神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太

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64、決意

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 赤竜姫ジュリア。
 かつては英雄と呼ばれていた存在だ。

 そして、白狼丸を作った最高の鍛冶師でもある。
 それがどうしてこんな生活をするようになったのかは分からない。
 でも、それを何とかしたくてカレンさんはずっと心を痛めてきたに違いない。
 俺にこの刀を託すほどに。

 こちらを見つめるカレンさんの瞳を真っすぐに見つめ返すと俺は答えた。

「俺なんかにそんなことが出来るかどうかわかりませんが、この刀に恥じない戦いをするつもりです」

 それを聞いて、カレンさんは微笑む。

「それでよい。ユウキ、じゃが決して無理をしてはならぬ。危険じゃと思ったら、わらわとてこの身をていしてでもジュリアを止めるつもりじゃ。これはあくまでも腕試しの試合に過ぎぬのじゃからな」

「分かっています」

 カレンさんの言葉を聞いてナナも少し安心したように息を吐く。

「裕樹の馬鹿。私のことなんてどうでもいいのに」

「どうでもいいはずないだろ。俺にとってナナは大切な仲間だ。俺さ、ナナが居てくれて本当に救われたんだよな。この世界にやってきてたった一人で死んでいくんだと思ったあの時に、ナナに出会って元気を貰って。だから、譲れないことだってあるんだ」

 俺を見つめるナナの顔が赤くなっていく。
 そして、強く俺の手を握った。

「本当に馬鹿なんだから。でも、負けないで。私、応援してる!」

「ああ、ナナ! やれるだけやってみるさ!」

 レイラが俺たちが握った手の上に自分の手を重ねる。

「私も応援してるわよユウキ! 英雄だか何だか知らないけど、あんないけ好かない奴に負けないで」

 ククルもちょこちょとやってきて一生懸命手を伸ばすと俺に言った。

「ユウキお兄ちゃん頑張るです! ククルも応援してるのです!」

「ああ、レイラ、ククル、ありがとな!!」

 ナナだけじゃない、レイラもククルも俺にいっぱい元気をくれた。
 この世界で頑張ってみようって思えたのも皆のお蔭だもんな。
 出会ってから日は浅いけど、俺にとってはかけがえのない仲間たちだ。

 その時、俺は白狼丸が淡く輝いた気がした。

「今のは……気のせいか?」

 窓から差し込む日の光が反射してそう見えただけだろうか。
 俺は白狼丸の柄をしっかりと握る。

 そして、皆と一緒に鍛冶工房の外に出た。

 そこは広い庭になっており、その中央に立つジュリアはこちらを眺めている。
 その目は白狼丸を手にする俺を射抜いていた。
 紅蓮の炎のような刃文が美しい大剣を、鮮やかに構えると俺に言う。

「その刀を手にした以上、恥ずかしい戦いをするんじゃないよ。もし、惨めな姿を晒すようならこのあたしが容赦はしない」

 俺は黙って目の前の相手に対して意識を集中した。
 戦う決意はもう出来ている。
 ゆっくりと長い息を吐く。
 そして、白狼丸を構えた。

 まるで時が止まったかのような緊張感が辺りを包み込んでいく。

 周囲の木々が散らした木の葉が一枚、風に乗って俺たちの間を通り過ぎようとしたその瞬間──
 俺はたちは同時に踏み込んで、ジュリアの剣と俺が手にする白狼丸が激しくぶつかり合う音が辺りに響き渡った。
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