揉めてる風だったけどなんでかはわかんなかった。だってこの鍾乳洞に来るのもちょっと時間がかかって大変だったんだ。そこ通るの? 道かなそれ? って所通ってたんだもん。下手に僕本来の力を使えば何故かラックの視線が飛んでくるから力も使えず頑張って程よい距離をとりながら一生懸命追いかけてたんだ僕。ほんと頑張った。
鍾乳洞に辿り着いたラック達は、本当なら完全な夜になるのを待って洞窟内へと攻め入るつもりだったみたいだけど「もう完全に罠だろこれ」と言って、待たずに攻め入ることに決めたみたいだった。そんなラック達が入口らへんでゴソゴソ攻め入る準備をしているのを尻目に僕は一足先にゴールである深淵部に飛んで移動した。
これくらいなら力使っても大丈夫でしょ! と。山の中とかならいざ知らず、狭い空間内にラック達の近くにいるとまた勘付かれる可能性があるからね。今度は離れて様子を見ようと思ったんだ。僕ならどこからだって見ようと思えば視界にいなくても、どれだけ離れていても『視』れるからね。
何故ここがゴールだとわかるのかというと、巨大な迷路のように張り巡らされている道のどれもが最終的にはこの場所に行き着くようになっていたからだ。もちろん中には行き止まりのコースもあった。そして行き着くと言ってもその高低差はバラバラみたいで、下を見ても横を見ても上を見上げても穴だらけ。広い空間で天井もまぁまぁ高いのにどこも横穴縦穴だらけなんだ。
……ここ作った人暇だったのかな? 改造しすぎ、これどれだけの道が用意されてるんだろう?
ただ穴が空いているだけの場所もあった。よく崩れないように作れたなとある意味感心した。やっぱりここを作った奴は暇だったのかもしれない。
「よっこいしょっと」
僕は地面から天井までのちょうど真ん中辺りの横穴へとおじゃまして外向きに座り足をぶらつかせた。その穴はそれほど深くなく、ちょうどそうして座れば後ろの壁がいい背もたれになったんだ。それから、僕は気配を消して、万が一のためにまた自分を透明化してからホッと一息ついた。
「……そろそろツキさん晩ご飯食べてる頃かなぁ」
落ち着けたことでふと思い出したのはツキさんのこと。
せっかく昨日、レーラの家に泊まるなら何をするか、して遊ぶかとかどんなご飯が出てくるかとかいっぱい話してたのにお菓子を食べることくらいしかできなかったなぁって思った。あとはなんか僕、泊まる部屋がツキさんと一緒だったみたいだし、これまではラックの目が厳しくてツキさんと一緒に寝たことなかったからちょっと楽しみにしてたんだけどなぁとも思った。
まぁ、僕もノリノリでこっちにきたしこんなこと思っても仕方がないんだけどさ、ツキさんいっぱい面白い話してくれるし、なんか寝る前にお茶を持って来てくれるみたいだから一緒に優雅に飲んでみようとか話してたのになぁ、ちょっと面白そうだったのに……って思っちゃうんだよ。ツキさんってちょくちょく僕の喜ぶツボを押さえた話を持って来てくれるから。
「……ちょっと『視』てみようかな? いや、でもなぁ……」
ツキさんの様子も気になるけど、これですっごく豪華で美味しそうなご飯を笑顔で食べてるツキさんを『視』てしまえば、なんか虚しくなりそうだしお腹空きそうだしと『視』ることをやめた。
それと同時にラック達も洞窟内へと入って来たから、ツキさんのことや鳴るお腹の音を無視して僕はラック達がどうこの罠だらけの洞窟を攻略していくのかをここから『視』ながら高みの見物を始めることにした。
そうして、あのわちゃわちゃとした冒頭へと至る――。
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