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204、リーニャの特訓
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「よし! そうと決まったら早速準備を始めるぞ」
俺の言葉に皆大きく頷く。
作戦の決行は今日から三日後の夜。
移動も含めると、明後日の朝にはオルフェレントを出ることになるだろう。
俺とパトリシアとアンジェリカ、そしてロファーシルとリーニャとシュレン。
それぞれ、アルーティアとオルフェレントの精鋭部隊を連れて移動する。
別々に動くのはこれが極秘作戦だからである。
俺たちが都に行くことを知る者はごく僅かで、軍には一帯の砦の視察といった名目が伝えられることになるだろう。
そして現地で合流する予定だ。
その辺りの手配はクリスティーナが上手くやってくれるはずだ。
「侵入経路の詳細は作成し次第、潜入部隊の端末に送りますわ」
「ああ、頼む。クリスティーナ」
こんな時、端末があるのは助かる。
いつでも細かい情報の共有が可能だからな。
後は万が一の時、リーニャがどの程度戦えるのかだな。
リーニャも相当な魔力の持ち主だが、気が強い分アンジェリカの方が戦闘向きな気はする。
それに俺と一緒に『S・H・Cオンライン』をやっているだけあって、アンジェリカの力は把握してるからな。
元々魔法の素質がある上に、ゲーム内で覚えた魔法も多岐にわたる。
大技のトールハンマーも使えるからな。
「今回の任務は潜入調査だ。戦闘は避けたいが、場合によってはそうもいってられないだろうからな」
俺は自分の部屋に潜入に携わるメンバーを揃えた。
俺とパトリシア、アンジェリカとロファーシル、そしてリーニャとシュレンだ。
「とりあえずリーニャとシュレンの力を知っておきたい。それによって作戦行動も変わってくるだろうからな」
「左様でございますな」
「分かりましたわ、勇者様」
頷くシュレンと、俺を見つめるリーニャ。
アンジェカが俺に言う。
「『S・H・Cオンライン』を使うのね」
「ああ、アンジェリカ。さっきも言ったがそれが一番効率がいいからな。特訓をするにしてもリーニャの力を知っておかないとな」
リーニャは覚悟を決めたように頷く。
「分かりましたわ、私、頑張ります!」
アンジェリカが俺を見つめている。
「ねえ、カズヤ。時間が無いのでしょう? だったら私にいい考えがあるの」
「何だよアンジェリカ?」
耳を傾ける俺にアンジェリカは囁いた。
俺はそれを聞いてアンジェリカに答える。
「アンジェリカ……お前、それマジでいってるの?」
「ええ、本気よ! お姉様には悪いとは思うけど、あれが一番効果的だもの。経験者が言うんだから間違いないわ!」
◇ ◇ ◇
「リーニャお姉様! 油断しないで、油断したら一気に襲い掛かってくるわよ」
「ちょ、ちょっと、アンジェリカ!」
リーニャの声が震えている。
白い衣装から覗く美しい白い腕に、鳥肌が立っているのが分かった。
あの後、俺たちは直ぐに『S・H・Cオンライン』にログインした。
そして、今いるのは例の海岸の拠点の前だ。
リーニャのその姿に、俺はアンジェリカに問いかける。
「おい、アンジェリカ。いくらなんでもやり過ぎじゃないのか?」
「あれでいいのよ。リーニャお姉様は、私以上にああいうのが苦手なタイプだもの。追い詰められた方が力が出るはずよ!」
リーニャを取り囲んでいるのは、巨大なイカとタコの群れだ。
ゴールデンキングクラーケンではないが、リーニャにとっては手強い相手だろう。
「こないで、もういやぁ!」
見たことも無いモンスター相手にリーニャは悲鳴を上げる。
リーニャとは『S・H・Cオンライン』はしたことがなかったからな。
彼女はシュレンと共にいた。
シュレンが目の前の敵を斬り捨てる。
さすがオルフェレントでも指折りの戦士だけあって、見事な太刀捌きだ。
その黒装束姿と技はまるで忍者のようである。
「へえ、やるもんだなシュレンは。辺境伯に信頼されるだけはあるぜ」
俺の言葉にロファーシルは頷く。
「オルフェレント哨戒特殊部隊の隊長ですからな」
「シュレンの腕は十分に確認できたが、後はリーニャか」
リーニャの後ろに湧いて出たモンスターの触手が一本、その肌に触れる。
「ひっ! いやぁあああん!!」
アンジェリカが悲鳴を上げたリーニャに声をかける。
「お姉様! 覚悟を決めて、自分で守らないと、そいつらにもみくちゃにされるわよ!」
「もう! アンジェリカの馬鹿ぁ!!」
叫び声を上げるリーニャに、無数の触手が巻き付いた。
シュレンは、目の前の敵を切り伏せるだけで精いっぱいである。
「姫!!」
「ちょっと! いやぁあああああ、どこ触ってるのよ!!」
リーニャの体からバチバチと雷が沸き上がる。
右手には雷、そして左手には炎が生じるのが見えた。
自分に絡みつく触手を睨みながらリーニャは叫ぶ。
「はぁああああ! ライトニングフレア!!」
リーニャの周りに炎を纏った落雷が降り注ぐ。
焼き尽くされた触手モンスターを眺めながら、シュレンはリーニャを振り返った。
「リーニャ様! お見事で御座います、これ程の魔法をお使いになれるとは」
「え? あ、あはは……そ、そうね、あんないやらしい魔物、許さないんだから! なんだか自信がついてきたわ」
アンジェリカは満足げに頷いた。
「範囲魔法のライトニングフレアね、いい調子だわ。もう少し頑張ればトールハンマーもいけそうね。早くゴールデンキングクラーケンが湧かないかしら」
「……鬼だなお前」
「ですね、カズヤさん」
ナビ子もドン引きしている。
結局この後、暫くリーニャの特訓は続くことになったのである。
俺の言葉に皆大きく頷く。
作戦の決行は今日から三日後の夜。
移動も含めると、明後日の朝にはオルフェレントを出ることになるだろう。
俺とパトリシアとアンジェリカ、そしてロファーシルとリーニャとシュレン。
それぞれ、アルーティアとオルフェレントの精鋭部隊を連れて移動する。
別々に動くのはこれが極秘作戦だからである。
俺たちが都に行くことを知る者はごく僅かで、軍には一帯の砦の視察といった名目が伝えられることになるだろう。
そして現地で合流する予定だ。
その辺りの手配はクリスティーナが上手くやってくれるはずだ。
「侵入経路の詳細は作成し次第、潜入部隊の端末に送りますわ」
「ああ、頼む。クリスティーナ」
こんな時、端末があるのは助かる。
いつでも細かい情報の共有が可能だからな。
後は万が一の時、リーニャがどの程度戦えるのかだな。
リーニャも相当な魔力の持ち主だが、気が強い分アンジェリカの方が戦闘向きな気はする。
それに俺と一緒に『S・H・Cオンライン』をやっているだけあって、アンジェリカの力は把握してるからな。
元々魔法の素質がある上に、ゲーム内で覚えた魔法も多岐にわたる。
大技のトールハンマーも使えるからな。
「今回の任務は潜入調査だ。戦闘は避けたいが、場合によってはそうもいってられないだろうからな」
俺は自分の部屋に潜入に携わるメンバーを揃えた。
俺とパトリシア、アンジェリカとロファーシル、そしてリーニャとシュレンだ。
「とりあえずリーニャとシュレンの力を知っておきたい。それによって作戦行動も変わってくるだろうからな」
「左様でございますな」
「分かりましたわ、勇者様」
頷くシュレンと、俺を見つめるリーニャ。
アンジェカが俺に言う。
「『S・H・Cオンライン』を使うのね」
「ああ、アンジェリカ。さっきも言ったがそれが一番効率がいいからな。特訓をするにしてもリーニャの力を知っておかないとな」
リーニャは覚悟を決めたように頷く。
「分かりましたわ、私、頑張ります!」
アンジェリカが俺を見つめている。
「ねえ、カズヤ。時間が無いのでしょう? だったら私にいい考えがあるの」
「何だよアンジェリカ?」
耳を傾ける俺にアンジェリカは囁いた。
俺はそれを聞いてアンジェリカに答える。
「アンジェリカ……お前、それマジでいってるの?」
「ええ、本気よ! お姉様には悪いとは思うけど、あれが一番効果的だもの。経験者が言うんだから間違いないわ!」
◇ ◇ ◇
「リーニャお姉様! 油断しないで、油断したら一気に襲い掛かってくるわよ」
「ちょ、ちょっと、アンジェリカ!」
リーニャの声が震えている。
白い衣装から覗く美しい白い腕に、鳥肌が立っているのが分かった。
あの後、俺たちは直ぐに『S・H・Cオンライン』にログインした。
そして、今いるのは例の海岸の拠点の前だ。
リーニャのその姿に、俺はアンジェリカに問いかける。
「おい、アンジェリカ。いくらなんでもやり過ぎじゃないのか?」
「あれでいいのよ。リーニャお姉様は、私以上にああいうのが苦手なタイプだもの。追い詰められた方が力が出るはずよ!」
リーニャを取り囲んでいるのは、巨大なイカとタコの群れだ。
ゴールデンキングクラーケンではないが、リーニャにとっては手強い相手だろう。
「こないで、もういやぁ!」
見たことも無いモンスター相手にリーニャは悲鳴を上げる。
リーニャとは『S・H・Cオンライン』はしたことがなかったからな。
彼女はシュレンと共にいた。
シュレンが目の前の敵を斬り捨てる。
さすがオルフェレントでも指折りの戦士だけあって、見事な太刀捌きだ。
その黒装束姿と技はまるで忍者のようである。
「へえ、やるもんだなシュレンは。辺境伯に信頼されるだけはあるぜ」
俺の言葉にロファーシルは頷く。
「オルフェレント哨戒特殊部隊の隊長ですからな」
「シュレンの腕は十分に確認できたが、後はリーニャか」
リーニャの後ろに湧いて出たモンスターの触手が一本、その肌に触れる。
「ひっ! いやぁあああん!!」
アンジェリカが悲鳴を上げたリーニャに声をかける。
「お姉様! 覚悟を決めて、自分で守らないと、そいつらにもみくちゃにされるわよ!」
「もう! アンジェリカの馬鹿ぁ!!」
叫び声を上げるリーニャに、無数の触手が巻き付いた。
シュレンは、目の前の敵を切り伏せるだけで精いっぱいである。
「姫!!」
「ちょっと! いやぁあああああ、どこ触ってるのよ!!」
リーニャの体からバチバチと雷が沸き上がる。
右手には雷、そして左手には炎が生じるのが見えた。
自分に絡みつく触手を睨みながらリーニャは叫ぶ。
「はぁああああ! ライトニングフレア!!」
リーニャの周りに炎を纏った落雷が降り注ぐ。
焼き尽くされた触手モンスターを眺めながら、シュレンはリーニャを振り返った。
「リーニャ様! お見事で御座います、これ程の魔法をお使いになれるとは」
「え? あ、あはは……そ、そうね、あんないやらしい魔物、許さないんだから! なんだか自信がついてきたわ」
アンジェリカは満足げに頷いた。
「範囲魔法のライトニングフレアね、いい調子だわ。もう少し頑張ればトールハンマーもいけそうね。早くゴールデンキングクラーケンが湧かないかしら」
「……鬼だなお前」
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ナビ子もドン引きしている。
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