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世界はとても残酷で(特にご飯が)

餃子は美味しい。しかし、面倒くさい

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 今日の料理教室は餃子です。
 皮は売ってないので、自家製ですよ。モチモチで美味しいよね。
 便利だったな、市販の皮…。

「小麦粉、塩、水が基本だね。捏ねて伸ばして、切るとうどんって麺になる」
「めん…」

 不器用な手つきで餃子を包んでいる透子が、麺とはなんぞや…?という顔でぽかんと葛木を見る。
 
「小麦粉とか蕎麦とかの粉を水で捏ねて、細く切って茹でて汁で食べる食べ物だよ」
「汁物…?」
「いや、主食。卵を入れて捏ねるとスパゲティって麺になるね」
「…想像がつきません」

 貧弱貧弱ゥ!(食べ物に対する想像力が)
 
「ああ、でも確かスーパーの片隅にうどんと蕎麦の乾麺が売ってたような…?うちは旦那が蕎麦打ち好きだから、買ったことないけど」
「蕎麦って作れるの?!」
「私ら世代に多いよ、蕎麦打ち好きの男」

 葛木さんの言葉にカルチャーショックを受けてるっぽい透子さん。

「透子さん、手、動いてない」

 みのりちゃんは不満ですよ。
 包丁は使わないからと手伝わせ貰っているが、透子よりも私の方が圧倒的に包むのが早いそして上手い。
 透子が一個作る間に、私が二個作ってる。

「実ちゃん、あんた上手いね」
「サイノーと言うものですね」

 というより、前世の貯金。
 ヒダだって作れちゃうよ!

「いや、ホント、才能あるかも…皮が余ったらどうしたい?」
「んー、チーズ入れて焼いたり、ジャム入れてバターで焼くのも美味しそう」

 ピザとか言いたいけど、流石に知らん料理名言う幼女って怖いよね…。

「ちょっと真面目にレシピ起こす。この子なら作れる」
「今のやりとりで何がわかったんですか!?」
 
 チーズ、あるんですよ。カルシウムとか入った、ベビーチーズ的なものが。
 カルシウムを補うための補食的な扱いだけど。
 ただ、前世で見たアーモンドや胡椒が入ってるやつはない。プレーンオンリー。
 チーズがあるだけマシだよね。

「今この子が言った食べ物想像できるかい?」
「え…っと、チーズと、ジャム…」
「想像つかないだろ。経験値が少ないからさ。でもこの子は少ない経験値からでも食材と食材を組み合わせれば、こんな味になるって想像ができるんだ」
「…その、スゴい才能なのかもしれませんが、この世界ではなかなか日の目が見ない才能では…?」
「まあ、そうだろうけど、美味しいご飯は人生を豊かにするし、悪いことじゃないだろ」

 そうですよ。食は人生を豊かにする。
 切実に美味しい物が食べたい。

「できたー!」
「上手上手」

 ふふん。幼女のこともっと褒めてくれても良いのよ。
 褒めて伸ばして。

「いや、本気で私よりもお上手です」
「透子さん、あんたのは…もうちょっと頑張りましょうだね…」
「つい…欲張り過ぎてしまって…」

 パンパンになってるもんね。透子さんが作ったやつ。
 食べ応えがあって具が多いのも好きよ、私。

「豚肉は火をしっかり入れて。透子さんの作ったやつは水餃子にしよう。実ちゃんのは焼きね」

 やった!両方食べられる!
 
「多めに作って冷凍しておくと便利だよ」
「冷凍庫って氷作ったり、酒冷やしたり、冷却ジェル枕冷やすスペースでは?」
「本来は食材冷やすスペース」

 怖いよね…。同じ道具なのに使い方が違う感覚。
 まず食材を冷やす、冷たい料理、アイスを食べるという文化が消滅寸前。
 風呂上がり、そして夏場にアイスを食べる幸せは私が守る。
 
「じゃがいもなんかは冷凍できないから気をつけな」
「食材には冷凍できるものと…できないものがある…?」

 そこはしっかり学んで欲しいですが…。

「餃子焼かないの?」
 
 私のお口は既に餃子口ですよ。



「うっま、え?うま…コレ合法ですか…?」
「合法だよ」
「うまー、ギョーザうまー」

 ニラとニンニクと生姜のパンチがたまんないよね!
 前世のレパートリー豊かな餃子は期待しない。スタンダード餃子が食べることができるだけでも御の字…。

 そう言えば、インターネットで探せば料理やお菓子の本はオークションや古本屋にあったけど、なんであれを元にお肉のレトルト料理作らなかったんだろ?
 レシピを失伝するには年月は早いのでは?
 何故にあんなハーブ臭かったのか…。

 その疑問をぶつけると、葛木さんちょっと遠い目をされた。
 それにはこの世界特有の事情があったのだよ。


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