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31、釜めしと上級職
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ナナたちの為に釜めしをよそうと、俺はその上に炭火で焼き上げゆず醤油で味付けをした鱒の身をほぐしてのせる。
きのこや山菜がたっぷりと乗った炊き立ての釜めしと、焼きあがったばかりの鱒の身が湯気を立てている。
そこから漂う香りがなんとも食欲をそそった。
松茸のようなきのこ、マルルナタケも炊き込んであるので良い香りに拍車をかけている。
ナナもククルもごくりと唾を飲み込んで、手渡された釜めしをパクリと一口食べた。
「いただきます! ──!!」
「いただきますなのです! はわ!!」
ナナの頬が赤らみククルの尻尾がピンと立つ。
「な、何これ! 美味しい、美味しすぎる!!」
「美味しいのです! うまうまなのです!!」
そう言って夢中になって鱒乗せの釜めしを食べる二人。
レイラは口いっぱいにご飯を頬張りながら頷いた。
「そほでしょ! おひしいんだから!」
……おい、そんなに頬張りながらしゃべるなって。
木の実を一気に食べてるリスのほっぺたみたいになってるぞ。
ご飯粒もついてるし。
黙ってれば美少女なのに相変わらず残念なレイラを眺めながら俺は笑った。
「みんなが気に入ってくれて俺も嬉しいよ!」
俺がそう言うと、三人は幸せそうに頬を緩める。
こんな顔をしてくれると作った甲斐があるな。
ナナたちを眺めながらそんなことを思っていると、俺の服の袖が引っ張られる。
ふと振り返ると、凄い美人が俺の袖を引っ張りながら頬を膨らませていた。
もちろんカレンさんである。
「わらわも食べたいのじゃ! こんなにじらして、ほんに酷い男じゃ」
「はは、分かってますって」
つい美味しそうに食べるナナたちの方に気を取られてた。
三本の尻尾をゆらゆらして少しすねたようにこちらを見るカレンさんは、その名の通り可憐で可愛らしい。
俺は釜めしをよそいながら一人呟く。
「それにしても、カレンさんってとても二百年生きているとは思えないよな」
「ユウキ、何か言うたかえ?」
「は、はは……なんでもありません」
そういえば年齢のことは聞かなかったことにするんだった。
意外と地獄耳だな。
俺は苦笑しながら彼女に茶碗を渡す。
湯気が立つ炊き立ての釜めしと、その上に乗った鱒の身を見つめるカレンさん。
人間はもちろん、獣人を強く魅了するマルルナタケの香りも相まってかすっかりとうっとりとしている。
「これが釜めしかえ? ほんに良い香りじゃこと!」
そして巫女姿のカレンさんにぴったりの赤い塗り箸で、上品に一口釜めしと鱒の身を取るとそれを口の中に入れた。
その瞬間、大きく目を見開いて、頬を少し赤く染めながらほぅと溜め息のような吐息を漏らすカレンさん。
「何という味じゃ、数々の山菜やきのこ、そして野菜に完全に調和したこの味付け! それにこの炭火焼きの背赤鱒がよく合うこと!」
ほんのりと上気したその顔は美しい。
上品でいて艶やかだ。
厨房にいた料理人たちも、主のその様子を見て思わずつばを飲み込む。
「よろしければ我らも味見を!」
「遠い異国の料理、ぜひ味わいたいものですからな」
俺は笑顔で答える。
「ええ、もちろん!」
彼らにも釜めしをよそうと鱒を乗せて俺自身も少し食べてみる。
……やばい、これほんとに激ウマだな。
カンストしてるのが料理人だけじゃない、狩人としての山の幸への知識がさらに味付けの調和を作り出している。
料理人たちの顔も蕩けそうになっている。
「旨い!」
「これはなんとも!」
カレンさんは彼らの様子を眺めながら満足げに俺に言う。
「ユウキ、見事じゃ! それに、不思議じゃの。この釜めしを食べると体に力がみなぎる気がするぞえ」
それを聞いて、もう茶碗の中の釜めしを平らげているレイラが頷く。
「そういえば、そうね! なんだか力がみなぎってくるわ。えへへ、おかわり!」
……えへへ、おかわりって。
レイラ、味見なのにおかわりはないだろ。
俺は笑いながらレイラに答える。
「おかわりは宴の席でな、レイラ!」
「う~、ユウキの意地悪」
上目遣いに俺を見つめるレイラは可愛い。
「ククルも力がみなぎるのです!」
一方で、ククルも尻尾を振りながら嬉しそうにカレンさんの真似をする。
「そう言われると、確かにそんな気がするな……」
料理を食べてみて俺もそう感じた。
ナナが俺をじっと見つめている。
どうやら鑑定眼を使っているようだ。
そして言った。
「それはきっと覚醒スキルの滋養強壮の力ね」
思いがけない言葉に俺は問い返す。
「滋養強壮? そんなスキルなかったぞ」
俺は慌てて自分のステータスを確認した。
名前:佐倉木裕樹
種族:人間
レベル:レベル9999
職業:料理人
マスタージョブ:狩人
力:7121
体力:7232
魔力:6221
速さ:8572
器用さ:8124
集中力:7727
幸運:6124
魔法:なし
物理スキル:ナイフ技Sランク、弓技Sランク
特殊魔法:熟成
特殊スキル:なし
生産スキル:料理Sランク
ユニークスキル:【自分のレベルを一つ下げる(使用制限86回)】
マスタースキル:【鑑定眼】【伐採の極み】【一刀両断】【木材加工】【聖なる結界】【罠作成】【金の匙】
覚醒スキル:【一刀獣断】【滋養強壮】
称号:召喚されし勇者
【滋養強壮】、これか!
確かにスカーフェイスを倒した時に閃いた覚醒スキル【一刀獣断】の隣に【滋養強壮】っていうスキルが加わっている。
ナナが俺に説明してくれた。
「【滋養強壮】、滋味あふれた自然の食材の力を引き出し、食べた者の力を高める効果を持つ。この力を持つ者の食事を食べ続けることにより、身体への効果は徐々に高まっていく。えっと、詳しい上昇率はこのページに書いてあるわ」
ナナはそういうと、ステータスのトップ画面に新たに現れた付与というボタンを押した。
そこにはこう書かれている。
『【滋養強壮】により実際の数値より全ステータス10パーセント上昇中。さらに【山の幸の釜めし】の効果で力、体力、速さ、集中力、魔力に特別効果、一日の間10パーセントの能力上昇。【背赤鱒の炭火焼き】により一日の間、力、体力、幸運にに5パーセントの上昇効果』
「おい、凄いなこれ……」
俺は慌ててレイラのステータスも確認したが、やっぱり同じ付与効果が付いてた。
どうやら俺だけじゃなくて、この料理を食べたみんなに効果が出ているようである。
ステータスの数値には変化がないけど、これを見る限り元の数値からさらに能力が向上しているようだ。
隠しステータスみたいなものか。
【滋養強壮】自体で10パーセントアップ、それに加えて料理によって一日間という限定ではあるけど能力値が上がっているようだ。
夢中で料理をしてたから気が付かなかったけど、こんなスキルが覚醒してたなんて。
流石に多くの食材を使った分、釜めしの方が色んなステータスに効果があるようだ。
ナナは俺に言う。
「効果は自動的に適用されるわ。それに裕樹、覚醒スキルを覚えたなら上級職に転職出来るわよ」
「へ? 上級職?」
そう言えば覚醒スキルを覚えた時にナナに詳しい話を聞いてなかったな。
ナナは俺に答えた。
「初めに言ったじゃない。職業がない裕樹は今は基本的な職業しか選べないけど、色々な職業をマスターしていけば上級職も選択肢に出てくるわよって」
「そういえばそんなこと言ってたよな!」
ナナは頷く。
「特殊な力を持ってる人は、最初から特殊な職業になることが多いんだけどね。あの嫌味な勇者たちみたいに!」
ナナはあいつらのことを思い出したのか腹立たし気にそう言った。
確かに光一や玲児は最初から職業が勇者だったもんな。
ナナが職業一覧のページの下を指さす。
「ほら、ここに上級職用のページにいくボタンがあるでしょ?」
「あ! ほんとだな。気が付かなかった」
そこには最初はなかった矢印ボタンがある。
「これは……」
そのページには二つの職業が書かれていた。
「シーカーと食の求道者、上級職ってこれか!」
ナナが頷いて説明をしてくれた。
「シーカーは探索者ね。狩人と剣士を極めてその覚醒スキルを覚えた者だけが転職出来るわ。凄腕の剣やナイフの使い手で、野山やダンジョン探索とかのプロって感じかしら。食の求道者は、料理人と狩人を極めて覚醒スキルを覚えることがクラスチェンジの条件よ」
「へえ、なんだか凄そうな職業だな!」
シーカーは説明をその聞きくからに格好いいし、食の求道者もまさに料理人の上級職って感じだ。
自然の食材に詳しい狩人と料理人を極めた職業として相応しい気がするよな。
「つまり、この覚醒スキルっていうのが上級職への転職のトリガーになってるんだな」
「ええ、どの職業の組み合わせでどんな覚醒スキルが目覚めるのかは私も分からないけどね」
ナナの説明に俺は頷いた。
「なるほどな」
職業の組み合わせ次第で閃いたスキルが条件になって、新しい職業に目覚めるのか。
まるでゲームをやってるみたいで面白いな。
でも、これが現実に自分の力になっていると思うとそのワクワク感は半端じゃない!
これからどんな職業に目覚めるんだろう。
鍛冶職人と剣士とかも相性が良さそうだもんな。
俺はそう思いながら上級職が書かれたパネルを見つめる。
つい夢中になって話し込む俺とナナを見つめてカレンさんが首を傾げた。
「二人で何の話をしているのかえ?」
「はは、すみません。こちらの話です。それよりも宴ですよね今は!」
俺に味見のおかわりを断られたレイラが、耳と尻尾をぺたんと垂らしてさっきから座り込んでるし。
「カマメシ……オカワリ」
おい、またカタコトになってるぞ。
どうやら腹ペコレイラは、味見程度ではとても満足できないようだ。
上級職の能力を確かめるのは彼女にお腹一杯食べさせてからでも遅くない。
俺はレイラに言う。
「そんなにしょんぼりするなって、レイラ! 今から腹一杯旨いものをたべさせてやるから」
使ってない山の幸はまだあるからな。
釜めしや背赤鱒の炭火焼き以外にも料理が作れそうだ。
宴の会場にも囲炉裏があるみたいだし、そこで調理するのも悪くないだろう。
レイラはそれを聞いて俺にギュッと抱きついた。
「はわわ、美味しいものお腹いっぱい!? ユウキ大好き! 私、ユウキと結婚する!」
「は……はは」
何言ってるんだか。
俺じゃなくて料理が目当てだろそれ。
再びレイラの大きな胸が俺の体に押し当てられるのを見て、ナナが眉を吊り上げてレイラを引きはがす。
「もう! 何が結婚よ、離れなさいって言ってるでしょこの腹ペコ狼!」
引き離されたレイラの代わりに、何故かカレンさんが俺にそっと体を寄せる。
「そうじゃの。これほどの料理を毎日作ってくれるおのこなどそうはおらぬ。いっそわらわとめおとになってみるかえ?」
「え!?」
レイラよりも大きな胸が俺の腕に押し当てられて、楚々としながらも艶やかな唇が俺の顔の傍にある。
大きな白い狼耳と三本の尻尾を持つ絶世の美女。
まるで、美しいあやかしのようなカレンさんに身を寄せられて俺は固まった。
でもすぐに左右の腕を思いっきり引っ張られる。
「「駄目!!」」
俺の腕を左右からしっかり抱きしめているのはナナとレイラだ。
そして二人がかりでカレンさんから俺を引き離す。
そんなナナたちを見てカレンさんは楽し気に笑う。
「ほんに三人とも可愛いこと」
妖艶なカレンさんを眺めながらナナとレイラが俺を睨む。
「もう、裕樹ってばだらしない顔して!」
「そうよ! 私と結婚するんでしょ?」
「いや、いつそうなったんだよレイラ」
レイラの突っ込みどころに、逆に突っ込みながら俺は溜め息をつく。
「か、カレンさんもからかわないでください。冗談が過ぎますよ」
こんな美少女や美女にあんな風にせまられると正直心臓に悪い。
カレンさんは意味ありげな視線を俺に向けると微笑んだ。
「ほほ、あながち冗談でもなかったのじゃが。そうじゃの、宴の間で皆待っておろう。そろそろ行くとするかの?」
俺たちはカレンさんの言葉に大きく頷く。
ナナとレイラはまだ警戒するように左右から俺の腕を抱きしめている。
仕方ないのでそのままカレンさんが用意してくれた宴の間に向かった。
ククルはそんな俺をみて楽しそうについてくる。
宴の間からは聖域の滝が一望できた。
「うわぁ! これが宴の間、凄い光景ね!!」
「ほんとに!!」
ナナやレイラがそう言うように、まさに絶景である。
俺は囲炉裏で追加の料理を作り、釜めしやその料理に皆が舌鼓をうつ。
そして、白狼族の歌や踊りで宴はすっかり盛り上がったのだった。
────────
いつもご覧いただきましてありがとうございます!
このたび著作の『魔力が無いと言われたので独学で最強無双の大賢者になりました!』の第二巻がアルファポリス様より発売されました。
これもいつも応援して下さる皆様のお蔭です、ありがとうございます!
元数学者の主人公の異世界での最強無双ぶりを楽しんで頂けたら嬉しいです。
先月発売されました『追放王子の英雄紋! 追い出された元第六王子は、実は史上最強の英雄でした』共々どうぞよろしくお願いします!
きのこや山菜がたっぷりと乗った炊き立ての釜めしと、焼きあがったばかりの鱒の身が湯気を立てている。
そこから漂う香りがなんとも食欲をそそった。
松茸のようなきのこ、マルルナタケも炊き込んであるので良い香りに拍車をかけている。
ナナもククルもごくりと唾を飲み込んで、手渡された釜めしをパクリと一口食べた。
「いただきます! ──!!」
「いただきますなのです! はわ!!」
ナナの頬が赤らみククルの尻尾がピンと立つ。
「な、何これ! 美味しい、美味しすぎる!!」
「美味しいのです! うまうまなのです!!」
そう言って夢中になって鱒乗せの釜めしを食べる二人。
レイラは口いっぱいにご飯を頬張りながら頷いた。
「そほでしょ! おひしいんだから!」
……おい、そんなに頬張りながらしゃべるなって。
木の実を一気に食べてるリスのほっぺたみたいになってるぞ。
ご飯粒もついてるし。
黙ってれば美少女なのに相変わらず残念なレイラを眺めながら俺は笑った。
「みんなが気に入ってくれて俺も嬉しいよ!」
俺がそう言うと、三人は幸せそうに頬を緩める。
こんな顔をしてくれると作った甲斐があるな。
ナナたちを眺めながらそんなことを思っていると、俺の服の袖が引っ張られる。
ふと振り返ると、凄い美人が俺の袖を引っ張りながら頬を膨らませていた。
もちろんカレンさんである。
「わらわも食べたいのじゃ! こんなにじらして、ほんに酷い男じゃ」
「はは、分かってますって」
つい美味しそうに食べるナナたちの方に気を取られてた。
三本の尻尾をゆらゆらして少しすねたようにこちらを見るカレンさんは、その名の通り可憐で可愛らしい。
俺は釜めしをよそいながら一人呟く。
「それにしても、カレンさんってとても二百年生きているとは思えないよな」
「ユウキ、何か言うたかえ?」
「は、はは……なんでもありません」
そういえば年齢のことは聞かなかったことにするんだった。
意外と地獄耳だな。
俺は苦笑しながら彼女に茶碗を渡す。
湯気が立つ炊き立ての釜めしと、その上に乗った鱒の身を見つめるカレンさん。
人間はもちろん、獣人を強く魅了するマルルナタケの香りも相まってかすっかりとうっとりとしている。
「これが釜めしかえ? ほんに良い香りじゃこと!」
そして巫女姿のカレンさんにぴったりの赤い塗り箸で、上品に一口釜めしと鱒の身を取るとそれを口の中に入れた。
その瞬間、大きく目を見開いて、頬を少し赤く染めながらほぅと溜め息のような吐息を漏らすカレンさん。
「何という味じゃ、数々の山菜やきのこ、そして野菜に完全に調和したこの味付け! それにこの炭火焼きの背赤鱒がよく合うこと!」
ほんのりと上気したその顔は美しい。
上品でいて艶やかだ。
厨房にいた料理人たちも、主のその様子を見て思わずつばを飲み込む。
「よろしければ我らも味見を!」
「遠い異国の料理、ぜひ味わいたいものですからな」
俺は笑顔で答える。
「ええ、もちろん!」
彼らにも釜めしをよそうと鱒を乗せて俺自身も少し食べてみる。
……やばい、これほんとに激ウマだな。
カンストしてるのが料理人だけじゃない、狩人としての山の幸への知識がさらに味付けの調和を作り出している。
料理人たちの顔も蕩けそうになっている。
「旨い!」
「これはなんとも!」
カレンさんは彼らの様子を眺めながら満足げに俺に言う。
「ユウキ、見事じゃ! それに、不思議じゃの。この釜めしを食べると体に力がみなぎる気がするぞえ」
それを聞いて、もう茶碗の中の釜めしを平らげているレイラが頷く。
「そういえば、そうね! なんだか力がみなぎってくるわ。えへへ、おかわり!」
……えへへ、おかわりって。
レイラ、味見なのにおかわりはないだろ。
俺は笑いながらレイラに答える。
「おかわりは宴の席でな、レイラ!」
「う~、ユウキの意地悪」
上目遣いに俺を見つめるレイラは可愛い。
「ククルも力がみなぎるのです!」
一方で、ククルも尻尾を振りながら嬉しそうにカレンさんの真似をする。
「そう言われると、確かにそんな気がするな……」
料理を食べてみて俺もそう感じた。
ナナが俺をじっと見つめている。
どうやら鑑定眼を使っているようだ。
そして言った。
「それはきっと覚醒スキルの滋養強壮の力ね」
思いがけない言葉に俺は問い返す。
「滋養強壮? そんなスキルなかったぞ」
俺は慌てて自分のステータスを確認した。
名前:佐倉木裕樹
種族:人間
レベル:レベル9999
職業:料理人
マスタージョブ:狩人
力:7121
体力:7232
魔力:6221
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幸運:6124
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物理スキル:ナイフ技Sランク、弓技Sランク
特殊魔法:熟成
特殊スキル:なし
生産スキル:料理Sランク
ユニークスキル:【自分のレベルを一つ下げる(使用制限86回)】
マスタースキル:【鑑定眼】【伐採の極み】【一刀両断】【木材加工】【聖なる結界】【罠作成】【金の匙】
覚醒スキル:【一刀獣断】【滋養強壮】
称号:召喚されし勇者
【滋養強壮】、これか!
確かにスカーフェイスを倒した時に閃いた覚醒スキル【一刀獣断】の隣に【滋養強壮】っていうスキルが加わっている。
ナナが俺に説明してくれた。
「【滋養強壮】、滋味あふれた自然の食材の力を引き出し、食べた者の力を高める効果を持つ。この力を持つ者の食事を食べ続けることにより、身体への効果は徐々に高まっていく。えっと、詳しい上昇率はこのページに書いてあるわ」
ナナはそういうと、ステータスのトップ画面に新たに現れた付与というボタンを押した。
そこにはこう書かれている。
『【滋養強壮】により実際の数値より全ステータス10パーセント上昇中。さらに【山の幸の釜めし】の効果で力、体力、速さ、集中力、魔力に特別効果、一日の間10パーセントの能力上昇。【背赤鱒の炭火焼き】により一日の間、力、体力、幸運にに5パーセントの上昇効果』
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どうやら俺だけじゃなくて、この料理を食べたみんなに効果が出ているようである。
ステータスの数値には変化がないけど、これを見る限り元の数値からさらに能力が向上しているようだ。
隠しステータスみたいなものか。
【滋養強壮】自体で10パーセントアップ、それに加えて料理によって一日間という限定ではあるけど能力値が上がっているようだ。
夢中で料理をしてたから気が付かなかったけど、こんなスキルが覚醒してたなんて。
流石に多くの食材を使った分、釜めしの方が色んなステータスに効果があるようだ。
ナナは俺に言う。
「効果は自動的に適用されるわ。それに裕樹、覚醒スキルを覚えたなら上級職に転職出来るわよ」
「へ? 上級職?」
そう言えば覚醒スキルを覚えた時にナナに詳しい話を聞いてなかったな。
ナナは俺に答えた。
「初めに言ったじゃない。職業がない裕樹は今は基本的な職業しか選べないけど、色々な職業をマスターしていけば上級職も選択肢に出てくるわよって」
「そういえばそんなこと言ってたよな!」
ナナは頷く。
「特殊な力を持ってる人は、最初から特殊な職業になることが多いんだけどね。あの嫌味な勇者たちみたいに!」
ナナはあいつらのことを思い出したのか腹立たし気にそう言った。
確かに光一や玲児は最初から職業が勇者だったもんな。
ナナが職業一覧のページの下を指さす。
「ほら、ここに上級職用のページにいくボタンがあるでしょ?」
「あ! ほんとだな。気が付かなかった」
そこには最初はなかった矢印ボタンがある。
「これは……」
そのページには二つの職業が書かれていた。
「シーカーと食の求道者、上級職ってこれか!」
ナナが頷いて説明をしてくれた。
「シーカーは探索者ね。狩人と剣士を極めてその覚醒スキルを覚えた者だけが転職出来るわ。凄腕の剣やナイフの使い手で、野山やダンジョン探索とかのプロって感じかしら。食の求道者は、料理人と狩人を極めて覚醒スキルを覚えることがクラスチェンジの条件よ」
「へえ、なんだか凄そうな職業だな!」
シーカーは説明をその聞きくからに格好いいし、食の求道者もまさに料理人の上級職って感じだ。
自然の食材に詳しい狩人と料理人を極めた職業として相応しい気がするよな。
「つまり、この覚醒スキルっていうのが上級職への転職のトリガーになってるんだな」
「ええ、どの職業の組み合わせでどんな覚醒スキルが目覚めるのかは私も分からないけどね」
ナナの説明に俺は頷いた。
「なるほどな」
職業の組み合わせ次第で閃いたスキルが条件になって、新しい職業に目覚めるのか。
まるでゲームをやってるみたいで面白いな。
でも、これが現実に自分の力になっていると思うとそのワクワク感は半端じゃない!
これからどんな職業に目覚めるんだろう。
鍛冶職人と剣士とかも相性が良さそうだもんな。
俺はそう思いながら上級職が書かれたパネルを見つめる。
つい夢中になって話し込む俺とナナを見つめてカレンさんが首を傾げた。
「二人で何の話をしているのかえ?」
「はは、すみません。こちらの話です。それよりも宴ですよね今は!」
俺に味見のおかわりを断られたレイラが、耳と尻尾をぺたんと垂らしてさっきから座り込んでるし。
「カマメシ……オカワリ」
おい、またカタコトになってるぞ。
どうやら腹ペコレイラは、味見程度ではとても満足できないようだ。
上級職の能力を確かめるのは彼女にお腹一杯食べさせてからでも遅くない。
俺はレイラに言う。
「そんなにしょんぼりするなって、レイラ! 今から腹一杯旨いものをたべさせてやるから」
使ってない山の幸はまだあるからな。
釜めしや背赤鱒の炭火焼き以外にも料理が作れそうだ。
宴の会場にも囲炉裏があるみたいだし、そこで調理するのも悪くないだろう。
レイラはそれを聞いて俺にギュッと抱きついた。
「はわわ、美味しいものお腹いっぱい!? ユウキ大好き! 私、ユウキと結婚する!」
「は……はは」
何言ってるんだか。
俺じゃなくて料理が目当てだろそれ。
再びレイラの大きな胸が俺の体に押し当てられるのを見て、ナナが眉を吊り上げてレイラを引きはがす。
「もう! 何が結婚よ、離れなさいって言ってるでしょこの腹ペコ狼!」
引き離されたレイラの代わりに、何故かカレンさんが俺にそっと体を寄せる。
「そうじゃの。これほどの料理を毎日作ってくれるおのこなどそうはおらぬ。いっそわらわとめおとになってみるかえ?」
「え!?」
レイラよりも大きな胸が俺の腕に押し当てられて、楚々としながらも艶やかな唇が俺の顔の傍にある。
大きな白い狼耳と三本の尻尾を持つ絶世の美女。
まるで、美しいあやかしのようなカレンさんに身を寄せられて俺は固まった。
でもすぐに左右の腕を思いっきり引っ張られる。
「「駄目!!」」
俺の腕を左右からしっかり抱きしめているのはナナとレイラだ。
そして二人がかりでカレンさんから俺を引き離す。
そんなナナたちを見てカレンさんは楽し気に笑う。
「ほんに三人とも可愛いこと」
妖艶なカレンさんを眺めながらナナとレイラが俺を睨む。
「もう、裕樹ってばだらしない顔して!」
「そうよ! 私と結婚するんでしょ?」
「いや、いつそうなったんだよレイラ」
レイラの突っ込みどころに、逆に突っ込みながら俺は溜め息をつく。
「か、カレンさんもからかわないでください。冗談が過ぎますよ」
こんな美少女や美女にあんな風にせまられると正直心臓に悪い。
カレンさんは意味ありげな視線を俺に向けると微笑んだ。
「ほほ、あながち冗談でもなかったのじゃが。そうじゃの、宴の間で皆待っておろう。そろそろ行くとするかの?」
俺たちはカレンさんの言葉に大きく頷く。
ナナとレイラはまだ警戒するように左右から俺の腕を抱きしめている。
仕方ないのでそのままカレンさんが用意してくれた宴の間に向かった。
ククルはそんな俺をみて楽しそうについてくる。
宴の間からは聖域の滝が一望できた。
「うわぁ! これが宴の間、凄い光景ね!!」
「ほんとに!!」
ナナやレイラがそう言うように、まさに絶景である。
俺は囲炉裏で追加の料理を作り、釜めしやその料理に皆が舌鼓をうつ。
そして、白狼族の歌や踊りで宴はすっかり盛り上がったのだった。
────────
いつもご覧いただきましてありがとうございます!
このたび著作の『魔力が無いと言われたので独学で最強無双の大賢者になりました!』の第二巻がアルファポリス様より発売されました。
これもいつも応援して下さる皆様のお蔭です、ありがとうございます!
元数学者の主人公の異世界での最強無双ぶりを楽しんで頂けたら嬉しいです。
先月発売されました『追放王子の英雄紋! 追い出された元第六王子は、実は史上最強の英雄でした』共々どうぞよろしくお願いします!
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彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
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・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
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隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
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