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第一部 戦争の火種
第五章 メルティオス・レイス&シルア・クロームホーク 決戦
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運命は響き合う。
互いを高め合うため。
運命はぶつかり合う。
互いを壊し合うため。
されどそれは夢の中、未だ彼は目覚めず。
(中田幸樹著、パラレルの黙示録 序文に掲載させたパラレルワールドの詩集より抜粋)
体中が痛む。まだ一発喰らっただけだというのに。先程のあれは何だったのだろう。衝撃波か何かだろうか。いきなり吹き飛ばされたのでかなり動揺していたが、それももう治った。
今、僕メルティオス・レイスは爆破斬撃<ボマースラッシャー>を発動させた。爆破能力を自らの持つ武器に付与するのだ。奥の手もあるが、それは最後にとっておく。
「よし。」
すーっと息を吸う。吐き出すと力が抜けるのでそのまま息を止める。ここからは無言だ。得物である双剣を再び構え、翼を広げる。足に力を込めて地面を力一杯蹴る。それと同時に翼を羽ばたかせる。一気にスピードをつけると、敵であるこの世界で最強の人間に今一度戦いを挑むが如く双剣を振りかざした。相手の彼女もそれに反応し剣を構える。あの剣は僕の剣を持ってしても切り裂くどころかひび1つ入れられなかった。魔法で折れないようにできてるのかも知れない。魔法はそんな万能じゃない、って僕の親友グリンデル・フォールアウトは言った。けれど、それが目の前の敵に対してもそうと言えるとは限らない。
敵である彼女に急接近する。そのまま斬りかかる。と見せ掛け、そこを大きく迂回し剣を背中のホルダーに納める。敵は僕の思わぬ行動に呆気にとられている。その隙に、僕は事前に貰ってきたディテクトマジックフィールド発生器を頭部に填めた。リングのような形状で、頭にしっかりと填まるようにできている。最初填めなかったのはこのディテクトマジックフィールドは魔法を使える者に感知されやすく見つかる可能性が高かったからだ。
これで魔法は自動的に防ぐことができる他、範囲内の魔法も全て無効化するので剣にかかった魔法も全て解除できる。
それを装備すると、再び敵に飛びかかる。ちなみに、僕の爆破斬撃<ボマースラッシャー>は魔法ではなく言わば潜在的な能力なので無効化されない。
再び僕と敵の剣が交差し、火花が散る。が、一瞬で敵の剣は薄紙の如く断たれた。
敵は驚き、バックジャンプして僕から離れる。
その一瞬後敵がいた場所が爆発する。ディテクトマジックフィールドの範囲外に出た敵は冷気のビームを再び放つ。
だが、ディテクトマジックフィールドに当たった瞬間に消え去った。またも相手は驚いたようだった。
この調子だ。
そう考え、僕は爆破斬撃<ボマースラッシャー>の第2の能力、遠隔爆撃を放った。
有り得ない。私は暫し唖然とした。まさか私、シルア・クロームホークの剣があそこまで簡単に切り裂かれてしまうとは。
恐らく、先程敵が頭に填めた魔法発生器のせいだろう。はっきりしたのは敵が魔法を使えない事だ。魔法発生器に頼る時点で敵は多分魔法が使えない。普通の天使ならば人間では発動困難なディテクトマジックフィールドでも扱えるだろう。と言うことはやはり敵は魔法が使えないとみて間違いなさそうだ。
素早くそこを離れると、先刻まで私が立っていた場所が爆発した。土や石の欠片が吹き飛ばされる。
あれは敵の潜在的な能力のようだ。焦ってアイスビームを使った直後、しまった、と思った。ディテクトマジックフィールドが触れた魔法を打ち消す事さえ忘れていたのだ。
魔法が無効化された事よりも自分が焦っているという1つの事実に驚いてしまう。
と、相手が誰もいない空間を切り裂いた。何だ、と警戒した直後に赤い粉のような物が剣から発生し、勢いよくこちらに飛んでくる。跳んで離れると、眼下で爆発が起きた。
「遠隔爆撃だと...!?」
かなり押し返されている。このままではまずい。
まずはあのディテクトマジックフィールド発生器をどうにかしなければ自分が倒されるのは目に見えている。
魔法を無効化し打ち消してしまうディテクトマジックフィールド。
ならば・・・。
「ディテクトマジックシェル!」
空気中のマナを固定し魔法の働きを阻害する魔法。これならば・・・。
思った通り、一瞬後ディテクトマジックフィールド発生器が音をたてて壊れた。
読み通りだ。相手は動揺している。
今なら巻き返せる。そう感じて新たに魔法を使用する。ロックプラント。巨大な蔦で相手を絡め、動きを封じる魔法だ。
地面から幾多もの蔦が生える。それら全てが敵を絡め取ろうとするも、あの双剣でいとも簡単に切り裂かれた。
やはり一筋縄ではいかない。切り裂かれた蔦はなおも敵を絡めようと動き回るが、爆破能力で爆発すると動きを止めた。
これほどの強者に出会ったのは初めてだ。
戦いの渦中に在りながらも何処か心地良い感覚。
この相手に勝利すれば何か得られる。
私はそう感じていた。
強い。ディテクトマジックフィールド発生器がこんなにすぐ壊れるとは思ってもいなかった。
地面から生えてきた巨大な無数の蔦に絡め取られる寸前、手にした双剣を縦横無尽に振り、次々と向かってくる蔦を切り裂いていく。
それでも蔦はくねくねと僕を探しのたうち回っていたが、爆発すると流石に止まった。
僕は滞空したまま眼下を静かに睥倪する。
敵もこちらを静かに見つめ返す。
紛れもなく強敵だ。密かに死を覚悟する。両手の得物を再三握りしめる。その慣れた感覚を確かめる。
体力的な物ではない精神的な疲労が体中を覆い尽くす。
それでも、勝たねばならない。
改めて戦意をたぎらせると、急降下する。
双剣で敵に斬りかかる。
はずであった。
遂に最終局面に入っていた2人の戦い。
だが、そこでメルティオスに起こったこととは。
一体誰によるものか。
それはシルアか
それは2人の戦いを望まぬ者か。
それとも...
互いを高め合うため。
運命はぶつかり合う。
互いを壊し合うため。
されどそれは夢の中、未だ彼は目覚めず。
(中田幸樹著、パラレルの黙示録 序文に掲載させたパラレルワールドの詩集より抜粋)
体中が痛む。まだ一発喰らっただけだというのに。先程のあれは何だったのだろう。衝撃波か何かだろうか。いきなり吹き飛ばされたのでかなり動揺していたが、それももう治った。
今、僕メルティオス・レイスは爆破斬撃<ボマースラッシャー>を発動させた。爆破能力を自らの持つ武器に付与するのだ。奥の手もあるが、それは最後にとっておく。
「よし。」
すーっと息を吸う。吐き出すと力が抜けるのでそのまま息を止める。ここからは無言だ。得物である双剣を再び構え、翼を広げる。足に力を込めて地面を力一杯蹴る。それと同時に翼を羽ばたかせる。一気にスピードをつけると、敵であるこの世界で最強の人間に今一度戦いを挑むが如く双剣を振りかざした。相手の彼女もそれに反応し剣を構える。あの剣は僕の剣を持ってしても切り裂くどころかひび1つ入れられなかった。魔法で折れないようにできてるのかも知れない。魔法はそんな万能じゃない、って僕の親友グリンデル・フォールアウトは言った。けれど、それが目の前の敵に対してもそうと言えるとは限らない。
敵である彼女に急接近する。そのまま斬りかかる。と見せ掛け、そこを大きく迂回し剣を背中のホルダーに納める。敵は僕の思わぬ行動に呆気にとられている。その隙に、僕は事前に貰ってきたディテクトマジックフィールド発生器を頭部に填めた。リングのような形状で、頭にしっかりと填まるようにできている。最初填めなかったのはこのディテクトマジックフィールドは魔法を使える者に感知されやすく見つかる可能性が高かったからだ。
これで魔法は自動的に防ぐことができる他、範囲内の魔法も全て無効化するので剣にかかった魔法も全て解除できる。
それを装備すると、再び敵に飛びかかる。ちなみに、僕の爆破斬撃<ボマースラッシャー>は魔法ではなく言わば潜在的な能力なので無効化されない。
再び僕と敵の剣が交差し、火花が散る。が、一瞬で敵の剣は薄紙の如く断たれた。
敵は驚き、バックジャンプして僕から離れる。
その一瞬後敵がいた場所が爆発する。ディテクトマジックフィールドの範囲外に出た敵は冷気のビームを再び放つ。
だが、ディテクトマジックフィールドに当たった瞬間に消え去った。またも相手は驚いたようだった。
この調子だ。
そう考え、僕は爆破斬撃<ボマースラッシャー>の第2の能力、遠隔爆撃を放った。
有り得ない。私は暫し唖然とした。まさか私、シルア・クロームホークの剣があそこまで簡単に切り裂かれてしまうとは。
恐らく、先程敵が頭に填めた魔法発生器のせいだろう。はっきりしたのは敵が魔法を使えない事だ。魔法発生器に頼る時点で敵は多分魔法が使えない。普通の天使ならば人間では発動困難なディテクトマジックフィールドでも扱えるだろう。と言うことはやはり敵は魔法が使えないとみて間違いなさそうだ。
素早くそこを離れると、先刻まで私が立っていた場所が爆発した。土や石の欠片が吹き飛ばされる。
あれは敵の潜在的な能力のようだ。焦ってアイスビームを使った直後、しまった、と思った。ディテクトマジックフィールドが触れた魔法を打ち消す事さえ忘れていたのだ。
魔法が無効化された事よりも自分が焦っているという1つの事実に驚いてしまう。
と、相手が誰もいない空間を切り裂いた。何だ、と警戒した直後に赤い粉のような物が剣から発生し、勢いよくこちらに飛んでくる。跳んで離れると、眼下で爆発が起きた。
「遠隔爆撃だと...!?」
かなり押し返されている。このままではまずい。
まずはあのディテクトマジックフィールド発生器をどうにかしなければ自分が倒されるのは目に見えている。
魔法を無効化し打ち消してしまうディテクトマジックフィールド。
ならば・・・。
「ディテクトマジックシェル!」
空気中のマナを固定し魔法の働きを阻害する魔法。これならば・・・。
思った通り、一瞬後ディテクトマジックフィールド発生器が音をたてて壊れた。
読み通りだ。相手は動揺している。
今なら巻き返せる。そう感じて新たに魔法を使用する。ロックプラント。巨大な蔦で相手を絡め、動きを封じる魔法だ。
地面から幾多もの蔦が生える。それら全てが敵を絡め取ろうとするも、あの双剣でいとも簡単に切り裂かれた。
やはり一筋縄ではいかない。切り裂かれた蔦はなおも敵を絡めようと動き回るが、爆破能力で爆発すると動きを止めた。
これほどの強者に出会ったのは初めてだ。
戦いの渦中に在りながらも何処か心地良い感覚。
この相手に勝利すれば何か得られる。
私はそう感じていた。
強い。ディテクトマジックフィールド発生器がこんなにすぐ壊れるとは思ってもいなかった。
地面から生えてきた巨大な無数の蔦に絡め取られる寸前、手にした双剣を縦横無尽に振り、次々と向かってくる蔦を切り裂いていく。
それでも蔦はくねくねと僕を探しのたうち回っていたが、爆発すると流石に止まった。
僕は滞空したまま眼下を静かに睥倪する。
敵もこちらを静かに見つめ返す。
紛れもなく強敵だ。密かに死を覚悟する。両手の得物を再三握りしめる。その慣れた感覚を確かめる。
体力的な物ではない精神的な疲労が体中を覆い尽くす。
それでも、勝たねばならない。
改めて戦意をたぎらせると、急降下する。
双剣で敵に斬りかかる。
はずであった。
遂に最終局面に入っていた2人の戦い。
だが、そこでメルティオスに起こったこととは。
一体誰によるものか。
それはシルアか
それは2人の戦いを望まぬ者か。
それとも...
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