ワールドデバイス 地球防衛隊 実験機動特殊部隊 Test Mobility Special Forces

Act-0 戦慄の戦争

　ここは廃ビルと半壊の住宅が建ち並ぶ異様な都市。この国で数年前に起こった戦争が、この国を無惨な姿に変貌させていた。一時平和な道を辿っていた世界も、今再び混乱の時代を迎えている。
　しかしこの街には気掛かりな点があった。数年前の出来事のはずだが未だに壊れた建物からは煙が出ており、そこら中に散らばった死体は、少し腐敗しているだけだ。街は、戦争があった当時の外観をそっくりそのまま残していた。
　何故ここだけ時が止まったかのようにいつまでも外観が変わらないか。
　それは、ここであった戦争によって、この地域だけが魔法使用圏のパラレルワールド、つまり魔法が存在するパラレルワールドと密接に重なってしまったからだ。それによって生じた膨大なエネルギーが、この都市での時間の進み方を遅くしてしまったのだ。
　今回の標的は、こんな異常な場所に召喚されるようだった。
　今俺達は標的が現れるらしいビル街の周囲を包囲している。
　俺は、かつていた場所で造られた改造人間だ。
　パラレルワールドから連れてこられた存在で、本名はヨンム・グレイスという。改造人間養成所で与えられたコードネームは試作装甲人間＜プロトアームド＞。俺の外観から付いたあだ名は歩く要塞＜ウォーキングフォートレス＞だ。地球防衛隊の方で与えられた名は彩上歩。この名前はバラすと歩上彩、歩く上彩、つまりは歩く城塞、それで歩く要塞ってなる訳だ。
　とりあえず俺の事は彩上歩かヨンムとしておこう。
　俺の仲間、つまり実験機動特殊部隊TMSFのメンバーは３人いる。俺含めて４人だな。
　１人は教官兼隊長、ジョニー・ソールズ。30代後半。アメリカ人で剣術の達人だ。もう１人はスナイパーのセスター・ジーン。20代前半で国籍不明。最後は接近担当の相原達矢（あいばら　たつや）。20代前半の日本人。
　ちなみに俺、彩上歩は全身が堅い装甲でできており、頭だけが人間と同じ感じだ。両腕のみがゴツい装甲で覆われており、右手には電磁砲にもなるレールガン、左手には巨大な装甲盤のようなシールドを装備している。
　部隊の突撃担当だ。
　俺は戦慄に包まれたこの場所で１人、追憶にふけっていた。