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202、秘密の地下通路
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「お父様、お母様。あの日、私たちがどうやってアルカディレーナから逃れることが出来たのかお忘れですか?」
リーニャの問いにエディセウスは、ハッとした様な顔になる。
そして娘に尋ねた。
「そういう事かリーニャ。あれを使うつもりなのだな」
「はい、お父様。もし都に潜入するのであれば必ず役に立つはずです」
俺はリーニャに尋ねた。
「どういうことなんだ? リーニャ。都に潜入するために役立つって何のことなんだ?」
パトリシアも身を乗り出して彼女に問いただす。
「うむ! リーニャ殿、教えてくれ」
リーニャは父親であるエディセウスを見つめる。
娘のその姿を見てエルフの国王は頷いた。
「構わぬ。ここにいる皆に隠すことなどない。先程セレスリーナ女王は仰られた、我らは運命共同体だとな。私もディアナも同意見だ」
「はい、貴方。あのことは王家に伝えられる秘密ではありますが、ここにおられる方々には隠す必要などありませんわ」
国王と王妃の許可が出たのを見て、リーニャは首を縦に振るとこちらを見つめた。
そして言う。
「勇者様、パトリシア殿下。アルカディレーナには秘密の地下通路があるのです。あの日、王宮に追い詰められた私たちが難を逃れ国王軍と合流できたのはその地下通路のお蔭。その通路は王宮以外にもアルカディレーナの内外、いくつもの場所に繋がっていますわ」
「地下通路か!」
「勇者殿!!」
俺とパトリシアは思わず顔を見合わせる。
パトリシアは興奮した様に言った。
「リーニャ殿が言うように、その地下通路がアルカディレーナに張り巡らされているのなら」
「ああ、パトリシア! 確かにこいつは使える」
リーニャは頷く。
「ですが、その為には私が行かなくては」
「どうしてだ? リーニャ」
俺がそう尋ねると、彼女は答えた。
「あの日、最後に地下通路を抜けたのは私。その時にこの王家の腕輪で封印を施したのです。私の魔力とこの腕輪がない限り、再びあの通路が開くことはありません」
エディセウス王は大きく頷いた。
「勇者殿、確かにリーニャの申す通りだ。リーニャとその腕輪がなければ、あの通路は二度と使えぬ」
「……なるほどな」
いざという時の秘密の通路だ。
誰かが直ぐに使えてしまえば意味がない。
アンジェリカもしているあの王家の腕輪ってのは、飾りじゃなかったんだな。
「つまりは、リーニャとその腕輪が地下通路の鍵そのものってことか」
「はい、そういうことになります」
ナビ子が肩をすくめると俺に言った。
「つまり、潜入メンバーの一人はリーニャさんで決まりってことですね」
「ああ、そういうことだな」
それはメリットでもあり、デメリットでもある。
優れた魔導師でもあるリーニャ。
だが実戦経験は少ない。
つまりは、彼女をガードする人員も計算に入れなくてはならないだろう。
ロファーシルは笑みを浮かべた。
「心配されるな勇者殿。リーニャ様はこのロファーシルが命に代えてもお守りをいたす」
「なるほど、お前が潜入班についていく理由はリーニャの護衛か」
シュレンの斥候部隊と、リーニャそしてロファーシル。
このメンバーで潜入作戦をするつもりだったのだろう。
「リーニャ様に何かあっては、陛下とディアナ様に申し訳が立ちませぬからな」
「たく。都にはエルザベーラだけじゃない、例のナイツ・オブ・クイーンの連中もいやがるからな。いくらお前でも危険すぎるだろ」
「危険は承知の上、その危険を冒してでも行く価値がある。勇者殿もそう考えたのでないですかな?」
俺は方をすくめた。
こいつのいう通りだ。
「そうなると、リーニャとロファーシル、そして俺とパトリシア、それにシュレンの部隊とアルーティアの精鋭でつくった小隊か。どうだ? クリスティーナ、そうなったときにオルフェレントの防衛は可能か?」
「勇者様! まだ私はこの潜入作戦に賛成したわけでは!」
俺はクリスティーナに言った。
「なあ、クリスティーナ。たまには総司令の俺に花を持たせてくれよ。いつもお前たちにばっかり苦労をかけてるからな、こんな時に命ぐらい賭けられなきゃ総司令の面目がないってもんだぜ」
「勇者様……」
クリスティーナはそう言って、そっと俺に身を寄せた。
そして、ジッと俺を見つめる。
「分かりました。クリスティーナは貴方様に従います。ですが、私もどうか一緒に連れて行ってくださいませ!」
「そうしたいんだがな。お前がいないと、連合軍全体の指揮を統制する人間がいなくなる。連合軍の状況に一番精通しているのは、クリスティーナお前だからな。安心して留守を任せらるのはお前だけだ」
「カズヤ様……」
「そんな顔するなって、クリスティーナ。安心しろ、必ず無事に戻ってくる」
暫く俺の体をギュッと抱き締めると、クリスティーナは俺を再び見つめた。
「分かりました、勇者様。どうかご武運を! オルフェレントの防衛は何とか致しますわ」
辺境伯も大きく頷く。
「今までの帝国の動きを見れば、急に大きな動きを見せるとは思えぬ。潜入作戦を決行するなら、今を逃す手はなかろう。シュレン、勇者殿たちが加わって下されば心強いものよの」
シュレンが俺達を眺めながら口を開いた。
「まことに仰る通りでございます。光の勇者様、急ではございますが作戦決行予定は三日後。月が隠れる新月の夜を考えております」
リーニャの問いにエディセウスは、ハッとした様な顔になる。
そして娘に尋ねた。
「そういう事かリーニャ。あれを使うつもりなのだな」
「はい、お父様。もし都に潜入するのであれば必ず役に立つはずです」
俺はリーニャに尋ねた。
「どういうことなんだ? リーニャ。都に潜入するために役立つって何のことなんだ?」
パトリシアも身を乗り出して彼女に問いただす。
「うむ! リーニャ殿、教えてくれ」
リーニャは父親であるエディセウスを見つめる。
娘のその姿を見てエルフの国王は頷いた。
「構わぬ。ここにいる皆に隠すことなどない。先程セレスリーナ女王は仰られた、我らは運命共同体だとな。私もディアナも同意見だ」
「はい、貴方。あのことは王家に伝えられる秘密ではありますが、ここにおられる方々には隠す必要などありませんわ」
国王と王妃の許可が出たのを見て、リーニャは首を縦に振るとこちらを見つめた。
そして言う。
「勇者様、パトリシア殿下。アルカディレーナには秘密の地下通路があるのです。あの日、王宮に追い詰められた私たちが難を逃れ国王軍と合流できたのはその地下通路のお蔭。その通路は王宮以外にもアルカディレーナの内外、いくつもの場所に繋がっていますわ」
「地下通路か!」
「勇者殿!!」
俺とパトリシアは思わず顔を見合わせる。
パトリシアは興奮した様に言った。
「リーニャ殿が言うように、その地下通路がアルカディレーナに張り巡らされているのなら」
「ああ、パトリシア! 確かにこいつは使える」
リーニャは頷く。
「ですが、その為には私が行かなくては」
「どうしてだ? リーニャ」
俺がそう尋ねると、彼女は答えた。
「あの日、最後に地下通路を抜けたのは私。その時にこの王家の腕輪で封印を施したのです。私の魔力とこの腕輪がない限り、再びあの通路が開くことはありません」
エディセウス王は大きく頷いた。
「勇者殿、確かにリーニャの申す通りだ。リーニャとその腕輪がなければ、あの通路は二度と使えぬ」
「……なるほどな」
いざという時の秘密の通路だ。
誰かが直ぐに使えてしまえば意味がない。
アンジェリカもしているあの王家の腕輪ってのは、飾りじゃなかったんだな。
「つまりは、リーニャとその腕輪が地下通路の鍵そのものってことか」
「はい、そういうことになります」
ナビ子が肩をすくめると俺に言った。
「つまり、潜入メンバーの一人はリーニャさんで決まりってことですね」
「ああ、そういうことだな」
それはメリットでもあり、デメリットでもある。
優れた魔導師でもあるリーニャ。
だが実戦経験は少ない。
つまりは、彼女をガードする人員も計算に入れなくてはならないだろう。
ロファーシルは笑みを浮かべた。
「心配されるな勇者殿。リーニャ様はこのロファーシルが命に代えてもお守りをいたす」
「なるほど、お前が潜入班についていく理由はリーニャの護衛か」
シュレンの斥候部隊と、リーニャそしてロファーシル。
このメンバーで潜入作戦をするつもりだったのだろう。
「リーニャ様に何かあっては、陛下とディアナ様に申し訳が立ちませぬからな」
「たく。都にはエルザベーラだけじゃない、例のナイツ・オブ・クイーンの連中もいやがるからな。いくらお前でも危険すぎるだろ」
「危険は承知の上、その危険を冒してでも行く価値がある。勇者殿もそう考えたのでないですかな?」
俺は方をすくめた。
こいつのいう通りだ。
「そうなると、リーニャとロファーシル、そして俺とパトリシア、それにシュレンの部隊とアルーティアの精鋭でつくった小隊か。どうだ? クリスティーナ、そうなったときにオルフェレントの防衛は可能か?」
「勇者様! まだ私はこの潜入作戦に賛成したわけでは!」
俺はクリスティーナに言った。
「なあ、クリスティーナ。たまには総司令の俺に花を持たせてくれよ。いつもお前たちにばっかり苦労をかけてるからな、こんな時に命ぐらい賭けられなきゃ総司令の面目がないってもんだぜ」
「勇者様……」
クリスティーナはそう言って、そっと俺に身を寄せた。
そして、ジッと俺を見つめる。
「分かりました。クリスティーナは貴方様に従います。ですが、私もどうか一緒に連れて行ってくださいませ!」
「そうしたいんだがな。お前がいないと、連合軍全体の指揮を統制する人間がいなくなる。連合軍の状況に一番精通しているのは、クリスティーナお前だからな。安心して留守を任せらるのはお前だけだ」
「カズヤ様……」
「そんな顔するなって、クリスティーナ。安心しろ、必ず無事に戻ってくる」
暫く俺の体をギュッと抱き締めると、クリスティーナは俺を再び見つめた。
「分かりました、勇者様。どうかご武運を! オルフェレントの防衛は何とか致しますわ」
辺境伯も大きく頷く。
「今までの帝国の動きを見れば、急に大きな動きを見せるとは思えぬ。潜入作戦を決行するなら、今を逃す手はなかろう。シュレン、勇者殿たちが加わって下されば心強いものよの」
シュレンが俺達を眺めながら口を開いた。
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